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川崎病は感染症?
公開. 更新. 投稿者:抗菌薬/感染症.この記事は約4分50秒で読めます.
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川崎病は感染症なの?

「川崎病って感染症なの?」「子どもに多い病気と聞いたけど、どうして起こるの?」
そんな疑問をお持ちの方へ。
川崎病は子どもに発症することが多い謎の疾患ですが、実は今でも原因は特定されておらず、感染症かどうかもはっきりしていません。
川崎病とは?─子どもに発症する原因不明の血管炎
川崎病は、全身の血管に炎症が起こる小児の疾患です。
1967年に日本の小児科医・川崎富作先生が初めて報告したことから、その名がつけられました。
主に4歳以下の乳幼児に多くみられ、急性の高熱と発疹などが特徴です。重症例では心臓の血管に後遺症が残ることもあるため、早期発見と治療が非常に重要です。
◆川崎病の6大症状
川崎病は、以下の6つの症状のうち5つ以上がそろったときに診断されます。
・5日以上続く高熱
・両側の結膜(目の白目部分)の充血
・口唇の発赤・ひび割れ、苺舌(ブツブツした赤い舌)
・体幹部や四肢の発疹
・手足の腫れ(浮腫)や皮むけ(膜様落屑)
・首のリンパ節の腫れ(とくに片側)
加えて、BCG接種部位の赤みや腫れが見られることもあり、乳児では重要な診断のヒントになります。
川崎病と似た病気との見分け方(鑑別診断)
川崎病の症状は、他の感染症ともよく似ており、とくに以下のような病気との誤診に注意が必要です。
・溶連菌感染症:高熱・発疹・苺舌・リンパ節腫脹などは似ているが、結膜充血や手足の腫れは通常みられない。
・化膿性リンパ節炎:頸部リンパ節が腫れるが、超音波では“膿が1か所にたまる”所見が特徴的。
・おたふくかぜ(流行性耳下腺炎):耳の下が腫れるが、川崎病では胸鎖乳突筋に沿った片側リンパ節の腫れが特徴。
・突発性発疹症や麻疹:発疹を伴うウイルス感染症とは違い、川崎病は全身の血管炎。
超音波検査なども併用して、慎重な診断が必要です。
「高熱だけで川崎病」とは診断しない理由
川崎病は全身の血管に炎症が起こる汎血管炎(全身性血管炎)です。
高熱が出る病気はたくさんありますが、川崎病では、数日以内にほかの特徴的な症状が揃ってくるのが特徴です。
発症後2週間ほどで、手のひらや足の裏の皮がペロッとむける「膜様落屑」が現れることがあり、これも診断の手がかりになります。
川崎病で最も怖いのは後遺症──冠動脈瘤とは?
川崎病は、症状そのものは自然に治ることが多いですが、問題はその「あと」です。
特に注意が必要なのが、心臓の冠動脈に炎症が波及して瘤(こぶ)ができてしまうことです。これを「冠動脈瘤」と呼びます。
◆冠動脈瘤のリスク
・冠動脈瘤が大きくなると将来の心筋梗塞や狭心症のリスクが高まる
・血栓ができやすくなる
・数年~数十年後に成人してからの突然死の原因にもなりうる
川崎病の治療─7日以内の診断がカギ
川崎病では、早期の診断と治療が後遺症の発生を防ぐ最大のポイントです。
◆治療の目標
・発症から7病日以内に診断
・10病日以内に解熱を目指す
◆主な治療法
・免疫グロブリンの大量静注(IVIG)
・必要に応じてアスピリン(抗炎症・抗血栓)
・重症例ではステロイドや免疫抑制薬を併用
1歳以下の乳児では、IVIGが効きにくく、冠動脈瘤を起こしやすいため、とくに慎重な対応が必要です。
川崎病は感染症なのか?
「川崎病は感染症ですか?」と問われたとき、答えは──「原因不明だが、感染症の可能性も否定できない」です。
◆感染症説と否定理由
・かつては細菌感染が疑われたが、抗菌薬が効かず原因菌も特定されていない
・ウイルス説、水銀中毒、ダニ抗原説などさまざまな仮説が出されたが、決定的な証拠はなし
・他人にうつる例はほとんどなく、家族や集団での感染報告も希少
よって、“感染症ではないが、感染をきっかけに発症する免疫異常”の可能性があるというのが現在の見解です。
川崎病と「川崎公害病」は別物
一般の方の中には、「川崎病って公害病?」と思ってしまう人もいますが、これは全くの別物です。
・川崎公害病:高度経済成長期に川崎市周辺で発生した大気汚染による喘息などの呼吸器疾患
・川崎病:小児の原因不明の急性血管炎で、川崎市とは無関係
川崎病は遺伝するの?
現在、川崎病の発症には遺伝的要因があると考えられています。
◆発症傾向
・男児は女児の約1.4倍発症しやすい
・アジア人に多く、日本人が世界で最も多い
・家族歴がある場合、発症リスクが数倍に上昇
「川崎病遺伝コンソーシアム」という研究プロジェクトもあり、今後の遺伝子研究が進められています。
大人も川崎病になるの?
川崎病=子どもの病気というイメージがありますが、まれに成人が川崎病にかかることもあります。
・成人発症例は非常に少なく、日本国内でもごくわずか
・症状が典型的でないことが多く、診断が遅れやすい
・心臓への影響は小児と同様に重大
発熱や発疹、手足の浮腫などが見られた場合、稀な疾患として川崎病を念頭に置く必要があります。
まとめ:川崎病は「感染症ではないかもしれない感染関連疾患」
まとめ:川崎病は「感染症ではないかもしれない感染関連疾患」 | |
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項目 | 内容 |
川崎病の本質 | 小児に多い全身性の血管炎 |
主な症状 | 高熱、充血、苺舌、発疹、手足の腫れ、リンパ節腫脹 |
後遺症 | 冠動脈瘤など心臓への影響が重大 |
感染性 | 現時点では「感染症ではない」方向が有力 |
原因 | 不明(ウイルス説、水銀説、遺伝的素因など) |
大人の発症 | 非常にまれだが報告あり、診断が難しい |
川崎病は、原因不明でありながら重篤な後遺症を残す可能性のある疾患です。
「感染しないから大丈夫」と軽視するのではなく、症状に気づいたらすぐに医療機関を受診し、早期診断と治療を受けることが大切です。
2 件のコメント
いつも拝読させていただいている薬局薬剤師です。しばらく更新が途絶えていらっしゃるようなので心配になり、連絡させて頂きました。お身体は大丈夫でしょうか。また更新お待ちしております。
コメントありがとうございます。
ご心配くださりありがとうございます。
新しい試みを考えておりまして、プログラミングについて勉強していた次第でございます。
また、どこかの薬剤師が役に立つようなものを作っていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。