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ただの物忘れと認知症の違いは?
公開. 更新. 投稿者:認知症.この記事は約2分56秒で読めます.
2,497 ビュー. カテゴリ:ただの物忘れと認知症の違いは?

「最近、物忘れがひどくなってきて…年のせいかしら?」
薬局の窓口でも、こうした会話は珍しくありません。
このとき、薬剤師としてただ相槌を打つだけでなく、“それが年相応の物忘れなのか、認知症の初期症状なのか”を見極める視点を持っておくことが求められます。
経験則では見抜けない。物忘れの“質”を見る
通常の物忘れ(いわゆる加齢による健忘)は、体験の一部を忘れるのが特徴です。
たとえば、「昼に何を食べたか思い出せない」は加齢性の物忘れ。
しかし、「昼食を食べた記憶そのものがない」場合は、体験の全体を忘れている=認知症の可能性があります。
項目 | 年相応の物忘れ | 認知症による物忘れ |
---|---|---|
忘れ方 | 体験の一部 | 体験全体 |
自覚 | あり | 乏しい/否定傾向あり |
日常生活 | 支障なし | 支障あり(予定忘れ、薬の飲み忘れなど) |
思い出せるか? | ヒントがあれば可 | 思い出せない |
進行 | 遅い | 徐々に進行する |
薬局での「気づきポイント」
薬剤師として、以下のような場面は見逃せません。
・毎回、同じ質問を繰り返す(「これ何の薬だったっけ?」と3回連続で聞かれる)
・服薬スケジュールが守れない/大量に余薬がある
・日付・曜日の感覚が曖昧
・薬の受け取りに付き添いが必要になってきた
・「薬が盗られた」「なくなった」など、作話や妄想傾向がある
これらは年齢による変化だけでなく、認知機能低下の兆候である可能性があり、注意が必要です。
MCI(軽度認知障害)というグレーゾーン
「認知症とまではいかないけど、物忘れが気になる…」という方にはMCI(Mild Cognitive Impairment)という概念があります。
・日常生活に大きな支障はない
・しかし、年齢相応にしては記憶力が落ちている
・一部は将来的にアルツハイマー型認知症へと進行する可能性がある
現時点でMCIを改善する治療薬はありませんが、早期発見→生活習慣の改善→定期的なフォローアップが重要です。
薬剤師としては、「最近どうですか?忘れ物とか増えていませんか?」といったさりげない声かけが、初期変化を拾うカギになります。
薬剤師ができる“提案”
・認知症の疑いがあると感じたら、医師や家族への情報共有を提案
・貼付剤(例:リバスタッチ、イクセロン)など、服薬管理しやすい剤形への切り替え提案
・飲み忘れが多い場合は、お薬カレンダーや服薬支援アプリの紹介
・近隣にもの忘れ外来のある医療機関を把握しておく
薬局は、医療・介護の入り口としてのゲートキーパーの役割を担っています。
「ただの物忘れ」と「認知症」は、見分けがつきにくいものです。
だからこそ、薬剤師として日々の関わりの中で、気づきを得て行動につなげることが大切です。
ご本人が気づいていない、あるいは認めたくないことでも、薬剤師がやさしく、違和感に寄り添う視点を持つことが、早期発見と支援への第一歩になります。


薬剤師の人たちって、どうやって勉強してるんだろう…

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