2025年6月1日更新.2,485記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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リン酸コデインは麻薬?劇薬?

リンコデ1%は劇薬、10%は麻薬

薬剤師なら一度は混乱する「リン酸コデインは麻薬なのか?」という問い。

同じ成分でも濃度の違いで、麻薬にも、ただの劇薬にもなってしまう。
そんなややこしい薬が、リン酸コデインです。

「コデインリン酸塩散1%」は、法律上は劇薬に分類されますが、
「コデインリン酸塩散10%」になると、麻薬および向精神薬取締法に基づく麻薬として扱われます。

この「劇薬」と「麻薬」の境界線が、濃度1.0%を超えるかどうかで決まっているのです。

厚労省が定める「家庭麻薬制度」により、1%以下のリン酸コデイン製剤は“麻薬に準ずるが、家庭内で使える麻薬”として劇薬扱いとなっています。
そのため、処方・調剤において麻薬処方箋の使用や麻薬帳簿への記載が不要になります。

一方、10%製剤になると明確に麻薬に分類され、処方時のルールも一変します。

添付文書上の用法・用量は
・コデインリン酸塩散1%:通常、成人には、1回2g、1日6gを経口投与する。
・コデインリン酸塩散10%:通常、成人には、コデインリン酸塩水和物として、1回20mg、1日60mgを経口投与する。

となっています。コデインリン酸塩散1%は製剤量の記載で、コデインリン酸塩散10%は成分量の記載となっておりわかりづらいが、要するに使う量は同じである。

錠剤でも「5mgは劇薬、20mgは麻薬」

散剤だけではありません。錠剤にも同様の分類が適用されます。

コデインリン酸塩錠錠5mg:劇薬
コデインリン酸塩錠20mg:麻薬

興味深いのは、物理的に錠剤の大きさで麻薬の定義を回避できるという点。

たとえば、20mgのコデインを含む錠剤であっても、1錠の総重量が2g以上であれば、1%未満とみなされ麻薬に該当しないのです。
ただし、そんな巨大な錠剤を飲める人はなかなかいないため、現実的ではありません。

この「1%の壁」は、現場の薬剤師にとっては非常に大きな意味を持ちます。

10%製剤は、
・麻薬処方箋の使用
・患者の住所記載必須
・施用者番号の記載
・店舗間譲渡の禁止
・麻薬帳簿への記載義務

など、煩雑な管理が必要になります。

一方、1%製剤なら、通常の処方箋で対応可能であり、帳簿記載も不要。調剤もスムーズに行えます。

だからこそ、「10%製剤なんて無くなってしまえばいいのに…」と感じてしまう薬剤師もいるのです。

薬効的には同じ、依存性も同じ

法的には劇薬と麻薬に分かれていても、薬効や依存性の本質は同じです。

1%製剤であっても、長期的な連用や過量摂取があれば、依存や副作用のリスクは変わりません。

つまり、「麻薬に該当しないから安全」ということでは決してありません。
むしろ劇薬扱いゆえに、取り扱いが緩くなりがちな1%製剤のほうが、注意を要するケースもあるのです。

リン酸コデインは1%以上で麻薬、1%以下なら劇薬
法律上は異なるが、薬効やリスクは本質的に同じ
薬剤師にとっては、処方箋・帳簿管理の負担が大きく違う
現場では「劇薬の方が扱いやすい」という声も

薬剤師であっても迷う「麻薬と劇薬の境界線」。
そのグレーゾーンにあるのが、リン酸コデインという薬なのです。

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