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白血病は感染する?成人T細胞白血病ウイルスと母子感染
公開. 更新. 投稿者:血液/貧血/白血病.この記事は約2分4秒で読めます.
2,952 ビュー. カテゴリ:白血病は人にうつるの?

「白血病は人にうつるの?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。実際、多くの白血病は感染症ではなく、人から人へうつる病気ではありません。
ただし、例外として「成人T細胞白血病(ATL)」というタイプの白血病は、ウイルス感染が原因で発症することが知られています。
成人T細胞白血病とHTLV-1ウイルス
成人T細胞白血病(ATL)は、「HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)」というウイルスに感染することで、長い潜伏期間(数十年)を経て発症することがあります。
HTLV-1はウイルスですが、感染しても多くの人は発症しません。感染者のうち約5%が一生のうちにATLを発症するとされています。
また、HTLV-1は白血病だけでなく、「HTLV-1関連脊髄症(HAM)」という神経の病気も引き起こすことがあります(発症率は0.3%程度)。
HTLV-1の主な感染経路は、
・母乳を通じた母子感染
・性交渉
・輸血(現在ではほぼゼロに近く管理)
の3つです。
なかでも、乳幼児期の母乳栄養による母子感染が最も大きな感染経路とされています。感染しているお母さんが半年以上母乳で育てた場合、約15〜20%の確率で赤ちゃんに感染する可能性があると言われています。
このため、日本では妊婦健診の一環としてHTLV-1の抗体検査が推奨されており、感染が判明した場合には母乳育児の制限が勧められています。
母乳育児を完全にやめなければいけないの?
HTLV-1陽性のお母さんでも、短期間(生後3か月まで)の母乳栄養や、凍結母乳(24時間以上冷凍)を使った栄養法により、感染リスクを大きく下げる方法もあります。
完全人工栄養(ミルク育児)にすると、母子感染率は約3%にまで下がるとされています。
また、HTLV-1に感染しても95%以上の人は発症しないため、感染=即病気というわけではありません。長いスパンでの経過観察が基本です。
かつてはHTLV-1感染者は九州や沖縄に多く見られたため「風土病」とされていましたが、現在は全国に広がり、推定感染者数は100万人以上とされています。
感染者の増加と分布の変化を受けて、日本政府も本格的な対策に乗り出しており、妊婦の検査徹底や研究体制の整備が進められています。
白血病そのものはうつる病気ではありません。
ただし、「成人T細胞白血病(ATL)」は、ウイルス(HTLV-1)による感染が原因で起こるタイプの白血病です。
HTLV-1は主に母乳を通して乳児に感染します。
妊婦健診での抗体検査と、母乳の工夫により感染リスクは大きく下げられます。
感染者の95%以上は一生発症せずに過ごせることがわかっています。
医療の知識が進むことで、感染予防や早期対応の選択肢はどんどん増えています。
不安を抱える方は、地域の産科や内科で相談してみるとよいでしょう。