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心拍数75回以上は危険?
公開. 更新. 投稿者:心不全/肺高血圧症.この記事は約2分18秒で読めます.
2,334 ビュー. カテゴリ:HCNチャネル遮断薬
コララン錠(イバブラジン塩酸塩)という慢性心不全治療薬が11月19日に薬価収載されました。
薬効分類は、HCNチャネル遮断薬という聞き慣れない、新規作用機序の薬になる。
添付文書の作用機序には以下のように記載されている。
本剤は、HCN(過分極活性化環状ヌクレオチド依存性)チャネル遮断薬であり、洞結節のペースメーカー電流Ifを構成するHCN4チャネルを阻害し、活動電位の拡張期脱分極相における立ち上がり時間を遅延させ、心拍数を減少させる。
とにかく心拍数を減少させる薬ということらしい。
β遮断薬と異なり、心筋収縮力を下げずに心拍数のみを減少させる。
HCNチャネルについてはよくわかりませんが、特徴的な副作用として「光視症(2.8%)」というのがみられる。
光視症は、視野の限られた領域で一過性にまぶしい光を感じたり、光輪現象、像の分離(ストロボ様又は万華鏡様作用)、有色光又は二重像として、投与開始後3ヵ月以内にあらわれることが多い。
こういう副作用が起こり得ることを知っているのと知らないのとでは、症状が出たときの対応は異なるだろう。知らなければ眼科を受診してしまいそう。
自動車の運転等危険を伴う操作の際には注意が必要。
コララン錠の適応
コララン錠の適応は以下のとおり。
洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全
ただし、β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。
心不全と聞くと、心臓の機能低下、すなわち心拍数の減少とイメージしますが、心不全患者では心拍数は増大するらしい。
ここらへんの勘違いは、β遮断薬が以前は心不全に禁忌であったのが、近年では治療に用いられるという真逆の状態になっていることからも、理解しづらいものであることがわかる。
心不全というのは心臓の機能低下であることは間違いないのですが、心臓の機能が落ちた時に発せられる心臓への指示は「ゆっくり休め」ではなく「もっと働け」「機能が落ちた分働け」という痩せ馬に鞭的な指示なのである。
そのため、心不全時には心拍数は増大する。コラランやβ遮断薬は心臓に鞭が打たれるのをやわらげるストッパー的な役割を担う。
「β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。」という文言は微妙で基本的には既存治療への上乗せが想定されているようだが、抗てんかん薬の併用療法ほど文言も厳しくないので、併用しないとNGという感じではなさそう。β遮断薬からコラランに切り替えや、β遮断薬を途中で中断しコラランのみに変更、といったケースが認められるかどうかは保険請求上のことなので今後わかるだろう。
心拍数の基準値としては60~90回/分。60回未満で徐脈、100回超えると頻脈。
コララン服用により目標とする安静時心拍数は50~60回/分。徐脈くらいがちょうどいいといった感じ。
ただし、「継続して安静時心拍数が50回/分を下回る又は徐脈に関連する症状が認められた場合は、本剤を中止すること。」となっており、あまり下がり過ぎると中止になる。
CYP3Aにより代謝を受ける薬で、相互作用も多いので、新規に処方された際には併用薬に気を付ける。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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