2025年6月25日更新.2,507記事.

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年をとると体重は減る?年齢と体重の関係

年齢と体重の関係:加齢による変化と健康管理

「年を取ると太る」と言われる一方で、「高齢になると痩せていく」という話も耳にします。実際には、加齢に伴い私たちの体重や体組成には複雑な変化が生じます。年齢と体重の関係について、基礎代謝や筋肉量の変化、生理的な現象などを勉強します。

加齢による基礎代謝の低下

加齢とともに多くの人が経験するのが、基礎代謝量の減少です。基礎代謝とは、体温の維持や臓器の活動など、安静時に必要とされる最低限のエネルギーのこと。成人のエネルギー消費量の60〜75%を占めています。

この基礎代謝の低下には、筋肉の減少が関係しています。筋肉は体内で最も大きな組織の一つであり、エネルギー消費の中心を担っています。しかし、年齢を重ねるにつれて筋肉量は減少し、結果的に代謝も落ちてしまいます。

そのため、若い頃と同じ食生活を続けていると、摂取カロリーが消費カロリーを上回り、脂肪として蓄積されやすくなります。これが、「年を取ると太りやすくなる」理由の一つです。

加齢に伴う体重の自然な減少

一方で、高齢者になると体重が徐々に減少していくという現象もあります。これは人間に限らず、マウスやラットなどの実験動物でも同様に観察されています。

体重は中年期にピークを迎えた後、ゆるやかに減少していきます。特に高齢になると、筋肉だけでなく内臓や骨、皮膚などの臓器や構造物の萎縮が始まり、それに伴い体の総重量も軽くなっていきます。また、体内の水分量の減少や、消化吸収機能の低下も体重減少の一因です。

これらの変化は、病的な「低栄養状態」とは区別されるべき自然な現象です。むしろ、体重だけにとらわれず、筋肉量や栄養状態に着目することが重要です。

筋肉量と体脂肪の変化

加齢によって起こる体組成の変化の代表が、「サルコペニア(加齢性筋肉減少症)」です。筋肉量が減る一方で、体脂肪はむしろ増加傾向になります。つまり、見かけの体重が変わらなくても、体の中身は変化しているのです。

とくに注意が必要なのが、腹部に脂肪が蓄積する「内臓脂肪型肥満」です。これは生活習慣病のリスクを高める要因であり、定期的な健康診断などで内臓脂肪の蓄積をチェックすることが推奨されます。

なぜ筋肉が減少するのか?

筋肉量の減少にはいくつかの原因があります:

・活動量の低下:年齢とともに日常生活の動作が減り、筋肉を使う機会が少なくなる。
・ホルモンの変化:成長ホルモンやテストステロンなど、筋肉の合成に関与するホルモンが減少。
・タンパク質の摂取不足:食事量の減少や食嗜好の変化により、筋肉維持に必要な栄養素が不足しがちになる。

このような背景から、高齢者においては筋肉を意識的に維持・増強することが健康寿命の延伸に直結します。

カロリー制限と寿命の関係

近年、カロリー制限が寿命延長に有効であるという研究が注目されています。実験動物において、摂取カロリーを適切に制限することで、体重の増加を抑え、健康状態を長く維持できることが示されています。

興味深いことに、カロリー制限を行った動物では、体重のピークが遅れて訪れるだけでなく、その後の体重減少もより緩やかに進みます。人間においても、極端なカロリー制限ではなく、適正体重を意識したバランスの良い食生活が、健康維持に貢献するとされています。

年齢別の体重管理の考え方

年齢ごとに異なる体重管理のポイントを押さえておくことが大切です。

体重管理のポイント
・20〜30代:筋肉量が多く代謝が高い、バランスの取れた食生活と適度な運動
・40〜50代:代謝が徐々に低下、筋トレを取り入れて筋肉維持、過食に注意
・60代以降:筋肉・臓器の萎縮が進む、栄養バランス重視、タンパク質摂取と軽運動

体重計の数字だけに惑わされず、体脂肪率や筋肉量の推移を意識しながら、年齢に合った健康的な生活を送ることが理想です。

まとめ

年齢とともに体重や体組成が変化するのは自然なことです。若い頃は代謝が高く太りにくく、高齢になると代謝が低下して太りやすくなる一方で、一定の年齢を超えると筋肉や臓器の萎縮によって体重が減少する傾向があります。

このような変化を理解し、食生活の見直し、筋肉量の維持、適度な運動を取り入れることで、加齢による体の変化とうまく付き合っていくことができます。

単なる「体重」ではなく、「中身(筋肉・脂肪・骨)」に目を向けた健康管理が、これからの時代にはより重要になるでしょう。

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