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便秘の原因になる薬
公開. 更新. 投稿者:便秘/痔.この記事は約7分14秒で読めます.
4,057 ビュー. カテゴリ:便秘を引き起こす薬
便秘の原因になる薬って多いよね
便秘の原因は不明な場合が多い。
高齢による筋力の低下や、食生活に問題がありそうな患者は多い。ただはっきりしたことはわからない。
使用している薬剤によって便秘を起こしていると想定されることも多い。
しかし多くの場合、治療 > 便秘 と考え、治療を優先する医師が多いだろう。
薬の種類 | 便秘のメカニズム |
---|---|
制酸剤 | 消化管運動抑制作用 収斂作用が便秘を起こす可能性あり。 |
高脂血症治療薬 | 腸の運動の減少や脱水、水分制御が腸閉塞の原因となる。 |
鉄剤 | 収れん作用による蠕動の抑制作用 腸の運動の減少や脱水、水分制御が腸閉塞の原因となる。 |
パーキンソン病治療薬 | 中枢神経系のドパミン活性の増加やアセチルコリン活性の低下作用、抗コリン作用 平滑筋に対するアセチルコリンの作用を抑制し、消化管の緊張や運動性を減少させるように作用する。 |
抗コリン剤 | 消化管運動の緊張や蠕動運動、腸液分泌の抑制作用 平滑筋に対するアセチルコリンの作用を抑制し、消化管の緊張や運動性を減少させるように作用する。 |
ドーパミン作動薬 | 平滑筋に対するアセチルコリンの作用を抑制し、消化管の緊張や運動性を減少させるように作用する。 |
抗うつ剤 | 抗コリン作用、四環系よりも三環系抗うつ薬で便秘を引き起こしやすい 腸管壁の平滑筋細胞に対し、抗コリン様の作用を示す。 |
抗精神病薬 | 腸管の筋層間神経叢障害の起こる可能性があり、慢性便秘や偽性腸閉塞の原因となる。便嵌頓は局所の炎症(慢性や急性)、潰瘍、出血や穿孔の原因となりうる。 |
抗がん剤 | 末梢神経障害や自律神経障害、薬剤の影響とは異なり癌治療に伴う精神的なストレス・摂取量の減少・運動量の低下なども関与 上部結腸の便嵌頓が起こりうる。とりわけ子供や高齢者で麻痺性イレウスがおこりやすい。 |
麻薬系鎮痛剤(オピオイド) | 消化管臓器からの消化酵素の分泌抑制作用、蠕動運動抑制作用、セロトニンの遊離抑制作用 推進力や蠕動収縮力の減少と関連する腸平滑筋の静止緊張を上昇させる。 |
抗ヒスタミン剤 | 内在性の抗コリン作用 |
緩下剤 | 長期使用(濫用)は正常な蠕動運動を抑制するように平滑筋の緊張と収縮性の消失につながる。 |
Ca拮抗薬 | カルシウムの細胞内流入の抑制で腸管平滑筋が弛緩 |
利尿薬 | 電解質異常に伴う腸管運動能低下作用、体内の水分排出促進作用 |
吸着薬、陰イオン交換樹脂 | 排出遅延で薬剤が腸管内に蓄積し、二次的な蠕動運動阻害作用 |
制吐薬 | 5-HT3拮抗作用 |
止痢薬 | 末梢性オピオイド受容体刺激作用 |
このほかにも、気管支拡張薬(β刺激薬)、筋弛緩薬なども便秘の原因となることがある。
これらの薬を使っている患者には下剤が併用されることが多い。
便秘
便秘とは、結腸内に便が滞留し、3〜4日以上排便がない状態をいう。
ただし、患者の主訴は様々であり、毎日排便があっても、便が硬かったり、排便時に不快感や腹痛、排便後の残便感などを伴う場合も、便秘と呼ぶ。
便秘の原因は、性別や年代によって異なる。
食物は、胃や小腸で消化、吸収され、大腸に到達する。
その時点で、消化物は水分が90~95%の液状です。
それが上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸へと移動するうちに、徐々に水分が吸収されて、直腸到達時には水分が約75%の適度な硬さとなる。
食事をしてから排便までにかかる時間は、24~72時間とされている。
便秘の原因
便秘は、大腸の形態的変化を伴う「器質性便秘」と、形態的変化を伴わない「機能性便秘」に分けられる。
また症状から「排便回数減少型」と「排便困難型」に分類される。
このほか病態によっても「大腸通過正常型」「大腸通過遅延型」「便排出障害」に分類される。
【便の輸送が滞る】
加齢や副交感神経の活動を抑制する抗コリン薬などの影響によって腸管の蠕動運動が低下すると、糞便がスムーズに輸送されずに便秘が起こる。
また、食事量や食物繊維摂取量が少ないと便の容積が小さくなり、腸壁への刺激が減少し、蠕動運動が弱くなる。
ストレスなどで副交感神経の緊張が過剰になると、蠕動運動は亢進しているものの痙攣性となり、腸内容物がスムーズに輸送されなくなる。
【便が硬くなる】
食事や水分量によって便が硬くなると、移動や排出が困難になる。
輸送に時間がかかり、結腸内での滞留時間が長くなると、水分が過剰に吸収されて硬便化する。
【排出が困難になる】
加齢などにより、腹圧、直腸内圧を十分に上げることができず、便の排出力が低下する。
排便時に、いきみと骨盤底筋群の弛緩をうまく協調させられない骨盤底筋協調運動障害などによって、排便困難や不完全排便による残便感を生じる。
便意を我慢するような生活習慣が続くと、直腸に便が入っていても便意を感じなくなる。
便秘の種類 | 原因 | 改善法 | |
---|---|---|---|
機能性便秘 | 直腸性(習慣性)便秘 | 度重なる便意の抑制、下剤や浣腸の誤用、乱用。直腸の感受性が低下し、糞便が送られても直腸が収縮しにくく、便意が起こりにくい。 | ・朝食を十分とる。・朝トイレタイムの時間的ゆとりを持つように心がける。・便意を堪えないようにする。 ・第一選択薬は直腸刺激性下剤 |
弛緩性便秘 | 大腸の緊張低下、運動の鈍化による腸管内容物の通過の遅れ。腹筋力の衰え、排便時に腹圧がかかりにくい。 | ・繊維の多い食物を摂る。・適度な運動をする。 ・第一選択薬は機械性下剤、ルビプロストン ・第二選択薬は大腸刺激性下剤 ・パンテチン、ネオスチグミンが有効なこともある |
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痙攣性便秘 | ストレスや自律神経のアンバランス、特に副交感神経の過緊張による。結腸に痙攣が起こりそこが狭くなって便の通過が妨げられ直腸にはいるのに時間がかかる。 | ・精神面での余裕を持つ。・香辛料、繊維の多い食物を避ける。 ・第一選択薬は機械性下剤 ・第二選択薬は副交感神経遮断薬、消化管機能調節薬、過敏性腸症候群治療薬 ・抗不安薬、抗うつ薬が有効なこともある。 ・大腸刺激性下剤は禁忌である。 |
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食事性便秘 | 線維の少ない偏った食事、小食など | 繊維の多い野菜や果物の意識的な摂取 | |
器質性便秘 | ・腸の通過障害(腫瘍・炎症などによる狭窄) ・腸以外の器質的疾患に伴う大腸の運動機能異常 | ・原因疾患の治療 ・急性腹症、重症硬結便など器質性便秘が強く疑われる場合、下剤は禁忌である。 |
麻薬と便秘
医療用麻薬の副作用として最も頻発する症状が便秘である。
モルヒネやオキシコドンの長期反復投与ではほとんど全例に見られ、フェンタニルの高用量投与でも発現する。
便秘は不快であり、長く続くと腹部膨満感が現れ、適切な処置をしないと宿便や麻痺性イレウスに発展する。
強オピオイド鎮痛薬による便秘の発現機序は、消化管平滑筋のμ受容体に直接作用することで腸管神経叢におけるアセチルコリンの遊離を抑制し、さらに腸管壁からセロトニンを遊離させ、腸管平滑筋の緊張を亢進させることに起因すると考えられている。
また、腸管における水分吸収を促進し、肛門括約筋の緊張を高めることも指摘されている。
μ受容体
μ受容体はμ1およびμ2受容体サブタイプに分類される。
μ1受容体が欠損しているCXBKマウスを用いた実験からも、2つの受容体のうち便秘に関与するのはμ2受容体であることが確認されている。
モルヒネやオキシコドンはμ1およびμ2受容体の双方に作用するが、フェンタニルは主にμ1受容体に作用するとされる。
このため、フェンタニルは便秘が生じにくいと考えられる。
なお、実はμ1、μ2受容体は薬理学的な分類によるものであり、麻薬拮抗薬ナロキソネジンによって拮抗されるサブタイプをμ1受容体、それ以外のサブタイプをμ2受容体と定義した。
しかし、分子生物学的にはμ受容体遺伝子は1つしか発見されておらず、その1つの遺伝子からいく通りかのタンパク質が合成される。
そのうちのMOR1Bがμ1受容体に、MOR1がμ2受容体にほぼ対応することが明らかにされている。
注射のモルヒネのほうが便秘は少ない
便秘はオピオイド投与により頻発する副作用であり、患者QOLを考慮すれば迅速な改善が必須となる。
モルヒネやオキシコドンには消化管の運動を低下させて内容物通過を遅延させる作用や、腸液の分泌を直接的に抑制する作用があり、便が硬くなるとともに肛門括約筋の緊張が亢進し、排便が困難となる。
オピオイドによる便秘は主にμ2受容体を介して生じる。
μ2受容体は脳、脊髄、小腸に存在するが、小腸では静注投与より経口投与の方が組織内のモルヒネ濃度が高いことがマウスの実験で示されており、経口投与で重度の便秘が発現した際には投与経路変更を検討すべきである。
また、μ1受容体選択性が高く便秘の発現が少ないフェンタニルへの切り替えも選択肢となる。
モルヒネと下剤
このほか、便秘改善策としては緩下剤の併用がある。
一般にオピオイド導入時の便通管理としては、まずオピオイド以外の便秘のリスク因子を評価し、排便状況などの詳細な問診を行い、腸閉塞や宿便、ガス貯留の有無を確認、処置した上で緩下剤の予防投与を行う。
便が硬く直腸内に移動しない場合は浸透圧性下剤の酸化マグネシウム、便が普通~軟性で腸の蠕動運動が弱い場合はセンノシドなどの大腸刺激性下剤を投与し、排便時の違和感や宿便があるときはグリセリン浣腸、炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水素ナトリウムの坐薬の処方、または摘便を行ったのちに酸化マグネシウムを投与する。
術後の腸閉塞
開腹手術をすると、腸を切らない胃の手術でも、術後に腸閉塞を起こす可能性があるらしい。
お腹の手術を受けたことのある患者さまでは、腸と腹壁、腸同士の癒着が必ず起こります。多くの場合、これらの癒着は生活する上でほとんど支障をきたしませんが、中には癒着の部分を中心に腸が折れ曲がったり、ねじれたり、癒着部分でほかの腸が圧迫されたりして腸が詰まる場合があります。
板橋中央総合病院 きずの小さな手術 腹腔鏡手術センター当院で可能な腹腔鏡手術胃切除術|腸閉塞(腸管癒着症)に対する待機手術
帝王切開の術後でも、腸閉塞になりやすくなる。
ひどい便秘に悩まされている方は、開腹手術をしたことがあるという人も多い。
年末年始になると運動不足や食べすぎなどでイレウス(腸閉塞)を起こす方が多くなります。
食べ過ぎや早食いは控え、水分をこまめにとって排便を促しましょう。お節は黒豆やごぼう、昆布など消化が悪いものはイレウスを起こしやすくなります。今年手術された方や不安のある方は控えたほうが無難でしょう。「消化の良いもの」と「控えてほしいもの」の一覧表をご参照ください。
よく質問のあるお餅は、消化が悪いものではありませんが、食べ過ぎたり、よく噛まずに食べると消化管に負担がかかります。大根を一緒にとると、大根に含まれる消化酵素の作用でお餅の消化を助けてくれますので、大根おろしを添えて食べるのもよいでしょう。
年末年始のイレウス(腸閉塞)予防の食事について|高野病院
便秘のひどい方だと、食物繊維をたくさん摂ったほうがいいのかな、と硬い繊維質のものをたくさん食べたりしてしまうけど、逆効果で腸を詰まらせることもあるので注意。
術後の便秘
なぜ手術後に便秘になるのか?
腸を切る、あるいは、周辺部位の神経を傷付けるような手術であれば、排便への影響は考えられる。
婦人科で子宮癌とか子宮筋腫で子宮を全摘した患者さんが便秘に悩まされているケースに遭遇したことがある。
手術そのものによる要因としては、直腸周辺の神経へなんらかの作用、直腸の位置や形の変化、心理的要因などが考えられます。一般に、“手術によって腸につながる神経が損傷を受けるために、排便障害が起こる”といわれていますが、実のところそう言い切れる証拠はないのです。自律神経は体の前方に伸びているため、子宮摘出やリンパ節郭清をしても腸に至る神経は理論的には温存されるはずなのですが、神経の走行には個人差があるので、神経損傷説を否定するわけにもいきません。手術が神経に影響を与えているとしたら、直腸自身の収縮力が低下する可能性があります。
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子宮の前側に膀胱、後ろ側に直腸が位置しています。子宮が摘出されると、直腸の位置が前に倒れたり、形が変ったりすることがあり排便障害の一因になります
子宮を摘出したことで腸の位置がずれて前傾し、腸の中に直腸瘤、S状結腸瘤などのくびれができるケースがあります。この場合、腹圧をかけると便がくびれに入り込んで、いきんでも排泄しにくくなります
3~4日間、便意をまったく感じない場合は、便がなかなか直腸に到達しない“非直腸性”の便秘であることが多いですね。原因としては自律神経の影響が考えられますが、どこにどのような異常が生じているのかまでは分からず、いわばブラックボックス状態。このタイプの場合、単なる便の停滞であれば、下剤で対処しますが、腹痛を伴う場合は、抗うつ剤などが奏効することもあります
直腸には“ためる力”と“出す力”の2つの働きがありますが、直腸性の便秘の場合は、出す力、つまり(1) 直腸自身の収縮力(自律神経の関与)、(2) いきむ力(腹筋、横隔膜)、(3) 骨盤の筋肉の強さ、(4) 腸の位置や形の4要素のどこかに問題があると考えられます
薬局で便秘の相談を受けることは多い。
一番多いかもしれない。
便秘の原因としては、①自律神経の問題②筋力の問題③腸の形の問題、というのが大きく挙げられる。
高齢者に筋力をつけろっていうのは難しいですが、散歩など体を動かすことは大事。
自律神経の問題は、安定剤や抗うつ剤が処方されている人もいますが、それらの薬で逆に便秘がひどくなっている人も見受けられる。
腸の位置や形の問題になると、どうしようもない。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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