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大酒飲みは薬が効きにくい?
公開. 更新. 投稿者:肝炎/膵炎/胆道疾患.この記事は約0分23秒で読めます.
3,033 ビュー. カテゴリ:大酒飲みは麻酔がかかりにくい
麻酔科医が「大酒飲みは麻酔がかかりにくい」といいます。
アルコ-ルは肝臓にあるアルコ-ル脱水素酵素だけでなく、チトクロ-ム Pー450によっても代謝されます。
このチトクロ-ム Pー450 はアルコ-ルだけでなく、多くの薬物を代謝する酵素です。
慢性飲酒者は日頃からチトクロ-ム Pー450を鍛えてあるため、アルコ-ルだけでなく麻酔薬をも普通の人よりどんどん早く分解処理してしまいます。
飲酒で薬が効かなくなる?
基本的に、お酒を飲むと薬の効果が強く表れる、副作用が出るというイメージですが。
大酒のみは麻酔が効きにくいというように、薬が効かなくなるということもある。
体内に吸収されたアルコール(エタノール)は、大部分が肝臓におけるアルコール脱水素酵素(ADH)/アルデヒド脱水素酵素(ALDH)系で代謝されるが、約1割はミクロソーム・エタノール酸化系(microsomal ethanol oxidizing system:MEOS)で代謝される。
エタノールをアセトアルデヒドへと変換するMEOSは、様々なチトクロームP450(CYP)分子種から構成されている。
約50%をCYP2E1が占めるが、CYP1A2、3A4なども含まれる。
そのため、エタノールとこれらのCYPで代謝される薬剤とを同時に摂取した場合、代謝が競合阻害され、双方の作用が増強する可能性がある。
MEOSが代謝するのは体内に吸収されたエタノールの約1割程度であるため、適量の飲酒では問題ないが、1度に大量のエタノールを摂取した場合はADH/ALDH系による代謝が飽和し、MEOSでも盛んに代謝されると考えられる。
一方、慢性的なエタノール摂取により、MEOSを構成するCYPが誘導されることも知られている。
CYPが誘導されると、アルコールに耐性を示したり、服用している薬剤の代謝が促進され血中濃度が低下したりする。
特に、CYP2E1は慢性飲酒によって4~10倍以上と強く誘導されるため、CYP2E1で代謝される薬剤は効果が著しく減弱する。
主にCYP2E1で代謝される薬剤には、テオフィリンなどのキサンチン系薬(一部CYP1A2、3A4でも代謝)、ハロゲン化全身麻酔薬、クロルゾキサゾンなどがある。
加えて、アセトアミノフェンや、発癌物質であるニトロソアミン、アゾ化合物などは、CYP2E1で代謝されると毒性を示す活性中間体となる。
従って慢性飲酒によりCYP2E1が誘導されることで、アセトアミンフェンによる肝毒性発現や、食品・喫煙などによる発癌のリスクが高まる可能性がある。
CYP2E1はエタノールからアセトアルデヒドを生成するだけでなく、エタノールを反応性の高い1-ヒドロキシエチルラジカルに変換する。
またCYP2E1は、CYPの分子種の中では高いニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)オキシダーゼ活性を持つことも知られている。
NADPHオキシダーゼは酸素分子(O2)を一電子還元して活性酸素(スーパーオキサイド、O2-)を産生する酵素である。
活性酸素は極めて反応性が高く、生体内で好中球の殺菌作用を担うが、過剰に産生されると脂質の過酸化などを引き起こし、肝毒性を生じる。
また活性酸素は炎症性疾患や老化、癌、生活習慣病、パーキンソン病、アルツハイマー型認知症など、様々な疾患の発症や増悪に関わるとされている。
このようにCYP2E1が誘導されると活性酸素が恒常的に過剰産生され、炎症の亢進を招く恐れがあることから、炎症性疾患の患者に対しては慢性的な飲酒を控えさせなければならない。
またニコチンにもCYP2E1誘導作用があるため、慢性飲酒者が喫煙したり、禁煙補助剤としてニコチン製剤を使用したりする場合には、CYP2E1を介した毒性がさらに生じやすくなる。
適切なエタノール量(20~30g/日以下)の飲酒であれば健康に全く問題ないと考えられるが、健康男子が肝障害を起こさない程度のエタノール量(40g/日)を毎日摂取した場合、CYP2E1活性は1週間後に2倍、4週間後には5倍に上昇することが示されている。
また別の報告では、アルコール性肝障害患者が断酒した場合、CYP2E1活性は断酒後3日目までに急速に減衰した。
その後も、15日目までは緩やかに低下するが、15日目の活性は3日目と比較して有意差は認められなかった。
いずれも欧米人を対象とした研究結果だが、このようにCYP2E1の誘導および減衰は短期間で起こることが示されている。
これは、一般にCYPの誘導が遺伝子発現の亢進によって起こるのに対し、エタノールによるCYP2E1誘導は、CYP2E1を分解する酵素の阻害に起因するためと考えられている。
参考書籍:日経DI2011.12
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