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プラザキサをアルミ包装から出したらいつまで使える?
公開. 更新. 投稿者:脳梗塞/血栓.この記事は約5分49秒で読めます.
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プラザキサをアルミ包装から出した後の使用期限は?吸湿性と安定性

抗凝固薬としてよく知られるプラザキサ(一般名:ダビガトランエテキシラート)は、脳梗塞予防や深部静脈血栓症の治療に欠かせない薬の一つです。
しかし、このプラザキサには非常に高い吸湿性があり、調剤薬局で保管・分包する際に他の経口抗凝固薬よりも厳密な管理が必要になる点は意外と知られていません。
・アルミピロー包装を開封した後の安定性
・室温や湿度による劣化速度
・「プラザキサをアルミ包装から出したらいつまで使えるのか?」
・現場での保管の工夫
について、勉強します。
「ハンパになったカプセルを棚に置いたままにしていたけど大丈夫?」
「一包化はできないって聞いたけど本当?」
と疑問を感じている方や、薬局・病院で保管を担当する薬剤師の方に役立つ情報をまとめました。
プラザキサは一包化できない?吸湿性の理由
プラザキサのカプセルは、内部の顆粒が非常に水分を吸いやすい性質を持っています。
そのため、調剤時にPTP(プラスチックとアルミ箔のシート)から取り出すだけで、外気中の水分を取り込み、安定性が急速に低下します。
添付文書やインタビューフォームでも、「一包化は避けること」とはっきり明記されています。
一包化機を使ってビニール袋やヒートシールに充填しても、湿度から完全に保護できないため、分包による安定性保証はありません。
実際に、プラザキサは「一包化できるか?」と尋ねられることも多い薬ですが、
「一包化は推奨されない」と覚えておくのが基本です。
アルミピロー包装とは?どのくらい安定性を維持できるのか
プラザキサは28カプセル(14カプセル×2)ずつアルミピローと呼ばれる分厚い袋に密封されています。
これは湿気・光・酸素を極力遮断するための特別な包装です。
このアルミピロー包装が未開封の状態であれば、室温(25℃以下)での安定性は3年とされています。
ただし、開封するとその瞬間から安定性は急速に低下しはじめます。
メーカー資料や海外データによると、以下のような条件で安定性が保たれます。
温度と安定性維持可能期間(目安)
25℃:6か月程度
30℃:4か月程度
40℃:1か月程度
「袋を開けた瞬間からカウントスタート」と考えると、調剤棚に置きっぱなしにするのはリスクが高いといえます。
脱PTP(ピローから出してPTPだけにする)でどのくらい不安定になるのか
プラザキサは「ピロー包装から取り出した後もPTPシートがあるから大丈夫」と思われがちです。
しかし、このPTPシート単体では吸湿を完全に防げません。
実際に、メーカー情報では脱ピロー後1日で含量が規格外になる場合があるとされています。
例えば、ハンパになった数カプセルをピローから出して棚に置いていたケース。
翌日に使用した場合でも、すでに成分が劣化している可能性が否定できません。
ここが、他の抗凝固薬(イグザレルト、エリキュースなど)と大きく異なる点です。
プラザキサの保管方法の工夫と注意点
「開封してしまったらどうすればいい?」という疑問に対する基本的な答えはなるべく早期に使用することです。
しかし、患者さんの服用スケジュールや処方変更、保険請求の都合で「残ったカプセルが一定期間棚に置かれる」ことは現場では珍しくありません。
私の薬局では、以下のような工夫をしています。
・アルミピローを開封するのは直前
処方が確定し、監査まで完了したタイミングで開封する。
・ハンパを保管する場合は乾燥剤を同封
小型の密封袋に乾燥剤を入れ、できる限り密閉。
・「開封日」を袋に明記
いつ開封したのかを一目で確認できるように管理。
・棚の温湿度管理
薬品保管庫内を25℃以下に保ち、湿度計も設置。
この方法で完全な安定性を保証することはできませんが、未開封に近い状態での保管を目指しています。
プラザキサと他の経口抗凝固薬との比較
最近では、イグザレルト(リバーロキサバン)やエリキュース(アピキサバン)の処方が増えています。
これらの薬剤は一包化も可能で保管もしやすいため、患者の服薬アドヒアランスも高めやすいのが特徴です。
一方、プラザキサは高吸湿性と分包不可の不便さがあり、患者さんの「のみ忘れ」や「服薬管理の難しさ」が問題になることもあります。
ただし、腎機能によってはプラザキサが第一選択になるケースもあり、完全に代替できるわけではありません。
薬剤選択の際は、安定性・服薬支援・腎機能・相互作用などを総合的に判断する必要があります。
結局、アルミ包装から出したプラザキサはいつまで使える?
この質問には一言で答えることは難しいのですが、「できるだけ速やかに使用すること」が推奨です。
現実的には、
・アルミピローを開封後、PTPに入れた状態なら最大3か月
・高温・高湿ではさらに短くなる
・脱PTPの場合は1日で規格外になるリスク
と覚えておくと良いでしょう。
この「最大3か月」という目安は、開封後すぐに乾燥剤を入れた密閉袋に保管した場合の話であり、あくまで参考値です。
そのため、調剤過程で余ったカプセルを「何となく棚に戻す」のは避け、保管記録と再調剤の際の確認を徹底することが大切です。
プラザキサの調剤でよくあるQ&A
Q1. プラザキサは冷蔵庫に保管すればいいですか?
冷蔵保管は推奨されていません。
常温(25℃以下)で乾燥した場所に保管するのが適切です。
冷蔵により結露が発生すると、かえって湿気を取り込みやすくなる恐れがあります。
Q2. アルミピローを少し破ってしまいました。使えますか?
破損した場合、開封と同等と考え、できるだけ速やかに服用・使用してください。
完全に密封が保たれていない場合は安定性が保証できません。
Q3. 患者さんが誤ってアルミ包装を全部外して保管していました。飲んでも大丈夫?
規格外含量に変化している可能性が高いため、調剤薬局または医師に連絡し、再度処方を検討する必要があります。
自己判断で服用することは避けてください。
まとめ
プラザキサは非常に有用な薬ですが、吸湿性の高さと包装開封後の不安定さに注意が必要です。
・アルミピロー未開封:3年間安定
・開封後PTP保管:最大3か月(理想的条件)
・脱PTP:1日で規格外リスク
この特性を理解し、調剤・保管・患者指導を徹底することが安全な薬物療法のカギになります。
「ちょっとくらい大丈夫だろう」と思わず、一包化できない理由・保管管理の重要性を患者さんにも分かりやすく説明するようにしましょう。
もし疑問やトラブルがあれば、処方医やメーカー情報にすぐ確認を取ることをおすすめします。