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傷口は乾かさないほうがいい?
公開. 更新. 投稿者:褥瘡.この記事は約6分22秒で読めます.
2,846 ビュー. カテゴリ:傷口は乾かしたほうが早く治る?
子供のころ、ケガをして擦りむいた時には、傷口にフーフーと息を吹きかけて、早く乾かそうとしていたことがありました。早くカサブタになったほうが治ると思って。
昔の人は、傷口は消毒して、早く乾燥させてかさぶたにしたほうがいい、という考えでした。
傷にマキロンは必需品。
今ではそれらの傷口への処置に対する考え方は変わりました。
浸出液は傷を治すために必要なものなので、液を吸ってしまうような絆創膏ではなく、上から覆うだけのラップ状のものを使ったほうがよい。
消毒するという行為は傷口周囲の細胞を殺してしまう行為で、細胞の自然治癒力を失わせてしまいます。
人工的にかさぶたを作って早く治すという方法です。
しかし、密封するので感染症には注意しなければいけない。
湿潤療法(モイストヒーリング)
一般的に切傷・擦り傷は、水道水で泥・ゴミなどの汚れを落として、清潔なガーゼなどで水分を除き、消毒薬をつけたガーゼで傷口から出るジュクジュクした滲出液を取り除き、創面を乾燥させて治療(ドライヒーリング)してきました。
しかし、傷口から出る滲出液には傷口を治そうとする作用(自己修復作用)があり、細胞の成長や再生を促進すること、血液や滲出液が乾いてできるかさぶたは、皮膚の再生を妨げ、傷痕の原因になることがわかってきました。
そこで、ハイドロコロイド素材で、湿潤環境を保ちながら治療するための創傷被覆剤が開発されました。
外傷、熱傷、褥瘡に使われ、さらに家庭用キズケア製品(キズパワーパッドなど)としても販売されるようになりました。
このような創傷被覆剤を用いる場合、消毒薬やクリームを使用すると、治りが遅くなったり、粘着性が悪くなったりするなど、傷の治癒の阻害となるので使用してはいけません。
外傷治療は、従来は傷口を乾かしてかさぶたをつくる治し方が主流でした。
一方、湿潤療法(モイストヒーリング)は傷口にしみ出す体液(滲出液)の働きを生かす方法です。
体液には細胞の成長や再生を促す働きがあります。
湿潤療法用の絆創膏で傷口を覆うことで、体液で傷口を満たし細胞を再生させます。
湿潤療法の利点として、早く治るということがあります。
傷口は慢性化させると跡が残りやすいため、早く治ることはきれいに治ることにつながります。
湿潤療法は、やけどやすり傷などの治療のほか、長期療養による床ずれの治療などに広く取り入れられています。
正しく湿潤療法を行うには注意点があります。
化膿を防ぐため、傷口を水でよく洗い、汚れや異物を取り除きます。
けがのケースにもよりますが、消毒薬は基本的には使わないことが多いです。
細胞の再生などを助ける成分の働きを妨げるためです。
湿潤療法用の家庭用絆創膏も各医薬品メーカーから発売されています。
製品によっては傷口に異常があったり、はがれたり体液が漏れていない限り、数日間は使用できます。
ただ、絆創膏の張りっ放しもよくありません。
傷口の観察を忘れずに、痛みや赤み、腫れが見られたら医師に相談することも必要です。
湿潤療法に適さない傷もあります。
傷口を閉鎖するので、感染(化膿)を助長する可能性があります。
動物にかまれたときや傷に異物が入り込んで取れない場合は医療機関を受診した方がいいです。
感染症である水いぼ、とびひのほか、虫の毒が傷口に残る虫刺され、菌が残るにきびも湿潤療法は悪化させる懸念があります
傷の処置
傷に使うテープとかガーゼとか絆創膏、いろいろあります。
ドラッグストアに勤めていると、色々聞かれますが、正直どれを勧めていいのか困ることもあります。
絆創膏
傷の処置に使うものといえば「絆創膏」。商品名でいえばバンドエイド。
最近はキズパワーパッドなどの湿潤療法なるものもあって、どちらを選ぶべきか迷うことはある。
傷の治りの速さは同じ程度でも、傷あとの目立たなさからいえば、キズパワーパッドなどで密封したほうがいい。人工カサブタ的に。
注意点としては、貼る前に傷口をよく洗うこと。患部が細菌感染してしまうと密封して悪化する可能性もある。
普通の絆創膏を使う場合でも、2~3日貼りっぱなしにする人がいるが、それはNG。
キズパワーパッドは2~3日に1回の張り替えを勧めている。
水を吸って膨らむという性質から、風呂に何回も入ると膨らんでくる。
水絆創膏なるものもありますが、あまりオススメしない。
傷あてパッド
小さい切り傷なんかに使う絆創膏よりも、大きい患部に使うフィルムの中央にガーゼがくっついているような傷あてパッド。
血液や浸出液が多い場合には、中央にガーゼが入っていたほうがいいのかも知れない。
でも、コットンが傷口に入り込んで傷口を傷める可能性もあるので、傷あとのことを考えると、ドレッシング材のほうが良いんだろう本当は。
防水フィルム
基本的に、絆創膏やガーゼなど水に弱い傷あての上からかぶせて貼る防水フィルム。
「傷口に直接使わないでください」と書いてあるものと、傷口にも使えるタイプがある。
傷口に使えるタイプのほうが粘着剤などの衛生面で安心して使えるのだろう。
個人的には、傷口に直接貼っても問題ないと思う。
でも、店頭では言わないように。サランラップを褥瘡にお勧めすることもしないように。
傷は消毒しないほうがいい?
傷には昔から赤チンとかマキロンとか消毒をしてから絆創膏というのが定番でした。
それが最近は消毒しないほうがいいと、乾燥させないほうがいいという考え方です。
バイ菌が体の中に入ったらどうするんだ、と昔の人は怒ります。
理由としては、
市販の消毒薬の殺菌力では傷口のバイ菌をやっつけられない。
人間の皮膚を無菌状態にすることは不可能。
人間の細胞は死んでしまう。傷口がしみるのはそのせい。
傷口から出る滲出液は、傷を治すために必要な成分。
つまり人間のもつ自然治癒力を最大限に生かそうという発想。
最近ではキズパワーパッドという傷口を乾かさない絆創膏も売っているのでお試しを。
擦り傷は消毒したほうがいい?
0か100かという極論にしたがる人が多いですが、傷は消毒したほうがいいのか、消毒しないほうがいいのか、どっちかというわけではない。
場合によっては消毒したほうがいいこともあり、ケースバイケース。
傷の状態の評価なしに盲目的に消毒薬の使用を避け、傷を悪化させたり、なかなか治らない傷にしてしまったりということがあります。
感染もしくはその前段階(Critical colonization)になる前の急性期の傷に対しては通常消毒は不要であり、消毒薬を使用せずに水洗いのみで、軟膏もしくは被覆材で保護することが妥当な処置であると思われます。
しかしながら、汚染が酷い場所で受傷したすり傷や、植物等による刺し傷を含むすり傷や異物が多数埋入してしまっているようなすり傷、受傷から時間が少し経過しているすり傷など感染のリスクが高い傷はそれだけで治ると思い込まずその後経過を慎重に見る必要があります。
たかが擦り傷、されど擦り傷。
素人判断は危険。
傷に貼るテープ
「傷に貼るテープがほしい」とお客さんから聞くこともある。
当初よくわかりませんでしたが、傷口が広がらないように、傷あとが目立たなくなるように、術後の傷などに使う目的でテーピングを施すためのテープらしい。
正直、ニチバンのホワイトテープなんかでも良いのだろうけど、それ専用のメディカルテープ、サージカルテープなるものも販売されているので、そちらを勧める。
電気工事用のテープを皮膚に使う?
以前、お客さんから、「ガーゼを止めるのに電気工事用のテープは売ってますか?」と聞かれた。
ガーゼを止めるテープなら売ってるけど、なんでわざわざ電気工事用のテープ?
以前、妻の傷のガーゼを付け替えするのにテープがなくなっていて看護師さんの手持ちもなかったことがあります。看護師さんより電気工事用の電線を止めるテープはありませんかと聞かれました。え~?電気工事のテープを使うの?と思いましたが暫定だし古い絶縁テープ(ビニールテープ)を持っていたので探し出して使用しました。
電気工事用の絶縁テープ – 妻の在宅介護日記
訪問看護の看護師さんの話によると肌を傷めずに良いらしい。実際に訪問の備品として普段もっているそうです。その意外性に驚きました。接着力は弱いのですが使用してみると確かに肌に跡が残りません。手持ちの絶縁テープは色が黒でイメージがよくありませんが白だと見た目も違和感がないかもしれませんね。
こちらに書かれているとおり、電気工事用のテープだと粘着力が弱く、皮膚を傷めないので、かぶれやすい人には良いらしい。
電気工事用のテープがなんで粘着力が弱いのか、よくわかりませんが。
薬局に売ってるテープでもかぶれにくいものは売っているので、それでいいような気がしますけど。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。