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マクロライドはなぜ少量で効くのか?
公開. 更新. 投稿者:花粉症/アレルギー.この記事は約7分57秒で読めます.
13,514 ビュー. カテゴリ:マクロライド少量長期療法
エリスロマイシンやクラリスロマイシンが長期間処方されている患者をよく見かける。
抗生物質を長期間服用することは問題ないのだろうか?
クラリスロマイシンなどの14員環マクロライドには、抗炎症作用や腺細胞からの粘液分泌抑制作用があり、慢性副鼻腔炎に対して常用量の半量を、原則として3か月間投与する「マクロライド少量長期投与療法」が、日本鼻科学会のガイドラインで推奨されている。
エリスロマイシンなどのマクロライドが、びまん性汎細気管支炎や慢性副鼻腔炎の治療に、少量長期療法として使われます。
なぜ少量で効くのか、不明な点が多いですが様々な作用があるらしい。
・気道からの喀痰分泌抑制
エリスロマイシンは気道上皮細胞のクロライドチャネルを阻害して喀痰成分である水分の分泌を抑制させる、喀痰成分のムチン蛋白の分泌を低下させるなどの報告があります。
・好中球機能の抑制
エリスロマイシンは、好中球遊走活性を有するインターロイキン-8の産生を阻害し、好中球の炎症局所への集積を抑えます。
さらに、好中球自体の活性を低下させ、好中球数を減らすとの報告も。
・病原細菌のバイオフィルム形成阻害作用
バイオフィルムが形成されると、細菌は宿主の免疫から逃れ、抗菌剤の効果が減弱してしまいます。
エリスロマイシンは、バイオフィルムの構成成分となるアルギン酸の産生を減少させます。
マクロライド少量長期療法の少量ってどのくらい?
投与量はいずれの疾患でも通常量の1/2~1/3で、エリスロマイシン10~20mg/kg/日か、クラリスロマイシン5mg/kg/日を処方する。
効果は4~8週で現れ、投与期間は報告によってさまざまですが、最低3カ月は投与することを推奨している。
投与中新たな細菌感染を認めた場合には、適宜他の抗生物質を併用する。
ジスロマックの少量長期療法?
エリスロマイシンとかクラリスの少量長期療法はよく見かけます。
しかし、ジスロマックの少量長期療法というのは見たことがありません。
エリスロマイシンやクラリスのような14員環系マクロライドだけでなく、ジスロマックのような15員環系マクロライドでもエリスロマイシンと同様の効果が得られることは判明しています。
実際に行うとしたら、1回250mg週2回投与、というような処方らしい。
通常、肺炎や急性気管支炎等でアジスロマイシンを成人に用いる場合は1日1回500mgを3日間投与しますが、少量長期投与の場合は 1日1回250~500mg 週2~3回のケースが多いです。ただし保険適応外です。
しかし、確実にレセプトで切られる予感。
皮膚科からマクロライド少量長期?
皮膚科の処方でクラリス200mg1日1錠28日分みたいな、少量長期処方をみかけた。
皮膚科領域でもマクロライド少量長期処方するようです。
耳鼻科だけかと思ってた。
これらの事実を踏まえ、皮膚科領域の疾患においても、マクロライドの有効性についての検討がなされています。
これまでに、掌せき膿疱症、尋常性乾癬、色素性痒疹、ジベルばら色ひこう疹、酒皶、痒疹などに対しての有効性についての報告があります。
これらの報告の大部分は個別の症例報告や少数のコホート研究で、ランダム化比較試験ではないので、エビデンスレベルとしては高いものではありません。また、本邦では保険適応がないので実際の臨床上使用しづらい面がありますが、他に有力な治療法のない疾患では試みるに値するものと考えられます。
皮膚科領域での、マクロライドの有効性を裏付けるvitroのデータとしては、次のようなものがあります。1.表皮細胞からのサイトカイン、ケモカイン産生の抑制、として、我々はHaCaTケラチノサイトからのTARC/CCL17産生抑制を報告しています。またKobayashiらが、Th2ケモカイン産生抑制と、その受容体の発現抑制を報告しています。
アボット感染症アワー 〜感染症と化学療法〜 20080815
2.またOshimaらは、マクロライドが、表皮細胞や、表皮ランゲルハンス細胞の抗原提示能を抑制することを報告しています。
3.Takahashiらは、マクロライドが転写因子であるAP-1やNFκB活性抑制を介してインボルクリンの発現を抑制することにより、表皮細胞の異常角化を抑制する可能性を示しています。
4.さらにリンパ球や好中球、好酸球、マクロファージなどの浸潤細胞にたいする抗炎症作用は、他科領域からも多数の報告があります。
掌せき膿疱症、尋常性乾癬、色素性痒疹、ジベルばら色ひこう疹、酒皶、痒疹、にきびなどにも少量長期で使うようです。
マクロライド系抗生物質
マクロライド系抗生物質は、主に抗生物質として用いられる一群の薬物の総称。
抗生物質としては比較的副作用が少なく、抗菌スペクトルも広い。ことにリケッチア、クラミジアなどの細胞内寄生菌や、マイコプラズマに対しては第一選択薬となる。小児から老人まで広く処方される頻用薬の一つであるが、一方ではその汎用性が一因となってマクロライド耐性を示す微生物が増加しており、医療上の問題になっている。また、他の薬物との薬物相互作用が問題となる場合もある。
マクロライド系薬とは環状ラクトン構造を持ち、リボソームに結合して蛋白質合成阻害を示す抗菌薬です。
βラクタム系薬が細胞壁合成阻害を示す一方で、細胞壁を持たない菌に対しても効果を示すという特徴を持っています。
その代表的な菌がマイコプラズマです。
マイコプラズマ感染症は、成人、小児を問わず、気道感染症を惹起し、1980年代まではオリンピックの開催年に流行しました。
その原因は人の大きな移動によるものとも解釈されていますが、詳細な原因は不明です。1990年代以降、その4年おきの流行は見られなくなりました。
気道感染症は気管支炎、肺炎などが主ですが、症状は肺炎球菌などの感染症と異なり、症状が比較的軽度であることから、マイコプラズマは通常の細菌と異なるという意味で非定型菌と呼ばれ、肺炎では非定型肺炎(異形肺炎)と呼ばれます。
非定型肺炎の原因となる菌として、他にクラミドフィラ、レジオネラ属などもありますが、これらの菌は一貫して細胞内寄生菌であるという特徴があります。
マクロライド系薬が非定型肺炎に対して効果を示す理由として、細胞壁合成阻害ではない点に加え、細胞内への移行性がよい点が挙げられます。
レジオネラ属やクラミドフィラは細胞壁をもっていますが、それでもβラクタム系薬が効かない理由として、βラクタム系薬は細胞内への移行性が弱いことが挙げられます。
まとめると、細胞壁を持たないか、細胞内寄生菌に対して使うことが、最も良い適応といえ、逆にいえばこのような状況以外の使用は望ましくありません。
マクロライド耐性肺炎球菌
マクロライド系薬の作用点であるリボソームは多くの菌が持っていますので、多くの菌に対して感受性がありました。
さらにペニシリン系薬で懸念されるようなアレルギーの問題も小さいために、通常の市中肺炎にも使われてきました。
肺炎球菌からマイコプラズマまで幅広い菌をカバーすることが可能であったのです。
しかし、そのように使用されてきた結果、肺炎球菌はマクロライド系薬に対して耐性を獲得し、80%以上の耐性化率となっている現代ではもはや使うことが不可能になりました。
肺炎において最もカバーしなければならない菌は、頻度が高く、そして重篤な転帰をたどりやすい肺炎球菌です。
感染症に対して抗菌化学療法を適用する時、最も大事なことはどの菌がどの臓器にいて、感受性があり移行が期待できる抗菌薬を使用することですが、市中肺炎において抗菌薬を選ぶ際に感受性がわかっていることはまずありません。
このマクロライド系薬と肺炎球菌の関係のように、従来は効果があるとされており、添付文書の適応症として記されているとしても、近年は高い耐性化率のために使えないという「疫学」を押さえておくことが重要です。
同時に、咳などで拡散するために、地域の流行状況を把握するとともに、オリンピック開催年だからといって特に増えるわけではないという現代の疫学も知っておく必要があります。
エリスロマイシン
初のマクロライド系薬であるエリスロマイシンは、現在でも十分な微生物学的効果がある一方で、腸管蠕動促進作用(モチリン様作用)による副作用、つまり下痢を示すことがしばしばあります。
さらには、抗炎症効果、抗バイオフィルム形成効果、抗ウイルス効果など多彩な効果を示すことが報告されています。
特に、びまん性汎細気管支炎に対する少量長期投与は、予後を改善させることが明らかになっています。
現在のエリスロマイシンの使い方としては、このように、殺菌作用よりも、その他の作用を主に期待するものとなっています。
しかし、肺炎球菌に対する耐性化獲得の観点からもわかる通り、抗菌薬適正使用とは必ずしもいえません。
また、エリスロマイシンは薬物代謝酵素(CYP3A)阻害作用を示すことから、いくつかの薬物が併用禁忌となっている点は極めて重要です。
また、心臓の刺激伝導系に影響を与え、QT延長などの重篤な副作用を惹起することも重要です。
クラリスロマイシン
エリスロマイシンの持つ欠点を改善させたものが、クラリスロマイシンといえます。
クラリスロマイシンの抗菌活性はエリスロマイシンとは大きく変わるものではありませんが、下痢の頻度が低くなっているために、より使いやすくなっています。
薬物代謝酵素阻害は変わらず注意が必要です。
アジスロマイシン
アジスロマイシンの特徴は、半減期が長いために1~3日間服薬すれば1週間の持続した効果が期待できる点、および薬物代謝酵素阻害作用が弱いことから、エリスロマイシンやクラリスロマイシンで併用不可であった薬物も、併用できる点です。
QT延長は他の薬物同様注意が必要です。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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