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ただの物忘れと認知症の違いは?
公開. 更新. 投稿者:認知症.この記事は約11分38秒で読めます.
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物忘れと認知症の違いは?
認知症とただの物忘れは区別できる?
通常の物忘れは、体験の一部分を忘れるのに対して、認知症では体験の全体を忘れるのが特徴です。
例えば、昼食時に何を食べたかを忘れるのが通常の物忘れですが、昼食を食べたこと自体を忘れるのが認知症の物忘れです。
しかし、認知症の初期では区別がつきにくいので、ただ年のせいだと思っても診察を受けたほうがいいでしょう。
早期に薬の服用を開始すれば、進行を抑えることができます。
単なるもの忘れと認知症は違う?
認知症の疾患啓発広告が行われています。
この広告文を見ると、「もの忘れが多くても、認知症を心配する必要は無い」というメッセージのように感じてしまいます。
「もの忘れは認知症の兆候です」みたいなメッセージのほうが良いのではないかと思うのですが。
Q.どこまでが単なるもの忘れで、どこからが認知症なの?
A.たしかに認知症は、老化による単なるもの忘れとの区別がつきにくい病気です。
本人や家族が「年のせいでしょ」と思うような日常の些細な変化が、認知症のサインかもしれません。
見逃さないようにしましょう。
「たまに」同じことを言うというより、「しょっちゅう」同じことを言ったり聞いたりする。
「ときどき」探し物をするというより、「いつも」探し物をしている。
人の名前がすぐ出てこないのではなく、ヒントを言っても思い出せないことがある。
「食べたメニューを思い出せない」のではなく、「食べたこと自体を覚えていない」ことがある。
もの忘れと認知症は違う。でも、区別は付きづらい。
認知症の物忘れとただの物忘れの違い
加齢による物忘れ | 認知症 | |
---|---|---|
忘れ方 | 物忘れは一時的であとで思い出す | 出来事自体を忘れ思い出せない |
物忘れの自覚 | ある(気にする) | ない |
見当識 | 年や日時はわかる | 年や日時、場所がわからない |
進行 | あまり変化しない | 徐々に悪化する |
「人の名前が思い出せない」などのもの忘れは誰でもよくあり、年相応のもの忘れである。
言われれば思い出すことができるのが普通である。
ADのもの忘れでは、約束や体験の一部ではなく、全体を忘れているので言われても思い出せない。
年相応のもの忘れ(生理的健忘)
・体験の一部を忘れる
・本人が自覚している
・日常生活に支障がない
・人の名前を思い出せない、ものを置き忘れる
・進行はしないか遅い
認知症のもの忘れ(病的健忘)
・体験全体を忘れる
・本人が自覚に乏しい
・日常生活にも支障がある
・誰かが盗ったということがある、取り繕い、しばしば作話あり
・進行が速い
認知症でよく見られる症状
・同じことを言ったり聞いたりする
・最近の出来事が思い出せない
・大事な物をなくしたり、置き忘れたりする
・時間や場所の感覚が不確かになった
・いままで好きだった物に対して興味・関心がなくなった
・慣れているところで道に迷った
・ささいなことで怒りっぽくなった
・本人がもの忘れを自覚していない
・日常生活に支障がある
・周辺症状(妄想、興奮、徘徊、抑うつなど)がある
周囲の家族が、「以前と比べて明らかに変わった」と感じて受診する場合も多い。
認知症が疑われたら、鑑別のため早期に専門医へ紹介することが大切である。
軽度認知障害と認知症の違いは?
軽度認知障害(MCI)は認知症ではありませんが、MCIの一部がアルツハイマー病(AD)の前駆状態と考えられています。
このような概念は、1960年代初めに、クラールというカナダの精神科医が「良性健忘」と「悪性健忘」という言い方をしたのが最初です。
悪性健忘は認知症で、良性健忘というのは認知症ではないのだけれども、もの忘れがすごく目立つのです。
その後、1980年代に米国のロナルド・ピーターセンがADの前駆状態としてMCIという言葉を使いました。
MCIのある人とない人を3年間フォローアップしていくと、前者は12%ぐらいがADに移行するけれども、後者はその割合が3%ぐらいでとどまっているので、MCIはADの非常に大きな危険因子だと言い出しました。
現時点でMCIの治療効果が確認されている薬はありません。
認知症と水頭症の違いは?
認知症と水頭症を間違うこともあるようだ。
特発性正常圧水頭症(iNPH)は、認知症と間違われやすい病気だ。患者数は高齢者の百人に一人といわれ、うまく歩けなくなったり、気持ちが不安定になったりするのが特徴。ほかの病気と合併するなどして、診断がつきにくい場合もあるが、治療により改善することは多い。
東京新聞認知症と間違える症状 特発性正常圧水頭症健康(TOKYO Web)
高血圧と軽い糖尿病がある愛知県内の男性(70)は、日常生活に不自由はなかったが、五年前に次第に歩き方に異変が現れた。
足が小刻みにしか前に出ない。向きを変えようとすると、よろける。半年後には、つえなしでは歩けなくなり、脳神経外科を受診した。
腰椎(ようつい)から髄液を二、三〇ccほど抜く「タップテスト」をすると、翌日には歩行が楽になり、歩幅も大きくなった。iNPHと診断されて手術を受け、歩行が改善。今はつえも不要になった。
「症状が歩行障害だけのケースなら、かなり改善し、良い状態を保てます」と、名古屋大付属病院脳神経外科の永谷哲也医師は話す。
水頭症は、脳の中央にある脳室で生成される脳脊髄(せきずい)液(髄液)の流れが滞ることで起きる。そのため脳が「水浸し状態」になって、神経活動が阻害される。
髄液の異常は、くも膜下出血や脳腫瘍(しゅよう)、脳外傷の手術後に起こることがあるが、iNPHは原因がはっきりせず、脳圧も一見正常値に見える。疫学的には、動脈硬化や糖尿病を合併していることが多く、関連性が考えられるという。
初期症状の九割は、歩行障害。足取りが小幅で、開き気味、すり足になり、座る、立つ動作や方向転換にも非常に時間がかかる。痛みはない。
認知障害が出る場合もある。記憶力が落ち、感情の浮き沈みが激しくなり、意欲が低下するなどの症状があり、認知症と間違われることも多い。
患者のほとんどが六十歳以上で、骨粗しょう症や腰椎症、多発性脳梗塞(こうそく)、パーキンソン病などを抱えることも多い。iNPHとは無関係に認知症を合併している場合もあり、診断は難しかった。二〇〇四年に診療ガイドラインが策定されたことで、診断と治療も進んできた。
水頭症というと、先天的な赤ちゃんの病気、というイメージしかありませんでした。
高齢者の100人に1人て、けっこう多いですね。
頭が大きくなってなければ、水頭症なんて考えもしませんね。
認知症の診断
認知症の診断には症状や長谷川式などと呼ばれる問診を主とした検査をします。
MRIのような画像診断をするのは認知症の原因が、脳梗塞によるものなのか、アルツハイマー型もしくはび慢性レビー小体型によるものなのか、特定する時に使用します。
アルツハイマー型認知症の症状には、
・年月日の感覚が不確か
・買い物が一人で出来ない
・家の中でトイレの場所がわからない
・季節に合った服が選べない
・ボタンを掛けられなかったり、ネクタイをきちんと結べない
といったものがあるが、なかなか診断は難しい。ただの年相応の記憶障害なのか認知症なのか。
本人と家族からの問診や診察を行ったあと、認知機能検査としてミニメンタルステート(MMSE)と改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)がよく行われる。
頭部CTまたはMRIは、脳血管障害、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症などの鑑別診断と脳萎縮の程度を判定するために必須である。
記憶障害に一致した海馬領域の萎縮が特徴的で、MRIに明瞭に描出される。
脳代謝を調べるPET検査や脳血流を調べるSPECT検査は、CTやMRIで異常が明らかでない早期でも異常所見が得られるため早期診断に有用である。
アルツハイマー型認知症に特徴的な側頭頭頂葉・後部帯状回・楔前部を中心とした血流や代謝の低下パターンを検出できる。
脳脊髄液中のリン酸化タウ蛋白とβアミロイド蛋白の異常を調べることがも有用である。
アルツハイマー型認知症では、認知症の軽度な時期に歩行障害、パーキンソニズム、排尿障害、嚥下障害などの神経症状を伴うことはまれである。
認知症の軽度な時期に歩行障害や尿失禁があれば、脳血管性認知症(VaD)や正常圧水頭症を疑う。
また初期からパーキンソニズム、幻視が目立つ場合はレビー小体型認知症(DLB)を疑う。
記憶は比較的良好に保たれるのに社会的行動の障害や常同行動が目立つ例では、前頭側頭型認知症(FTD)を疑う。
アルツハイマー型認知症の前駆状態として、軽度認知障害とよぶ状態がある。
年齢に比較して記憶力の低下が強いが、日常生活には支障がない状態で、年間約10~15%が認知症、特にアルツハイマー型認知症へ進行する。
早めに気付けば、早期にアルツハイマー型認知症の治療が開始できる。
認知症とは?
認知症とは、後天的な脳の器質的障害により、いったん正常に発達した知能が低下した状態をいいます。
昔は痴呆と呼ばれていました。
認知症の原因となる病気は、40%がアルツハイマー病、30%が脳血管性(脳梗塞や脳出血による)の認知症といわれています。
アルツハイマー病は、アミロイドベータと呼ばれるペプチドが過剰に生産されて蓄積し、老人斑を形成することが原因とされ、徐々に進行して記憶障害を引き起こします。
認知症に自覚症状は無い?
進行した認知症では、本人が「自分は認知症だ」と自覚することは通常困難です。
また一般的に、周囲から指摘されても受け止められないことが多いです。その理由は、認知症では記憶力が衰え、説明された事項を心に留めることが難しく、判断力が低下しているからです。
物忘れは、自分が忘れっぽくなったという自覚がありますが、認知症は自覚がなく、忘れたこと自体を忘れてしまいます。
しかし、認知症の初期では物忘れとの区別がつきにくく、自覚のある時期もあるようです。
「頭の中がおかしい」と一番最初に気づくのは本人だと言われています。
しかし認めたくない。家族のやっかいものになりたくない。
しばらく経てば治るんじゃないか?自分の勘違いじゃないか?
と、考えている間に時間が流れ、病状は進行し、自覚も無くなっていく。
アルツハイマー病の見分け方は?
アルツハイマー病を見分けるための記憶検査
即時記憶①3つの単語を提示して覚えてもらう。 例)桜・猫・電車
作業記憶②「100引く7は?」と連続して7を引いてもらう。
近時記憶③はじめに提示した3つの単語を思い出してもらう。
MCIとは?
MCIとは、正常な老化過程で予想されるよりも認知機能が低下しているものの、日常生活に明らかな障害をきたすことがないため認知症とはいえない状態を指す。
医療機関を受診したMCI患者のうち、年間10〜15%が認知症に至るとされている。
認知症の重症度と治療法
重症度は臨床症状をもとに判断を行い、認知機能テストの点数は参考程度とする。
抗認知症薬の適応における重症度は、興奮、焦燥、暴言、暴力、徘徊などの周辺症状(認知症の行動・心理症状;BPSD)の有無や程度によらないことに留意が必要である。
軽度:主に記憶障害(もの忘れ)による生活や社会活動の障害
例:頻回の置き忘れ、約束忘れ、大切なものの仕舞い忘れ、仕事上の失敗、複雑な料理ができない、複雑道具・電化製品(リモコン)が使えない、など。
中等度:認知機能障害による基本的な生活や社会活動の障害
例:天候や状況に合わせた服装や挨拶ができないことがある、簡単な道具を使う際に失敗あり、最近の大きな出来事(災害など)の忘却、身の周りで起こっていることへの関心の低下(テレビ、新聞、雑誌を見る頻度が低下する)など。
高度:認知機能障害による基本的な生活活動の著しい障害
例:ブラウスやシャツのボタンが留められない、風呂に入るのを嫌がる、待合室などでじっとしていられない、家事や日課をほとんどしなくなる、など。
軽度の治療
ChE阻害剤の投与を行う。
できる限り早期に治療をはじめることが肝要である。
各ChE阻害剤には、吐気、嘔吐、下痢などの消化器系副作用があり(貼付剤は少ない)、漸増することが基本である。
房室ブロック(Ⅱ度以上)や心房細動がみられる場合は、倦怠感や失神を生じることがある。
このような場合はすみやかに中止、または、減量することが必要である。
なお、ChE阻害剤を複数同時に投与することは添付文書上認められていない。
中等度の治療
中等度では、最も多くの選択肢がある。
軽度で述べたChE阻害剤に加え、メマンチンの選択が可能となる。
また、各薬剤の単独投与のみならず、ChE阻害剤1剤とメマンチンを併用することが可能である。
また、メマンチンは神経保護作用があることから、重症度が中等度と診断された場合、なるべく早期に投与開始することが望ましい。
中等度からはじめて治療を開始する場合で、イライラ、焦燥感などの感情が不安定な状態や易刺激性が高まっているようなとき(いわゆる、「虫の居所が悪い」という状態)には、メマンチンを優先して使用する。
そのような状態が安定したところで、ChE阻害剤を併用する。
自発性の低下が前景に立っている場合も、ChE阻害剤を投与し、維持用量に達してから1~2ヶ月以降にメマンチンを併用投与する。
なお、メマンチンにも、穏やかではあるが、自発性の向上作用がみられており、穏やかに自発性を上げたい場合にはメマンチンを先行投与する。
また、軽度からChE阻害剤を使用し、中等度に進行した場合にはメマンチンを併用する。
この場合、ChE阻害剤は継続して使用し、切り替えることは基本的には勧められない。
高度の治療
高度ADに適応をもつ薬剤は、ドネペジルとメマンチンのみである。
メマンチンは中等度と同一用量であるが、ドネペジルは高度では10mg/日が添付文書上の維持用量である。
ドネペジルは5mg/日で4週間経過した後、10mg/日に増量する。
しかし、実際には10mg/日に増量後1~2週程度の間、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢などの副作用がみられることが多い。
各地域での保健上の考え方は異なるが、7.5mg/日(5mgを1.5錠)または、8mg/日(3mg錠+5mg錠)を1ヶ月程度投与した後、10mg/日に増量することにより先に述べた副作用を回避することが可能である。
高度からはじめて治療を開始する場合で、中等度と同様にイライラ、焦燥感などの感情が不安定な状態や易刺激性が高まっているときには、メマンチンを優先して使用する。
そのような状態が安定したところでドネペジルを併用する。
自発性の低下が前景に立っている場合にはドネペジルを優先して投与する。
ドネペジル5mg/日まで増量した時点で、イライラ、焦燥感などがみられた場合にはメマンチンを追加する。
そのような状態が安定したところ(6ヶ月が目安)でドネペジルを10mg/日に増量する。
最終的には、メマンチン20mg/日およびドネペジル10mg/日を併用投与する。
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