2024年4月25日更新.2,754記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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吐き気に抗精神病薬が効く?

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ドパミンD2受容体と吐き気

セレネースやノバミンといった抗精神病薬がオピオイドによる吐き気に使われる。

吐き気を抑えるのはドパミンD2受容体遮断作用によるもの。
ナウゼリンやプリンペランの制吐作用もドパミンD2受容体遮断作用による。
となると、抗精神病薬全般に制吐作用はありそうだ。

しかし、吐き気に適応のある抗精神病薬は限られている。

ウインタミン:統合失調症,躁病,神経症における不安・緊張・抑うつ,悪心・嘔吐,吃逆,破傷風に伴う痙攣,麻酔前投薬,人工冬眠,催眠・鎮静・鎮痛剤の効力増強
コントミン:統合失調症,躁病,神経症における不安・緊張・抑うつ,悪心・嘔吐,吃逆,破傷風に伴う痙攣,麻酔前投薬,人工冬眠,催眠・鎮静・鎮痛剤の効力増強
ジプレキサ:統合失調症、双極性障害における躁症状及びうつ症状の改善、抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)
ノバミン:統合失調症,術前・術後等の悪心・嘔吐
ピーゼットシー:統合失調症,術前・術後の悪心・嘔吐,メニエル症候群(眩暈,耳鳴)

セレネースに吐き気の効能効果は無い。
抗癌剤の副作用予防という点では、ジプレキサの適応がバッチリ。
ウインタミンやコントミンの適応も「悪心・嘔吐」なので、抗癌剤の副作用による吐き気に使っても問題ない。
しかし、ノバミンやピーゼットシーは、術前・術後の悪心・嘔吐に限られる。
ノバミンは「術前・術後等」となっているので、使えないことは無いのかも知れないが、適応症的には微妙。

といっても、吐き気はつらいので、適応外だろうがなんだろうがエビデンスがあれば使われます。

セレネースと吐き気

抗精神病薬のセレネースを癌患者の吐き気に使うというケース。

セレネース(ハロペリドール)は、ドパミンD2受容体を遮断して制吐作用を示す。
適応外だが、癌患者の吐き気止めとしてよく使われる。

特に、抗癌剤やオピオイド導入時に起こる吐き気に使用されることが多いが、消化管蠕動の低下による吐き気や原因が特定できない吐き気にも、よく効くことが多い。

ただしセレネースは、眠気が強く出ることがあるため注意が必要。
また、副作用として薬剤性パーキンソニズムヤアカシジアなど錐体外路症状が出ることがある。

最初は1mgを睡眠前に服用するように指示され、症状が治まってくれば、頓用となる。
服用後1~2時間以内に効果が発現するので、早く楽になると患者さんから喜ばれることが多い。

ジプレキサと吐き気

癌患者は癌の浸潤、オピオイドや抗癌剤の投与など、様々な要因が絡んで悪心・嘔吐を来すことが多く、病態に合わせた制吐薬の選択が重要となる。

動くと悪化し、めまいを伴うような吐気であれば、前庭神経に作用する抗ヒスタミン薬を使う。

持続的な悪心・嘔吐や、オピオイドの血中濃度に応じて症状が増悪する場合には、化学受容体トリガー・ゾーン(CTZ)に作用するドパミン受容体拮抗薬が適する。

食後に増悪する場合はプリンペラン(メトクロプラミド)などの消化管運動促進薬が効果的だ。

一方で、悪心・嘔吐の原因がはっきりしない場合も少なくない。そのようなときにジプレキサなどの抗精神病薬が処方されることがある。

ジプレキサは統合失調症治療薬だが、ドパミン受容体やヒスタミン受容体など悪心・嘔吐の原因となる様々な受容体に結合して制吐作用を発揮することで知られる。食欲増進作用があり、吐き気の緩和だけでなく食欲不振の改善も期待できる。定型抗精神病薬であるノバミン(プロクロルペラジンマレイン酸塩)も制吐薬として汎用されるが、ジプレキサの方が錐体外路症状が出現しにくく、使いやすい。副作用として血糖値の上昇とアカシジアに注意する必要はあるが、他の制吐薬を使っても効果が不十分なときの切り札として使われる。

ポララミンが吐き気に効く?

ポララミンがオピオイドによる吐き気予防に使われることがある。
抗ヒスタミン薬の吐き気予防というと、乗り物酔いに使われるケースが思い浮かぶ。

オピオイド(モルヒネ)による悪心・嘔吐は投与初期、増量時に惹起することが多いとされている。
オピオイドによる悪心・嘔吐の発現機序としては、以下の4つのルートが知られている。

①オピオイドが延髄のCTZを直接刺激して嘔吐中枢に伝わる。
②前庭器を介してCTZを間接的に刺激する。
③胃の運動性が低下して胃内容物の停留が起こり、これが求心性神経を介して嘔吐中枢を刺激する。
④便秘により胃の内容物が停留して生じる吐き気による。

オピオイド使用中の悪心・嘔吐に対して、抗ドパミン剤が使用される。
抗ドパミン剤のなかで、ハロペリドールは制吐作用が強いが鎮静作用も強く、高齢者では錐体外路症状の頻度が高いとされている。
またクロルペラジンは、鎮静作用は弱いが増量しても悪心・嘔吐が改善されないこともしばしば経験されるという。

体動時や頭位変換時に惹起し、前庭器を介すると思われる悪心・嘔吐には抗ヒスタミン薬が有効とされ、海外ではcyclizine(日本未発売)が用いられているが、その代用としてのクロルフェニラミンマレイン酸塩も有効であると報告されている。

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2 件のコメント

  • 急速充電 のコメント
         

    毎日吐き気がするためドンペリドン錠を処方されてます。

    ドーパミンを抑制するって書かれてあって気になったのですが
    ドーパミンとかセロトニンとかは精神的に増やした方が良いと思っていたのですが
    吐き気のために抑制してしまっていいのかなと不安になりました。
    そういえばしばらくやる気が出ないし鬱っぽくなったような気がします。
    吐き気もあまり治ってないように感じます。

  • yakuzaic のコメント
         

    コメントありがとうございます。

    ドンペリドン(ナウゼリン)の添付文書に、「なお、条件回避反応等の中枢神経系に対する作用のED50と制吐作用のED50との間には極めて大きな分離が認められ、選択的な制吐作用を示した」という記載がみられます。確かにドンペリドンをたくさん投与すれば、吐き気を止める以外の副作用が出る可能性も高くなります。しかし、ドンペリドンは制吐作用とそれ以外の作用が出る用量差が大きいので、安全性が高い薬です。しかし、効果や副作用の出る用量については個人差もあるので、効果が感じられず、副作用を感じているのであれば、医師に相談し別の選択肢も考える必要があるでしょう。

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2023年09月14日発売

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