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お酒を飲みたくなくなる薬?
公開. 更新. 投稿者:癌性疼痛/麻薬/薬物依存.この記事は約4分56秒で読めます.
2,515 ビュー. カテゴリ:酒が飲みたくなくなる薬?
レグテクト(アカンプロサートカルシウム)はアセチルホモタウリンのカルシウム塩で、中枢神経系に作用し、アルコール依存で亢進したグルタミン酸作動性神経活動を抑制することで、アルコール依存症患者の飲酒欲求を抑えると考えられている。
アルコール版チャンピックスといったところか。
アルコールの大量摂取を繰り返すと、興奮性のグルタミン酸作動性神経伝達活動が抑制され、一方で抑制性のγアミノ酪酸(GABA)作動性神経伝達活動が亢進した状態が続く。
ところが飲酒をやめると、それまでアルコールによって亢進していたGABA作動性神経伝達活動が優勢となる結果、震えなどの離脱症状が表れる。
この離脱症状を抑えるために、再び飲酒したくなるというメカニズムで依存が形成される。
アルコール依存症治療薬一覧表
分類 | 商品名 | 一般名 | 作用機序 |
---|---|---|---|
嫌酒薬 | シアナマイド | シアナミド | アセトアルデヒドを分解するアルコール脱水素酵素の活性を阻害してアセトアルデヒドを蓄積させて気持ち悪さをつくり出す |
ノックビン | ジスルフィラム | ||
断酒補助薬 | レグテクト | アカンプロサートカルシウム | グルタミン酸神経の作用を抑制することで、神経間のバランスを調節して飲酒欲求を小さくする |
セリンクロ | ナルメフェン塩酸塩水和物 | μ、σオピオイド受容体拮抗作用とκオピオイド受容体作動作用で多幸感と嫌悪感を低減させる |
レグテクトと抗酒薬の違いは?
アルコールは肝臓で主にアルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに代謝される。
アセトアルデヒドは顔面紅潮,心悸亢進,血圧低下, 呼吸困邨,頭痛,悪心・嘔吐などを生じさせる。
さらにアルデヒド脱水素酵素の働きにより無害の酢酸に代謝される。
これまで日本では抗酒薬としてアルデヒド脱水素酵素を阻害するジスルフィラムとシアナミドが使用可能であったが,作用機序が異なるアカンプロサートが新たな選択肢となり期待される。
アカンプロサートは腎排泄のため肝障害の患者にも用いることができる。
腎機能障害のある患者では血中濃度が高くなるので、高度の腎障害のある患者では禁忌となっており,中等度の腎障害のある患考では減量を考慮するとともに,慎重に投与する必要がある。
アカンプロサートは薬物相互作用がないため,抗酒薬とも併用は可能であり,ジスルフィラムとの併用でアルコール依存症の断酒効果をさらに増すとの報告もある。
▽レグテクト錠333mg(アカンプロサートカルシウム、日本新薬):「アルコール依存症患者における断酒維持の補助」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。1回2錠を1日3回投与する。
エタノール依存で増加したグラタミン酸作動性神経の活動を抑制。類薬の抗酒薬にはジスルフィラム、シアナミドがあるが、中枢神経に作用して飲酒の欲求を抑える国内初の薬剤。10年5月に厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」から開発要請されていた。
新薬18成分が承認 経口抗リウマチ薬JAK阻害剤も 薬食審・薬価収載 国内ニュース ニュース ミクスOnline
アルコール依存症患者における断酒維持の補助。
補助ってなんだろう。
ノックビンとかシアナマイドと併用じゃないとダメなのかな。
とか思ったら、アルコール依存症治療の中心は、患者の断酒しようという意志を持続するための心理社会的治療であることから、レグテクトは心理社会的治療と併用する必要がある、ということらしい。
レグテクトと食事の相互作用
レグテクトの用法は、
通常、成人にはアカンプロサートカルシウムとして666mgを1日3回食後に経口投与する。
となっている。
食後の用法は珍しくないけど、この薬は食事の影響を受けやすいので、必ず食後に飲んだ方がよさそう。
食事の影響がどのくらいかというと、
食事の影響
本剤666mgを健康成人男性9例に絶食下又は食後投与で単回経口投与し、薬物動態パラメータを比較した。絶食下では食後投与と比較して、Cmaxで約3倍、AUC0-∞で約2倍上昇した。
大体2~3倍効くような感じ。
シアナマイドとか、ノックビンとか本人に知らせずに飲ませる場合もあるけど、この薬もそういう飲ませ方あるとしたら気をつけなきゃいけない。
レグテクト錠333mg 6錠
1日3回毎食後 30日分
レグテクトの作用機序
アルコール依存では,中枢神経系の主要な興奮性神経であるNMDA受容体が活性し,興奮性神経伝達と抑制性神経伝達の間に不均衡が生じると考えられている。
アカンプロサートはNMDA受容体活性の低下時には,低濃度でNMDA受容体の活動を促進し,逆にNMDA受容体活性が亢進している場合には,高濃度でNMDA受容体の活動を抑制させる部分作動薬として作用する。
アルコール依存状態における断酒はグルタミン酸の遊離増加を生じさせ, NMDA受容体に結合することによって過興奮状態を引き起こす。
アカンプロサートはアルコール依存で亢進したNMDA 受容体の活動を抑制することで神経伝達のバランスを回復し、飲酒欲求を抑制すると考えられている。
レグテクトと肝機能
これまで日本で用いられていたアルコール依存症薬は、肝臓でアルコールを分解する2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の働きを阻害することで飲酒後の不快な症状を引き起こす抗酒薬が主体だった。
酒を飲むと気持ち悪くなることを利用して、飲酒しないようにさせる。
ただ、抗酒薬は肝臓に負担をかけるため、肝硬変などがある人には投与できない。
対して、レグテクト(アカンプロサート)は肝臓への負担が少なく、より多くの患者への投与が可能であるとされている。
アルコール依存症治療薬
アルデヒド脱水素酵素を阻害し、アセトアルデヒドの代謝を抑制するシアナミドやジスルフィラムがある。
ほかにグルタミン酸作動性神経活動を抑制し飲酒欲求を抑えるアカンプロサートもある。
参考書籍:調剤と情報2014.2
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