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オラペネムとデパケンは併用禁忌?
公開. 更新. 投稿者:相互作用/薬物動態.この記事は約3分35秒で読めます.
3,108 ビュー. カテゴリ:カルバペネム系とバルプロ酸の相互作用
最近小児への処方も増えてきたオラペネム。
小児てんかん患者への処方もありうるかと思われるので、処方監査に注意。
カルバペネム系抗菌薬はバルプロ酸の血中濃度を低下させててんかん発作を再発させることがあるため、両者の併用は禁忌である。
バルプロ酸の血中濃度の低下は、カルバペネム系によるグルクロン酸抱合体量の増大に起因すると考えられているが、この相互作用の機序については様々な報告がある。
オラペネムのインタビューフォームには、
他のカルバペネム系抗生物質で、バルプロ酸製剤の併用時にバルプロ酸の血中濃度が低下し、てん かんの発作が再発することが知られているので設定した。本剤の臨床試験時にはバルプロ酸を併用禁止薬としたため、併用例での情報はなくその他の薬物相互作用に関する情報もない。
実際にどの程度血中濃度を下げるのかは、不明。
なお、カルバペネム系がVPAの消化管吸収を阻害する結果、VPAの血中濃度が低下するという報告もある。
オラペネムとバルプロ酸の相互作用
バルプロ酸は、カルバペネム系抗菌薬を併用することで血清中濃度が著しく減少することがよく知られている。相互作用の程度は報告により幅はあるが、カルバペネム系抗菌薬の服用後、速やかに併用前の20%程度にまで顕著な低下を示すことが多く、痙攣を誘発する可能性がある。現在、本邦で販売されているカルバペネム系抗菌薬はすべてバルプロ酸と併用禁忌である。
ちなみに、ペネム系抗菌薬のファロペネム(ファロム)は併用注意である。
バルプロ酸とカルバペネム系抗菌薬との相互作用は併用後速やかに生じ、カルバペネム系抗菌薬の投与終了後に相互作用がなくなるまでには、一般的に数日から数週間を要する。カルバペネム系抗菌薬が、バルプロ酸以外のグルクロン酸抱合を受ける基質薬の薬物動態を変化させたという報告はこれまにないことから、バルプロ酸との特異的な相互作用であると考えられる。
相互作用のメカニズムに関しては、①小腸からの吸収阻害、②腸肝循環阻害、③血球への分布促進、④UGT(グルクロン酸転移酵素)の活性化、⑤UDPグルクロン酸(UGTの補酵素)濃度の上昇、⑥バルプロ酸グルクロニド(グルクロン酸抱合代謝物)の脱抱合阻害、⑦腎クリアランスの上昇など、さまざまな仮説が提唱されており、多くの機序が複合的に働いているとも考えられるが、完全には解明されていない。
この中で、特に⑥バルプロ酸グルクロニドの脱抱合阻害の説が有力である。バルプロ酸は小腸からの吸収が良好であり、大半は肝臓でグルクロン酸抱合を受けてバルプロ酸グルクロニドとなる。このグルクロン酸抱合は可逆的で、脱抱合反応により多くのバルプロ酸グルクロニドが再びバルプロ酸に戻り、腸肝循環すると考えられている。バルプロ酸とカルバペネム系抗菌薬の相互作用は、ラットで肝除去術を行った場合に認められなくなることから、この相互作用は主として肝臓で生じていると推測される。現在までのところ、見かけ上、肝臓でバルプロ酸のグルクロン酸抱合が亢進することが有力視されており、特にバルプロ酸のグルクロン酸抱合体を脱抱合する酵素が、カルバペネム系抗菌薬により不可逆的に阻害され、未変化体が減少する可能性が示唆されている。
さらに、この脱抱合を担う酵素として、アシルペプチド加水分解酵素が同定されている。カルバペネム系抗菌薬が肝臓でバルプロ酸グルクロニドからバルプロ酸に戻るプロセスを選択的かつ不可逆的に阻害すると考えた場合、この相互作用の特異性や比較的速やかに生じて回復に時間を要するという性質をよく説明できると考えられている。
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