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誤解されやすい塗り薬の基剤
公開. 更新. 投稿者:皮膚外用薬/皮膚病.この記事は約4分12秒で読めます.
8,654 ビュー. カテゴリ:紛らわしい商品名の塗り薬
基剤がクリームやゲルであるのに、名称に「軟膏」とついているなど、一見して正しい基剤が分からない薬剤もある。
ザーネ軟膏は軟膏じゃありません。
塗り薬の中には「~軟膏」や「~クリーム」という商品名であっても、剤形がクリームやゲルであることがよくあります。
これは以前の日本薬局方の製剤総則で「軟膏」と「クリーム」を明確に区別せずに、すべて軟膏剤としていたことに起因しています。
第15局まではクリームやゲル、パスタも「軟膏剤」の項目にまとめられていました。軟膏もクリームも、油中水型でも水中油型でも、ぜーんぶ軟膏というひとくくりの分類だったのです。
2011年に改正された第16局では「軟膏剤」「クリーム剤」「ゲル剤」に分類された。
ザーネ軟膏は実際はo/w型乳剤性基剤です。
紛らわしい商品名の塗り薬には以下のようなものがある。
アクアチム軟膏 w/o型乳剤性基剤
オクソラレン軟膏 w/o型乳剤性基剤
ケラチナミンコーワ軟膏 o/w型乳剤性基剤
ザーネ軟膏 o/w型乳剤性基剤
ユベラ軟膏 o/w型乳剤性基剤
レスタミンクリーム o/w型乳剤性基剤
インテバン軟膏 ゲル基剤
トプシムクリーム ゲル基剤
ウレパールクリーム o/w型乳剤性基剤
オイラックスクリーム o/w型乳剤性基剤
パスタロンソフト軟膏 w/o型乳剤性基剤
ヒルドイドソフト軟膏 w/o型乳剤性基剤
フロリードDクリーム o/w型乳剤性基剤
フルコートF軟膏 油脂性基剤
ソルコセリル軟膏 w/o型乳剤性基剤
5-FU軟膏 o/w型乳剤性基剤
一般的には、基剤が油脂性(アブラ)なら軟膏、乳剤性(水とアブラ)ならクリームと呼びます。
しかし、乳剤性の基剤でも、薬品名は○○軟膏という名前がつけられているものもあります。
ザーネ軟膏、ユベラ軟膏、ケラチナミン軟膏、パスタロンソフト軟膏、ヒルドイドソフト軟膏、オクソラレン軟膏、ソルコセリル軟膏などは本当はクリームという名称のほうが正しいかも。
また、エキザルベのように剤形がついていない商品名のものもあります。エキザルベは油脂性基剤なので、エキザルベ軟膏という名称が正しいかも。
最近は名前が変ってきているものもあります。
オイラックス軟膏→オイラックスクリーム、レスタミンコーワ軟膏→レスタミンコーワクリームなど。
名前に騙されないように。
一般に乳剤性基剤は油脂性基剤に比べ透過性が優れていますが、添加物が多く、刺激や接触皮膚炎に注意を要します。
水が外相で中に油を含む水中油型(O/W型)と逆の油中水型(W/O型)に分類されます。
市販外用薬では使用感が良く、水で簡単に洗い流せるO/W型が大部分を占めています。
その特徴は塗擦すると簡単に白さが消えるため、「vanish=消える」から「バニシングクリーム」と呼ばれます。
吸水軟膏などW/O型は冷却作用があることから「コールドクリーム」と呼ばれますが、実際には基剤中の水分が気化する時に気化熱を奪うため、いずれの乳剤性基剤も冷却作用があります。
外用ステロイドの場合、商品名に「軟膏」が付く製剤は、ほとんどが白色ワセリンを基剤としている。
適応は広く、湿潤した病変にも、乾燥した病変にも使用可能である。
皮膚への刺激が最も少なく、病変部を保護する効果も期待できる。
ただし、油性基剤によるべた付き感があり、顔面などの露出部に塗ると塗布部だけが光って見えるなど、使用感が悪いという欠点がある。
一方のクリーム剤は、水成分と油成分を界面活性剤で混合させた製剤である。
物理化学的な性状から、⑴水成分の中に油成分が細かい粒子として浮遊するO /W タイプ(水中油型)、⑵油成分の中に水成分が細かい粒子として浮遊するW /O タイプ(油中水型)の2 種類に分類される。
とはいえ、外用ステロイドを含め、「クリーム」という商品名で販売されている外用薬は、大半がO/W タイプである。O /W タイプは、べた付き感が少なく、塗布時の伸びがよいなど使用感に優れる。
ただし、水疱、膿疱、びらん、潰瘍などの湿潤した皮膚病変にクリーム剤を使用すると、乳化に必要な界面活性剤や、防腐剤などの添加物が病変部を刺激する場合がある。
さらに、クリーム剤を湿潤病変に使用すると、基剤に一度吸収された浸出液が再び病変部へ移行し、病状が悪化することがある。
また、乾燥病変にクリーム剤を塗布すると、冬季には皮膚の過乾燥を招くことがある。
一般に「クリーム」は保湿剤としてのイメージが強いが、皮膚を乾燥から守る目的で使用する場合には、クリーム剤よりも軟膏剤が適していることを知っておきたい。
ソフト軟膏
ソフト軟膏という名称がつけられている塗り薬がある。
w/o型のクリームである。
o/w型のクリームに比べると、油の割合が多く、軟膏に近いのでソフト軟膏という名称。
ただ、ヒルドイドソフト軟膏をみればわかりますが、感覚的にはクリームです。
ヒルドイドクリームという製品もあるので、明確に区別するためソフト軟膏という名称を用いているのでしょう。
このソフト軟膏という名称ですが、ジェネリックになると油性クリームという名称になっています。
見た目クリームなので、油性クリームのほうがネーミング的にはしっくりきますが、間違いやすさからすると、ソフト軟膏という名称のほうが良いです。
O/W型乳剤性基剤とW/O型乳剤性基剤の見分け方は?
それぞれの薬剤の基剤は、添付文書やインタビューフォームから確認できるが、乳剤性のうちO/W型か、W/O型かまでは分からないことが多い。
メーカーに問い合わせる方法もあるが、手軽に調べる方法として、手に塗ってみて、その部分に水をかけてみると、違いがわかりやすい。
例えばW/O型のヒルドイドソフト軟膏を塗った場合は水をはじくのに対して、O/W型のアセチロール軟膏はさらさらとして水になじみ比較的簡単に洗い流せるという違いがある。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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