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なぜ前立腺は肥大するのか?
公開. 更新. 投稿者:前立腺肥大症/過活動膀胱.この記事は約4分29秒で読めます.
3,801 ビュー. カテゴリ:前立腺肥大症の原因って何?
肥大した前立腺は戻らない?
なぜ、前立腺は肥大するのか。
前立腺が肥大するメカニズムについては、加齢による男性ホルモンが影響しているとされているが、α₁受容体への交感神経による刺激が引き金となると言われている。
前立腺の細胞では、中高年になると細胞増殖と細胞死(アポトーシス)のバランスが崩れ、細胞増殖が優位になることで前立腺肥大が起こる。
この細胞増殖と細胞死の不均衡は、ジヒドロテストステロンがアンドロゲン受容体に結合することで促進される。
ジヒドロテストステロンはテストステロンから5’α-リダクターゼの作用で生じ、テストステロンの約10倍の前立腺肥大作用を示す。
したがって、5’α-リダクターゼを抑制してジヒドロテストステロンの生成を阻害することで、前立腺細胞の増殖を抑え、肥大を抑制することが可能と考えられる。
前立腺肥大症を治す薬
デュタステリドは汎用されているα1遮断薬と比較して作用発現に時間がかかるが、肥大した前立腺自体を退縮させ機械的閉塞を緩和する薬剤である。
PSA値を低下させる点は抗アンドロゲン薬と同様であり性欲減退の副作用もあるものの、抗アンドロゲン薬よりテストステロンの阻害に関連した副作用が軽減されている可能性に期待が寄せられている。
前立腺を縮小し、尿道の閉塞をとる方法として、薬物療法では抗アンドロゲン薬に加え、最近では、5α還元酵素阻害薬も使えるようになりました。
5α還元酵素阻害薬は効果発現に6カ月程度必要ですが、前立腺を20~30%縮小させることが期待できます。
抗アンドロゲン薬には性機能障害、肝機能障害、女性化乳房などの副作用が現れることがあり、科学的根拠も乏しいため、今後は、5α還元酵素阻害薬に移行していくと思われます。
テストステロンとデヒドロテストステロン
テストステロンを活性体DHTに変換する酵素が、ステロイド5αレダクターゼ(5αR)です。
これは、細胞内の小胞体膜上に存在する膜タンパク質です。
正常なヒトの血液中のテストステロンとDHTの濃度比は11:1と圧倒的にテストステロンが過剰に存在しますが、前立腺内では5αRが働くことにより、その比は
1:5と逆転します。
DHTは男性ホルモン受容体(AR)に結合して前立腺の増殖などの機能にかかわる遺伝子群の発現を誘導しています。
一方、テストステロンもまったく不活性ということではなく、同じくARに結合して遺伝子の発現を誘導しますが、結合力はDHTと比べて低く、前立腺の増殖促進作用は半減します。
前立腺肥大症および前立腺がんの発症原因としてDHTの過剰産生が認められています。
前立腺の役割
前立腺肥大症という病名は有名ですが、前立腺の役割についてはあまり知らない。
前立腺がんなどで前立腺を切除したらどのような影響が出るのか?
前立腺の役割については、まだ解明されていない部分が多く、主な働きとしては前立腺液の分泌。精嚢から分泌された精嚢液を精巣で作られた精子と混合し精液を作り、射精における収縮や尿の排泄なども担っている。
前立腺 – Wikipedia
射精への影響、ED、排尿障害、尿失禁などは考えられる。
女性には無い部分なので、無くても生きられるといえば生きられる。
前立腺は男性のみに存在する生殖器官で、膀胱の出口のところに尿道を取り巻くように存在しています。
成人では約15g(上下径約2〜3cm、左右径約4cm、前後径約2cm)で、ちょうど栗の実ぐらいの大きさで、形も栗の実に似ています。
組織学的には、尿道の周囲に存在する内腺とその外側にある外腺に2分され、内腺の上皮(腺細胞)と間質細胞が肥大・増殖して結節性腫瘤ができた状態が前立腺肥大(BPH)で(LUTSを伴わない良性の肥大は、前立腺腫大「BPE」と呼ばれる)、前立腺がんは主に外腺から発生します。
前立腺の上皮から分泌される前立腺液は乳白色の液体で、クエン酸やさまざまな加水分解酵素、亜鉛などを含み精嚢の分泌物とともに精液をつくっています。
前立腺液は精液の約15〜30%を構成し、栗の花のような特有の匂いをもっています。
前立腺液に含まれる加水分解酵素の1つであるプロテアーゼは、射精後の精液を液化する作用を有し、前立腺特異抗原(PSA)として前立腺がんの腫瘍マーカーに利用されています。
このように、前立腺は精液の生成に重要な役割を果たしている臓器であるとともに排尿にも関与しているともいわれ、その機能についてはまだはっきりとはわかっていないことが多い、謎の臓器なのです。
前立腺肥大症が進むと前立腺癌になる?
前立腺肥大症の症状と、前立腺癌の初期の症状は似ています。
そのために区別が非常に難しいです。
症状は同じですが、前立腺肥大症と前立腺癌はまったく違う病気です。
前立腺の内側が大きくなるのが前立腺肥大症で、前立腺の外側が大きくなるのが前立腺癌。
前立腺肥大症が前立腺癌に進行することはありません。
しかし、前立腺肥大症と前立腺癌が同時に存在することがあります。
前立腺肥大症と前立腺癌の違い
前立腺は膀胱直下に位置して、精液の調製・射精にかかわる器官ですが、細胞増殖に基づく器官の肥大により前立腺肥大症が発症します。
症状は肥大による尿道閉塞から直接的に起因するものと、二次的な勝耽の機能変化に起因するものが存在します。
夜間頻尿の他に排尿開始遅延、尿線細小、残尿感など、その症状は多様です。
前立腺は尿道を取り囲む内腺とその外側に位置する外腺から成り立っていますが、前立腺肥大は内腺に発生する良性腫傷であり、外腺に発生する前立腺がんとは異なります。
前立腺肥大症と前立腺癌
前立腺癌は、尿道から離れた辺縁領域に好発します。
前立腺癌の発生部位は尿道から遠いため、初期には臨床症状はほとんどみられませんが、腫瘍体積の増加に伴って、排尿困難、頻尿、残尿感などの前立腺肥大症に類似した下部尿路症状を生じます。
前立腺癌は、前立腺肥大症の好発年齢とほぼ一致し、また癌特有の症状がないことから、臨床症状からの鑑別は困難とされています。
なお、前立腺癌は、癌の進行に伴って骨やリンパ節などへ浸潤・転移しますが、前立腺肥大症は転移せず、悪性腫瘍に進行することはないと考えられています。
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