2026年2月3日更新.2,739記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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カンジダ膣炎にジフルカン1回投与?

カンジダ膣炎にジフルカン1回投与?―その有効性と注意点

外陰膣カンジダ症(いわゆるカンジダ膣炎)は、女性に非常に多い感染症の一つです。強いかゆみ、おりものの変化、不快感など、日常生活に与える影響は小さくありません。治療といえば膣錠や膣坐剤といった局所療法が一般的ですが、近年よく耳にするのが「ジフルカン1回飲むだけで治る」という内服治療です。

内服治療の位置づけ、効果、使われるケース、そして注意点について、勉強していきます。

カンジダ膣炎とはどんな病気?

カンジダ膣炎は、カンジダ属という真菌(カビ)が膣内で異常増殖することによって起こります。原因菌として最も多いのは Candida albicans ですが、近年は非アルビカンス・カンジダも増えています。

主な症状
・強い外陰部・膣内のかゆみ
・白色でヨーグルト状、酒粕状のおりもの
・外陰部の発赤、腫脹
・排尿時や性交時の違和感

これらの症状は特徴的ですが、必ずしも「かゆみ=カンジダ」とは限らず、細菌性膣炎や性感染症との鑑別が重要です。

カンジダ膣炎の基本的な治療

治療の基本は抗真菌薬です。多くの場合、以下のような治療が行われます。

・膣錠・膣坐剤(数日間使用)
・外陰部への抗真菌外用薬

これらは局所に高濃度で薬剤が届き、全身への影響が少ないという利点があります。そのため、初発例や妊娠中の患者では局所治療が第一選択となります。

ジフルカンとはどんな薬?

ジフルカンは、トリアゾール系抗真菌薬であるフルコナゾールを有効成分とする内服薬です。体内に吸収され、血流に乗って全身に分布するため、膣内だけでなく体内のカンジダにも作用します。

特徴
・経口投与で確実に吸収される
・半減期が長く、1回投与でも効果が持続
・カンジダ・アルビカンスに対して高い有効性

この「半減期が長い」という性質が、「1回飲めばよい」という治療法を可能にしています。

カンジダ膣炎にジフルカン1回投与?

実際の用法
一般的な成人の外陰膣カンジダ症では、フルコナゾール150mgを1回内服する、という用法が用いられます。多くの症例で、この1回投与のみで症状の改善が認められます。

なぜ1回で効くのか
・体内での滞留時間が長い
・膣分泌液中にも有効濃度が移行する
・真菌の増殖を持続的に抑制できる

これらの理由から、毎日飲み続けなくても治療効果が期待できるのです。

どんな人に向いている治療?

ジフルカン1回投与は万能ではありません。次のようなケースで選択されることが多い治療法です。

・再発を繰り返している
・膣錠・膣坐剤の使用が難しい
・確実に内服できる環境にある
・医師が内服治療が適切と判断した場合

一方で、初めての症状や診断が確定していない場合には、まず局所治療が選ばれることが多いのが実情です。

妊娠中はカンジダになりやすい

膣内のカンジダの増殖は女性ホルモンと深く関連しており、妊娠中や女性ホルモン剤の使用時には、カンジダ膣炎の発症が多くなることが知られています。

女性ホルモンとカンジダ膣炎との関係は不明な部分もありますが、通常、成人女性の膣上皮細胞内には、エストロゲンの作用によってグリコーゲンが蓄積します。このグリコーゲンは、上皮細胞の剥脱時に膣内へ流出し、デーデルライン桿菌によって分解され、乳酸が産生されます。

デーデルライン桿菌とは?

デーデルライン桿菌とは、膣内に存在するグラム陽性桿菌の総称で、発見者の名前に由来します。特定の菌種を指すわけではありませんが、主に乳酸菌の一種であるラクトバシラス属によって構成されていると考えられています。

膣内にグリコーゲンが豊富に存在し、デーデルライン桿菌の活性が十分であれば、乳酸が産生され、膣内は酸性に保たれます。この酸性環境がいわゆる自浄作用として働き、カンジダの増殖は抑えられています。

しかし、女性ホルモンのバランスが崩れてグリコーゲンが減少したり、抗生物質の投与によってデーデルライン桿菌が抑制されたりすると、乳酸の産生が不十分となり、カンジダが増殖しやすくなります。

女性ホルモンの中でも、黄体ホルモンの影響が指摘されています。黄体ホルモンはエストロゲンの作用に拮抗し、乳酸の産生を抑えることで、結果的にカンジダの増殖を促すのではないかと考えられています。

妊娠中は黄体ホルモンの濃度が高くなるため、カンジダ膣炎が起こりやすくなります。また、女性ホルモン剤の中でも、特に黄体ホルモン作用の強い製剤には注意が必要とされています。

妊娠中にジフルカンは使える?

結論から言えば、妊娠中のカンジダ膣炎にジフルカンの内服は原則として使用されません。

理由は以下の通りです。

・胎児への影響が完全には否定できない
・特に妊娠初期では安全性の問題がある
・局所治療で十分対応可能なケースが多い

そのため、妊娠中のカンジダ膣炎では、膣錠や膣坐剤による局所治療が基本となります。

洗いすぎでカンジダ膣炎?

カンジダは高温多湿の環境を好むため、患部はなるべく湿気を避けることが大切です。蒸れやすい下着や、生理用タンポンの長時間使用は避けるように指導されます。

水着などの濡れた衣類も、可能な限り早く着替えることが勧められます。

一方で、かゆみが強いために患部を頻回に洗浄したり、入浴時に石けんでしっかり洗いたくなることがあります。しかし、ビデなどによる膣内洗浄は、薬剤の膣内濃度を低下させたり、膣内のpHを上昇させたりする可能性があり、治療の妨げになります。

また、石けんの使用も刺激によって炎症を増悪させることがあるため、基本的には控えるのが望ましいとされています。

再発例では1回投与で足りないことも

再発を繰り返す外陰膣カンジダ症では、1回投与で十分な効果が得られない場合があります。そのようなケースでは、以下のような治療が検討されます。

・数日後に追加投与
・一定期間の維持療法
・菌種の同定と薬剤選択の見直し

特に非アルビカンス・カンジダでは、フルコナゾールの感受性が低いこともあり、注意が必要です。

薬剤師・医療者として伝えたいポイント

・「1回で治る」という言葉だけが独り歩きしないようにする
・妊娠の有無は必ず確認する
・初発か再発かで治療方針が変わる
・症状が改善しない場合は受診を促す

患者にとって内服1回で済む治療は魅力的ですが、安全性と適正使用の視点は欠かせません。

まとめ

・カンジダ膣炎にジフルカン1回投与という治療は実際に行われている
・再発例や膣剤が使いにくい場合に有用
・妊娠中には原則使用しない
・洗いすぎや生活習慣も再発の要因になる

「1回で治る」という便利さの裏にある条件や注意点を正しく理解することが、カンジダ膣炎治療ではとても重要です。

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