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低血糖になったら使う点鼻薬って?
公開. 更新. 投稿者:糖尿病.この記事は約4分38秒で読めます.
5,126 ビュー. カテゴリ:バクスミー点鼻粉末剤3mg
低血糖の時に使うものといえば、ブドウ糖です。
α-GIなどの糖尿病用薬を作っている製薬会社であれば、無償で提供してくれるので、必要な患者には無料でお渡ししている。
低血糖時の選択肢に新たなラインナップが加わった。
「バクスミー点鼻粉末剤3mg」というグルカゴン製剤である。
グルカゴンは血糖を上昇させるホルモンである。
今までのグルカゴン製剤は、バイアル入りの注射薬のみだったため、注射の手技を習得しなければならず、また、注射を行うまでの準備などに時間がかかるのがネックだった。
バクスミー点鼻がブドウ糖よりも良い点は、本人ではなく、身の回りの家族等が使用することができる点である。
意識消失状態などで、本人が服用することが困難な場合、口から摂取させるのは難しい。点鼻であれば、他者が投与することができる。
自分で点鼻することも可能ではあるが、バクスミーの取り扱い説明書には「バクスミーは、さまざまな低血糖症状のうち、周りの人の助けが必要な低血糖状態になった時に使用してください。」と書かれており、他者の介助が必要な状況を使用の目安としている。
注射のように冷所で保管する必要もなく、室温(30℃以下)での保管が可能である。
実際の使い方としては、投与する直前に包装用フィルムをはがして容器を開け、人差し指と中指を容器先端に添え、親指で容器の注入ボタンを持ち、容器の先端を左右どちらかの鼻腔に入れる。指が鼻に当たるまで挿入したら、注入ボタンを最後まで押し切り、噴霧が完了する。空打ち操作は必要なく、噴霧は1回のみ行う。グルカゴンは鼻粘膜を通じて受動的に吸収されるため、患者は吸入しなくてよい。
バクスミーの薬価は8368.6円と安くはないし、自分でブドウ糖を服用できる状態ではなく、重症低血糖で、介助者が常に付き添っているような患者を想定しているのだとしたら、院外であまり使う患者はいなさそう。施設の入居者等でしょうか。
まず考えるのは、バクスミーの処方ではなく、現在使用している薬の減量でしょう。
メーカーに問い合わせたところ、バクスミーの効果発現時間は30分以内とのことですが、意識が消失しているような状態の場合、救急車を呼びつつ使用することになる。
グルカゴン
グルカゴンは食事非摂取時に血糖を維持する最も重要なホルモンであり、肝細胞において環状アデノシン一リン酸(cAMP)を増加させ、cAMP依存性プロテインキナーゼを活性化させる。その結果、グリコーゲン合成酵素が不活性化され、グリコーゲンホスホリラーゼが活性化されることにより、グリコーゲン合成の抑制と分解の促進が生じる。また、グルカゴンは解糖系酵素を抑制して糖新生系酵素を亢進させる。
これらの機序により、グルカゴンは血中グルコース濃度を上昇させる。
グルカゴンの血糖上昇作用は主として肝グリコーゲンの分解によるもので、飢餓状態、副腎機能低下症、頻発する低血糖、一部糖原病、肝硬変などの場合、血糖上昇効果はほとんど期待できない。また、アルコール性低血糖の場合にも血糖上昇効果はみられない。
バクスミーは1回1本まで?
患者さんで「2本もらえないの?」という患者さんがいたが、バクスミー点鼻薬の添付文書の「保険給付上の注意」に、
本製剤を1回2瓶以上処方する場合は、複数必要と判断した理由を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。(令和2年8月25日付け保医発0825第1号厚生労働省保険局医療課長通知)
と記載されているので、通常1回1本までということを念頭に置いておこう。
また、1本使って効果が無かったからといって、2本目を使ったとしても繰り返し投与によるグルコース濃度上昇作用の増大は認められていないため、グルカゴン製剤の追加投与は行わない。
バクスミーの使い方
①使用直前に容器の赤色部分を引っ張って包装用フィルムを剥がし、黄色容器の蓋を開け点鼻容器を取り出す
②人差し指と中指で点鼻容器の先端を持ち、親指で注入ボタンを持つ
③人差し指または中指が鼻に当たるまで容器の先端を片方の鼻の穴にゆっくり差し込む
④注入ボタンを緑色の線が見えなくなるまで押し込む
バクスミーの使用期限
こういう予備に持っておく薬というのは、使用期限どのくらいまで調剤してよいか、迷う。
ニトロール錠だと、最低半年、1年くらいあると安心して渡せるかな、と思います。
しかし、ニトロール錠の薬価は1錠9.8円、バクスミー点鼻粉末剤の薬価が1瓶 8368.60円なので、バクスミーを薬局に在庫しておいて、期限切迫で廃棄するのは痛い。
患者としても、高い薬だと、それなりの期限がないとクレームつけたくなる。
うーん、在庫しておくのは、厳しいな。。。
低血糖
一般に血糖値が70㎎/dL 以下になると、動悸、冷や汗、手足のふるえなどの交感神経症状が出現することが多く、次いで、頭痛、目のかすみなどの中枢神経症状が表れる。血糖値が50㎎/dLを下回ると、痙攣や意識消失、昏睡など、他者の介助が必要な重症低血糖に至る。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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