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抗甲状腺薬と甲状腺ホルモン製剤の併用?
公開. 更新. 投稿者:甲状腺機能亢進症/甲状腺機能低下症.この記事は約3分56秒で読めます.
4,312 ビュー. カテゴリ:抗甲状腺薬と甲状腺ホルモン製剤
抗甲状腺薬を飲んでる患者にチラーヂン処方する意図は?
メルカゾールなど抗甲状腺薬服用中の患者にチラーヂンが処方されることがある。
甲状腺機能亢進症で抗甲状腺薬(メルカゾール、チウラジール/プロパジール)の維持療法中に、甲状腺の機能が過度に抑制され、機能低下症の兆候が現れた場合には、若干の甲状腺ホルモン剤(チラーヂン)を併用して甲状腺機能を補うことがあります。
このとき、抗甲状腺薬は休薬しません。
抗甲状腺薬を急に休薬すると甲状腺機能亢進症が再燃し、治療が振り出しに戻ってしまう可能性があるからです。
甲状腺機能亢進症の患者は、通常2年間以上は抗甲状腺薬の服用を続ける必要がある。
初期には多めの量が処方されるが、甲状腺腫の大きさや脈拍などの臨床症状、血液検査データの経過などを見ながら徐々に減らしていく。
そして維持量になってからは、少量の抗甲状腺薬で維持療法を行う。
バセドウ病の一般的な治療方法は、抗甲状腺薬を十分量から開始して、ホルモン量の正常化とともに漸減し、維持量となったらそれを長時間持続するというものである。
しかし、減量のため用量が維持量より不足すればコントロールができず、逆に過剰であれば医原性の甲状腺機能低下症を引き起こすため、頻回に投与量の変更を余儀なくされ調節が難しい場合がある。
また、抗甲状腺薬は副作用の頻度がかなり高く、中には無顆粒球症のような生命に関わる重篤な副作用も起こり得る。
そこで、高用量の抗甲状腺薬による甲状腺機能低下症を防ぐ目的で、相反する治療薬のレボチロキシンナトリウム水和物(チラーヂンS)が適応外処方されることがある。
ブロック・アンド・リプレース療法
バセドウ病の治療では、逆の作用を持つ抗甲状腺薬と甲状腺ホルモン製剤を併用する「ブロック・アンド・リプレース療法」が古くから行われている。
甲状腺機能の変動が大きい症例に対して、甲状腺機能を抑え込むことのできる量の抗甲状腺薬を投与すると同時に、正常な甲状腺機能を保つために甲状腺ホルモンを補うというもの。
以前はよく行われていたが、寛解率が高まるわけではないことなどから、最近はあまり行われないことが多い。
「バセドウ病治療ガイドライン2019」でも、急速に甲状腺機能を低下させたい場合の緊急的な処方であり、長期にわたっての併用は避けるよう示されている。
抗甲状腺薬と甲状腺ホルモン薬を併用する目的
1.バセドウ病の眼症が重度である場合、甲状腺機能低下症が眼症の進行に有害な可能性があり、甲状腺機能低下症を避けるためレボチロキシンを併用する。
2.T3優位型バセドウ病の場合、レボチロキシン(T4)を併用することで、血中T3/T4比が低下し甲状腺機能が安定化する。
3.抗甲状腺薬の投与によって甲状腺機能が正常化してきても、依然としてTS-Ab価が高値を示している場合、治療を中止すると再発しやすい。
そこで、チアマゾールの投与量を減量しないで、免疫抑制効果によるTS-Ab価の低下消失を期待し、同時に甲状腺機能低下症状の発現を防ぐ目的でレボチロキシンを併用する。
4.外科的療法やアイソトープ治療により寛解しているのに依然としてTS-Ab価が高値のままの患者がいる。
このような患者が妊娠すると、母体のTS-Abが胎盤を通過して胎児の甲状腺を刺激し、胎児に甲状腺機能亢進症を発症させる恐れがある。
このような場合、チアマゾールとレボチロキシンを併用すると、チアマゾールは胎盤を通過するので胎児の機能亢進を抑制し、レボチロキシンは胎盤を通過しないので胎児には影響を与えず、寛解している母体のチアマゾールによる甲状腺機能低下を防ぐことができる。
5.良好な経過をたどっているにもかかわらず、甲状腺腫が腫大してくる場合がある。
これは抗甲状腺薬の過剰投与による甲状腺機能低下でTSHの分泌が上昇しているためと考えられる。
このような患者では、しばしば抗甲状腺薬のみによる調節が難しいため、TSHの分泌を抑制して甲状腺の腫大を防ぐ目的でレボチロキシンの併用を試みる。
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