2025年6月5日更新.2,490記事.

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モーラステープで胃腸障害?

NSAIDsといえば胃潰瘍

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の代表的な副作用といえば、胃粘膜障害、すなわちNSAIDs潰瘍がよく知られています。これは、プロスタグランジン合成阻害による胃粘膜防御機能の低下が原因です。

しかし、モーラステープやボルタレンテープなどの経皮吸収型NSAIDs、つまり貼付剤では、消化器症状の副作用はあまり聞かれません。添付文書を確認しても、多くの貼付剤では皮膚症状のみが記載されています。ただし、一部例外もあります。

経皮NSAIDsの薬物動態

貼付剤や塗布剤などのNSAIDsは皮膚から吸収され、皮下脂肪、筋肉、滑膜、関節液へと到達しますが、その過程で濃度は急激に低下し、最終的な血中濃度は経口投与の約1/40程度とされています。

皮膚や局所では経皮投与のほうが高濃度となる一方で、関節液や血中では経口投与のほうが高濃度になります。したがって、貼付剤では限局的な部位においては内服とほぼ同等の効果を得つつ、全身性副作用は抑えられると考えられます。

貼付剤の消化器副作用の記載

たとえばロキソニンテープには、以下のような消化器系の副作用が報告されています:
胃不快感、上腹部痛、下痢・軟便(頻度0.5%未満)

また、モーラステープの添付文書には「消化性潰瘍(頻度不明)」の記載があります。

このことは、貼付剤であっても全身性のリスクが完全にゼロではないことを示しています。もっとも、これはモーラステープ単独での副作用とは限らず、NSAIDsの内服薬との併用や、多量貼付による影響の可能性もあります。

また、ロコアテープには「胃腸障害(1%未満):腹部不快感、胃炎、消化性潰瘍、腹痛、悪心、嘔吐、口内炎」と明記されています。さらに、消化性潰瘍を有する患者は禁忌となっており、外用剤であっても注意が必要な例といえます。

消化器症状と効果の関係?

貼付剤であっても副作用がある=それだけ効果がある、という印象を受けることもあります。
肩こりのある人はストレスも抱えやすく、消化性潰瘍を起こしやすい体質の人も多いということから、症状と背景が一致して副作用が顕在化するのかもしれません。

外用NSAIDsの分類と特徴

外用のNSAIDsには、大きく2つの系統があります:

〇皮膚科領域で使用される非ステロイド系外用剤
例:スプロフェン、ブフェキサマク、イブプロフェンピコノール、ウフェナマートなど
・特徴:抗炎症作用は弱めで、湿疹・皮膚炎群、帯状疱疹後の皮膚保護などに使用される。

〇整形外科領域で使用される消炎鎮痛剤
例:ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、インドメタシン、フェルビナクなど
・特徴:関節、腱鞘、筋肉などにおける鎮痛・消炎効果を目的に使用。

剤形もさまざまで、ゲル、クリーム、ローションのほか、貼付剤としてはパップ剤(水溶性)とテープ剤(油性)に分かれます。パップ剤は冷却効果があり、テープ剤は可動部位でも剥がれにくいという利点があります。

全身性副作用の可能性と限界

貼付剤は経口薬に比べて全身性の副作用が少ないとされていますが、それでも完全にゼロとは言い切れません。特に高齢者や他のNSAIDsとの併用時には注意が必要です。

また、皮膚症状としては接触皮膚炎や刺激感、光線過敏症(特にケトプロフェン)などがあり、これらはむしろ貼付剤特有のリスクといえます。

モーラステープをはじめとしたNSAIDs貼付剤は、内服薬と比べて消化器症状の副作用は非常に少ないものの、ゼロではありません。特に併用薬や患者背景によっては消化性潰瘍のリスクが存在するため、漫然使用や多剤併用には注意が必要です。

「貼り薬だから安全」と過信せず、適切な量・期間での使用を心がけることが重要です。

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