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コルヒチンがベーチェット病に効く?
公開. 更新. 投稿者:免疫/リウマチ.この記事は約5分40秒で読めます.
8,166 ビュー. カテゴリ:ベーチェット病はシルクロード病
ベーチェット病という聞き慣れない難病があります。
難病情報センター ベーチェット病(公費対象)
本症は日本をはじめ、韓国、中国、中近東、地中海沿岸諸国によくみられます。このためシルクロード病ともいわれます。
ベーチェット病はシルクロード沿いに多いらしい。
EXILEのマツがベーチェット病で有名。
うちにもベーチェット病の患者さんが来ますが、ペンタサが処方されています。
免疫抑制剤系の薬が処方されますが、コルヒチンがよく処方されるらしい。
コルヒチンとベーチェット病
コルヒチンが処方されていれば、ほぼ痛風発作だろうと決めつけて服薬指導に入りますが、違う病気である可能性もある。
コルヒチンの作用機序は、微小管の主要蛋白質であるチューブリンに結合して重合を阻害し微小管の形成を妨げる。
細胞分裂を阻害するほかに、好中球の活動を阻害し抗炎症作用をもたらす。
白血球の働きを抑制することによる免疫抑制作用がある。
他の免疫系の疾患にも使われる。
適応外使用としては、スウィート病、掌蹠膿疱症、強皮症などに使われるようです。
ベーチェット病の治療は、激しい眼発作があるときには、ステロイドの点眼、眼注、散瞳薬の点眼を中心とした対症療法が行われる。
なお、ステロイドの点眼は眼圧上昇などのリスクがあるため、眼発作が比較的軽く短期間で消失する場合は、経過観察になることもある。
一方、視力予後に影響する強い発作を繰り返す恐れがある場合は、コルヒチンを第一選択薬とする、眼発作抑制のための治療を行う。
コルヒチンは痛風発作治療薬であるが、主な作用標的は好中球であり、好中球の繊維状微小管のポリマー形成を阻害し、好中球の機能を抑制する作用を持つ。
ベーチェット病の病態には、Tリンパ球の異常反応に基づく好中球の機能亢進が関与するとされており、これが眼発作の抑制にコルヒチンが効果を示すメカニズムと考えられている。
通常、コルヒチンは1日0.5㎎~1.5㎎を投与し、治療開始前と効果を比較しながら投与が継続される。
病状が明らかに改善すれば、徐々に減量して中止となる。
ただし、コルヒチンの中止直後に眼発作が表れ、長期間の服薬を余儀なくされることも少なくない。
副作用には、胃腸障害、ミオパシー、顆粒球減少などがある。
また、男性では精子形成不全を、女性では無月経を来すことがある。
難治例にはシクロスポリンも使用される。シクロスポリンも長期継続が必要となることが多く、腎機能障害などの定期的な検査が必要となる。
さらに、治療抵抗例には抗腫瘍壊死因子(TNF)抗体製剤のインフリキシマブ(レミケード)が適応になる。若年発症、男性例などの予後不良因子や、眼発作の重症度が高い場合には、早期に導入されることもある。また、諸外国ではアザチオプリン(アザニン、イムラン)が使用されているが、日本では他の薬の副作用出現時などに限られている。
皮膚病とコルヒチン
コルヒチンはロイコトリエン、インターロイキンなどに対する好中球の遊走性・反応性を低下させることにより、痛風の発作を抑制する。
好中球は本来、体内に侵入する病原微生物を、活性酸素や加水分解酵素によって貪食・殺菌する。しかし、感染が無いのに生体組織に好中球が浸潤・集積し、組織障害を来す疾患がいくつかある。
ベーチェット病やスイート病、壊疽性膿皮症、持久性隆起性紅斑といった、好中球性の炎症性皮膚疾患もその1つである。
これらの皮膚疾患は、従来の治療に抵抗性を示す難治例が多い。
そのような場合に、好中球機能の抑制作用を期待して、コルヒチンが使用されることがある。
代表的な疾患であるベーチェット病は、好中球の異常活性化を特徴とし、多彩な症状を呈する。口腔粘膜のアフタ性潰瘍、皮膚症状、眼のぶどう膜炎、外陰部潰瘍を主症状とし、急性炎症性発作を繰り返す。
皮膚症状としては、下腿に好発する結節性紅斑、皮下の血栓性静脈炎、顔面、頸部、背部などに見られる毛嚢炎様皮疹やざ瘡様皮疹などが挙げられる。
皮膚症状を主体とするベーチェット病の治療では、一般に非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の内服やステロイドの外用が行われるが、コルヒチンの内服が効果を示すことがある。
特に、結節性紅斑については、コルヒチンの有用性が証明されている。
スイート病にも、コルヒチンが使われる。
スイート病は、発熱、末梢血好中球増加、好中球浸潤性紅斑を3主徴とする急性の症候群である。皮疹は顔面、頸部、四肢に好発し、数cm大までの有痛性の紅斑や結節が多発する。
病態としてベーチェット病と共通項が多く、病因は不明だが、好中球の異常活性化が関与していることは間違いないと考えられている。
その他、壊疽性膿皮症や持久性隆起性紅斑、後天性表皮水疱症などの好中球性・自己免疫性の皮膚疾患にもコルヒチンが使われることがある。
コルヒチンの適応外使用
皮膚科:ベーチェット病、皮膚血管炎、掌蹠膿疱症、強皮症
眼科:ベーチェット病によるブドウ膜炎など
内科:原発性胆汁性肝硬変、アミロイドーシス、再発性の心膜炎など
ベーチェット病
ベーチェット病は、いまだに発症機序が明らかにされていない全身性の炎症疾患である。
国内の患者数は約2万人に上り、20~40代男性の発症が多い。
①口腔内潰瘍、②結節性紅斑などの皮膚症状、③外陰部潰瘍、④ぶどう膜炎を主体とする眼症状、の4症状が高頻度で見られ、そのほか、腸、関節、血管、神経が障害されることもある。
特殊な場合を除き、炎症は慢性に持続するのではなく、急性の炎症発作と消失を繰り返すことが特徴である。
中でもぶどう膜炎は、ベーチェット病患者の約60%に生じるが、急性炎症(眼発作)を反復するうちに失明に至ることが多く、臨床上重大な問題となる。
なお、ぶどう膜とは虹彩、毛様体、脈絡膜の総称だが、ぶどう膜炎といえば、ぶどう膜に隣接する組織も含めた広範な眼内部の炎症を指す。
コルヒチンが心筋梗塞に効く?
冠動脈疾患患者において、活性化好中球は急性冠症候群を引き起こす原因となるため、好中球機能の抑制は不安定プラーク形成のリスクを減らす可能性がある。コルヒチンは、痛風など急性好中球による炎症の予防と抗炎症作用の実績があり、その効果はスタチンやアスピリン以上と考えられている。また、10年間の長期にわたる連続使用を行っても安全で、忍容性が良好な薬物であることも知られている。
コルヒチンは、好中球が介在する炎症を防ぐという病態生理学的な効果があることが明らかになっており、冠動脈にプラークを生じた患者の冠動脈疾患を予防する効果が期待できる。
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