2025年5月15日更新.2,474記事.

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ルプキネス(ボクロスポリン)とは?シクロスポリンとの違い・適応・併用禁忌

ルプキネス(ボクロスポリン)とは?

2024年11月に薬価収載されたルプキネスカプセル(一般名:ボクロスポリン)は、免疫抑制剤に分類されるカルシニューリンインヒビターの新薬です。名前からも分かる通り、シクロスポリン(商品名:ネオーラル)と同系統の薬剤です。

しかし、適応症や併用禁忌などに明確な違いがあり、既存薬との比較が重要になります。

ルプキネスの適応は「ループス腎炎」のみで、現時点では他疾患への適応はありません。

一方、ネオーラル(シクロスポリン)は、以下のように多岐にわたる疾患に適応があります。

・各種臓器移植・骨髄移植における拒絶反応の抑制
・ベーチェット病、非感染性ぶどう膜炎
・再生不良性貧血、赤芽球癆
・ネフローゼ症候群、重症筋無力症、アトピー性皮膚炎
・尋常性乾癬、乾癬性関節炎、膿疱性乾癬など

なお、シクロスポリン自体はループス腎炎への適応はありません。現在、ループス腎炎の治療で保険適応がある免疫抑制薬は以下の3剤です。

・タクロリムス(プログラフ)
・ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト)
・ミゾリビン(ブレディニン)

ルプキネスはこれらと併用される位置づけとなります。

ルプキネスの用法は、

通常、成人に対し1回23.7mgを1日2回経口投与
患者の状態に応じて適宜減量

加えて、投与初期には、

「副腎皮質ステロイド剤およびミコフェノール酸モフェチルとの併用が原則」

とされています。つまり、ルプキネス単独ではなく、ステロイド+セルセプト+ルプキネスの三剤併用が標準的です。

食事の影響:ネオーラル・プログラフとの比較

ルプキネスは、食後のほうが吸収がわずかに高いというデータがあります。

高脂肪食後:Cmax 0.91倍、AUC 1.14倍(絶食時比較)

一方、ネオーラルやプログラフは一般的に食前のほうが吸収が良好とされるため、ここに違いがあります。ただし、ルプキネスの吸収に与える食事の影響は臨床的には大きくないと考えられています。

併用禁忌:ルプキネスとネオーラルの違い

併用禁忌の薬剤は、両者で大きく異なります。

■ ネオーラルの併用禁忌薬
・タクロリムス(内服)
・ピタバスタチン、ロスバスタチン
・ボセンタン、アリスキレン
・グラゾプレビル、ペマフィブラート

■ ルプキネスの併用禁忌薬
・強いCYP3A4阻害薬
・イトラコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾール
・リトナビル、アタザナビル、ダルナビル、ホスアンプレナビル、コビシスタット
・クラリスロマイシン、セリチニブ、エンシトレルビル

構造や代謝酵素は類似していますが、禁忌薬のリストに差異があるのは興味深い点です。どちらもCYP3A4代謝を受けるため、併用注意薬は多岐にわたります。

ルプキネス(ボクロスポリン)は、シクロスポリン系免疫抑制薬の中でも、ループス腎炎に特化した新しい治療選択肢です。用法や併用薬、食事の影響など、ネオーラルとは異なる特徴が多く、類似薬と混同せず適切に使い分けることが重要です。

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