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適応外処方は違法?
公開. 更新. 投稿者:薬局業務/薬事関連法規.この記事は約4分9秒で読めます.
4,348 ビュー. カテゴリ:55年通知
適応外処方は、健康保険法など保険関係の法律に違反しているように思われるかも知れませんが、日常的に行われ、保険給付の対象にもなっています。
これは1980年に厚生省(当時)が出した「保険診療における医薬品の取り扱いについて」という保険局長通知が根拠になっています。
昭和55年に出されたことから「55年通知」と呼ばれるこの通知は、間接的な表現ながら、再審査期間経過後の医薬品を薬理作用に基づいて処方した場合は、添付文書の効能・効果欄に記された病名がレセプトになくても、保険請求を認めるとする見解を示しています。
法律の解釈を示した通知類は法律の一部を構成するものとされますので、適応外処方が即、法律違反ということにはならないわけです。
ただし、医師が自身の裁量に基づいて自由に適応外処方ができるかといえば、そうではありません。
現実には審査支払機関の保険審査によって、認められる基準が事実上、決められています。その基準に合致しなければ、医療機関は返戻を受けることになります。
なお、この基準には都道府県によって違いがあり、以前から不公平という批判が強くありました。
このような不公平を解消するため、支払基金がレセプト審査で保険請求を認める適応外処方の事例も公表されています。
保険請求を認める適応外処方の事例
薬剤|社会保険診療報酬支払基金
医薬品名 | 症例 |
---|---|
d-クロルフェニラミンマレイン酸塩・ベタメタゾン配合【内服薬】 | 好酸球性副鼻腔炎 |
アシクロビル【内服薬】 | ボルテゾミブ使用時の管理、造血幹細胞移植時の管理 |
アスピリン【内服薬】 | 網状皮斑に対して血栓・塞栓形成の抑制量程度 |
アデノシン三リン酸二ナトリウム【内服薬】 | 内耳障害に基づく耳鳴症、感音難聴 |
アテノロール【内服薬】 | 小児の頻脈性不整脈(洞性頻脈、期外収縮) |
アドレナリン【外用薬】 | クループ症候群 |
アミトリプチリン塩酸塩【内服薬】 | 片頭痛、緊張型頭痛 |
アミトリプチリン塩酸塩【内服薬】 | 慢性疼痛におけるうつ病・うつ状態 |
アメジニウムメチル硫酸塩 | 起立性調節障害 |
アメジニウムメチル硫酸塩 | 小児の起立性調節障害 |
アモキシシリン水和物【内服薬】 | 急性副鼻腔炎 |
アンピシリンナトリウム・スルバクタムナトリウム | 皮膚軟部組織感染症、髄膜炎 |
イソソルビド【内服薬】 | 急性低音障害型感音難聴、内リンパ水腫 |
イダルビシン塩酸塩 | 骨髄異形成症候群(高リスク群)、難治性の造血器悪性腫瘍 |
イミプラミン塩酸塩【内服薬】 | 末梢性神経障害性疼痛 |
イミプラミン塩酸塩【内服薬】 | 慢性疼痛におけるうつ病・うつ状態 |
インドメタシン ファルネシル【内服薬】 | 片頭痛、筋収縮性頭痛 |
インドメタシン【坐剤】 | 癌性疼痛 |
インドメタシン【内服薬】 | 好酸球性膿疱性毛包炎 |
インドメタシン【内服薬】 | 片頭痛、筋収縮性頭痛 |
エタンブトール塩酸塩【内服薬】 | 非結核性抗酸菌症 |
エトポシド | 卵巣癌 |
エトポシド【内服薬】 | 急性白血病、慢性骨髄単球性白血病 |
エナラプリルマレイン酸塩 | 小児の高血圧、小児の心不全 |
エノシタビン | 骨髄異形成症候群(高リスク群)、難治性の造血器悪性腫瘍 |
カナマイシン一硫酸塩【内服薬】 | 肝性昏睡時の腸管内殺菌 |
カプトプリル【内服薬】 | 現行の適応症について小児 |
カルバマゼピン | 抗痙攣薬の神経因性疼痛、各種神経原性疼痛、がん性疼痛 |
カルバマゼピン【内服薬】 | 多発性硬化症に伴う異常感覚・疼痛、頭部神経痛、頚部神経痛 |
カルベジロール【内服薬】 | アンジオテンシン変換酵素阻害薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の基礎治療を受けている小児の虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性心不全 |
カルボプラチン | 子宮体癌 |
クエチアピンフマル酸塩【内服薬】 | パーキンソン病に伴う幻覚、妄想、せん妄等の精神病症状 |
クラリスロマイシン【内服薬】 | 好中球性炎症性気道疾患 |
クロタミトン | 疥癬 |
クロナゼパム【内服薬】 | レム(REM)睡眠行動異常症 |
クロモグリク酸ナトリウム【外用薬】 | 現行の適応症について、3歳以下の小児の症例でスペーサーを用いての使用 |
クロモグリク酸ナトリウム【内服薬】 | 現行の適応症について6か月未満の乳児 |
コルヒチン【内服薬】 | ベーチェット病、掌蹠膿疱症 |
コルヒチン【内服薬】 | ベーチェット病 |
サプロプテリン塩酸塩 | BH4反応性フェニルアラニン水酸化酵素異常症 |
ジアゼパム | 新生児痙攣、鎮静 |
ジアゼパム【内服薬・注射薬】 | てんかん |
シアノコバラミン | ビタミンB12依存性メチルマロン酸血症 |
ジクロフェナクナトリウム【内服薬】 | 顎関節症の関節痛 |
ジクロフェナクナトリウム【内服薬】 | 片頭痛、筋収縮性頭痛 |
シクロホスファミド【内服薬】 | 関節リウマチ、慢性炎症性多発ニューロパチー、免疫介在性ニューロパチー、多発性硬化症、重症筋無力症、ベーチェット病、ステロイド抵抗性膠原病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP) |
ジソピラミド | 小児の頻脈性不整脈 |
ジピリダモール【内服薬】 | 川崎病冠動脈後遺症合併症の管理 |
スピロノラクトン | 腎性尿崩症 |
スピロノラクトン【内服薬】 | 現行の適応症について小児 |
スルタミシリントシル酸塩水和物 | 手術創などの二次感染、顎炎、顎骨周囲蜂巣炎 |
スルファメトキサゾール/トリメトプリム【内服薬】 | ノカルジア症 |
スルファメトキサゾール・トリメトプリム | ニューモシスチス肺炎 |
セレギリン塩酸塩【内服薬】 | L-dopa製剤の併用がないパーキンソン病 |
ダウノルビシン塩酸塩 | 骨髄異形成症候群(高リスク群)、難治性の造血器悪性腫瘍 |
チアミン塩化物塩酸塩、チアミン硝化物 | ビタミンB1依存性楓糖尿症、ピルビン酸脱水素酵素異常症 |
チクロピジン塩酸塩 | 冠動脈ステント留置後の血栓予防 |
チクロピジン塩酸塩【内服薬】 | 心筋梗塞 |
チザニジン塩酸塩【内服薬】 | 緊張型頭痛 |
デキサメタゾン【内服薬】 | 急性閉塞性喉頭炎(クループ症候群) |
デノパミン【内服薬】 | 現行の適応症について小児 |
ドキシサイクリン塩酸塩水和物【内服薬】 | 熱帯熱マラリア、レプトスピラ症、リケッチア感染症、ライム病等のボレリア属感染症、日本紅斑熱、つつが虫病 |
ドキソルビシン塩酸塩 | 卵巣癌 |
トレミフェンクエン酸塩 | 閉経前乳癌 |
トロンビン | 内視鏡生検時出血 |
ナプロキセン【内服薬】 | 顎関節症の関節痛 |
ニフェジピン【内服薬】 | 小児の高血圧 |
バラシクロビル塩酸塩【内服薬】 | 急性網膜壊死、ヘルペスウイルス性虹彩炎 |
バラシクロビル塩酸塩【内服薬】 | 特発性末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺) |
ハロペリドール【内服薬】【注射薬】 | 器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性 |
ビオチン | ビオチン依存性マルチプルカルボキシラーゼ欠損症 |
ビソプロロールフマル酸塩【内服薬】 | 肥大型心筋症 |
ヒドロキシカルバミド | 真性赤血球増多症、本態性血小板血症、慢性骨髄単球性白血病 |
ヒドロキシカルバミド【内服薬】 | 急性骨髄性白血病 |
ヒドロクロロチアジド | 腎性尿崩症 |
ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム | 循環系ショック状態 |
ヒドロコルチゾンリン酸エステルナトリウム | 循環系ショック状態 |
ピルシカイニド塩酸塩水和物【内服薬】 | 現行の適応症について小児 |
ファモチジン | 胃食道逆流現象 |
ブスルファン | 造血幹細胞移植前処置 |
フマル酸クエチアピン【内服薬】 | 器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性 |
プランルカスト水和物【内服薬】 | 現行の適応症について小児 |
フルダラビンリン酸エステル【内服薬】 | 慢性リンパ性白血病 |
プレドニゾロン【内服薬】 | 進行性筋ジストロフィー(デゥシェンヌ型・ ベッカー型)、難治性てんかん、点頭てんかん、非けいれん性てんかん重積状態、群発性頭痛 |
プロカテロール塩酸塩水和物【外用薬】 | 乳児の喘鳴症状 |
ヘパリンナトリウム | 抗リン脂質抗体症候群合併妊娠 |
ヘパリン類似物質【外用薬】 | アトピー性皮膚炎に伴う乾皮症 |
ベラパミル塩酸塩【内服薬】 | ベラパミル感受性心室頻拍、片頭痛、群発性頭痛 |
ベラパミル塩酸塩【内服薬】 | 肥大型心筋症 |
ペロスピロン塩酸塩水和物【内服薬】 | 器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性 |
ポラプレジンク【内服薬】 | 味覚障害 |
ミゾリビン【内服薬】 | 副腎皮質ホルモン剤のみでは治療困難な場合の、腎炎における尿蛋白抑制効果又は腎組織障害の軽減 |
ミトキサントロン塩酸塩 | 骨髄異形成症候群(高リスク群)、難治性の造血器悪性腫瘍 |
ミノサイクリン塩酸塩【内服薬】【注射薬】 | 日本紅斑熱 |
ミリモスチム | 骨髄不全症候群に伴う好中球減少 |
メキシレチン塩酸塩【内服薬】 | 小児の頻脈性不整脈(心室性) |
メキタジン【内服薬】 | 年長児の気管支喘息・アレルギー性鼻炎患者 |
メコバラミン | ベル麻痺、突発性難聴、反回神経麻痺 |
メコバラミン【内服薬】 | 帯状疱疹、帯状疱疹後神経痛 |
メシル酸ペルゴリド【内服薬】 | L-dopa製剤の併用がないパーキンソン病 |
メトキサレン【外用薬】 | 乾癬 |
メトキサレン【内服薬】 | 乾癬 |
メトロニダゾール【内服薬】 | プロピオン酸血症、メチルマロン酸血症 |
モルヒネ塩酸塩【内服薬】・【注射薬】・【外用薬】 | 筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋ジストロフィーの呼吸困難時の除痛 |
モルヒネ硫酸塩【内服薬】 | 筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋ジストロフィーの呼吸困難時の除痛 |
ランソプラゾール/アモキシシリン/クラリスロマイシン【内服薬】 | ヘリコバクター・ピロリ菌陽性の特発性血小板減少症 |
リスペリドン【内服薬】 | 器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性、パーキンソン病に伴う幻覚 |
リファンピシン | 非結核性抗酸菌症 |
リボフラビン | ビタミンB2依存性マルチプルアシルCoA脱水素酵素異常症 |
ロキソプロフェンナトリウム水和物【内服薬】 | 顎関節症の関節痛 |
ロキソプロフェンナトリウム水和物【内服薬】 | 片頭痛、緊張型頭痛 |
ワルファリンカリウム【内服薬】 | 心房細動、冠動脈バイパス術 |
塩酸シプロフロキサシン【内服薬】 | 日本紅斑熱、サルモネラ(感染)症、髄膜炎菌感染症 |
臭化ジスチグミン【外用薬】 | 片眼弱視 |
酢酸メテノロン【内服薬】 | 骨髄異形成症候群及び骨髄線維症における貧血改善 |
イソソルビド硝酸エステル【外用薬】 | 心不全 |
アシクロビル【内服薬】 | 水痘 |
アシクロビル【内服薬】 | ヘルペス性歯肉口内炎 |
アシクロビル【内服薬】 | 角膜ヘルペス、角膜内皮炎、桐沢型ぶどう膜炎 |
未承認薬でも保険適応できる?
公的医療保険が適用されている医薬品でも一部の疾患では適用が認められず、実質的に使用できない例が多いことについて、がん患者らの70団体は13日までに、保険適用の柔軟な運用を国が1980年に認めた「昭和55年通知」の徹底を求め、長妻昭厚生労働相に要望書を提出した。
55年通知は、当時の厚生省と日本医師会の合意内容を反映。薬事法に基づく承認を受けていない使い方でも、学術研究などを根拠に医師が処方した場合は保険適用を認めるとした。要望書は、この通知を積極的に利用して保険適用を広げるよう強く求めている。
患者側からは「乳がん治療で使える抗がん剤でも、卵巣がんでは使えないなどの深刻な矛盾が生じている。薬事承認と保険適用を切り離している国もあり、日本もこれにならうべきだ」との声が高まっている。「昭和55年通知」で保険適用を がん患者ら厚労相に要望 – 47NEWS(よんななニュース)
55年通知なるものを初めて知りました。
これは、2項目からなり「医学、薬学上、公知の有効性が認められている薬剤は、保険適応外であっても、その使用に対しては、柔軟な対応をすべし。この対応に関しては、支払基金間での相違がないように配慮すべし」というものです。
適応外の処方でも査定されなかったりするのは、この通知によるものなのでしょうか。
柔軟な対応とか、配慮とか、あいまいな記述でどうにでも使えそうな通知ですね。
突合点検
突合点検で気になるのは、適応外処方の薬剤を薬局が調剤した場合だが、通常は調剤の査定分も含めて、医療機関の支払額から減額されることになる。
従って、薬局が減額されるケースは少なさそうだが、支払基金で適応外処方などを点検する際に、薬局に処方箋の提出依頼が届くことになる。
提出期限は毎月25日だが、月末までに処方箋を支払基金に提出しないと、指摘された分の報酬が、自動的に薬局側から差し引かれてしまうので要注意だ。
また、先発品と後発品の適応が異なる医薬品で、先発品から後発品に変更調剤を行った場合、後発品に適応がないことを理由に査定されたら、その請求は医療機関と薬局のどちらにいくのかという問題もある。
医療機関は、薬局で適応のない後発品に変更されることは処方時点では想定できず、薬局も患者の病名が分からない以上、変更後の後発品に適応があるか、判断できない。
この問題について、支払基金が厚生労働省に問い合わせたところ、同省は「一律に査定を行うと後発品への変更調剤が進まなくなる。それに伴い医療費が増える可能性があることを保険者に説明して影響を理解してもらうよう努めていただきたい」と、明確には回答していない。
支払基金も2月末時点で、「薬局と医療機関のどちらに請求するかは難しい」としており、少なくとも当面は査定は行われないものとみられる。
参考書籍:日経DI2012.3
全ての適応外処方が査定されるのか?
基本的には、薬価収載の適応症・投与量・投与日数に基づいた投薬のルールを徹底しなければ査定対象になり得るため、特に医科のレセプト請求に注意が必要です。
突合点検の導入にあたり、処方せんを応需する保険薬局において、「傷病名がわからずに、処方せん情報だけで調剤をしているため、適応外処方にどう対応すべきか」ということが最も懸念されてきました。
これに対して、後発医薬品への変更調剤に限っては、適応外処方(調剤)を査定しないことが支払基金より明確に打ち出されましたので、まずは一安心です。
その他にも、通称「55年通知」によって保険適用が認められた適応外処方の例外もありますが、今回は「55年通知」自体に変更がないため、従来通りの取扱いとなります。
これに対する査定を懸念される場合には、請求時にレセプトの摘要欄に処方医のコメント(学術的見解等)を記載した方が良いと思われる所です。
医科レセコンの機種によっては、レセプト提出前に傷病名の点検機能をオプションで搭載することができるため、診療報酬改定の仕様変更時に突合点検対応モデルか否か、確認されることをお勧めします。
調剤の場合も同様に、使用薬剤に係る併用禁忌や投与日数制限等に対するアラーム機能など、改めてレセコン仕様の確認が必要です。
参考書籍:バイタルネット情報レター2012.3月号
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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