2025年6月5日更新.2,490記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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アンヒバ坐剤は何個まで処方できる?

アンヒバ坐剤は何個まで処方できる?―使用上限と実務上の注意点

解熱鎮痛剤として小児に広く使用されているアンヒバ坐剤(アセトアミノフェン製剤)。処方箋で「アンヒバ200mg 30個」などの記載を見たとき、「こんなにたくさん出していいのか?」と疑問に感じたことはありませんか?

添付文書に記載された使用制限

まず、アンヒバ坐剤の添付文書に明記されている重要な注意点を確認しておきましょう。

重要な基本的注意:
・原則として長期投与を避けること(原則として5日以内に限ること)。

つまり、医師が特別な理由を明記しない限り、連続して5日間を超えて処方するのは避けるべきということになります。実際、1日1回使用と想定すると「5個」程度が一般的な処方数として多く見られます。

用法用量の基準:最大使用量はどのくらい?

アンヒバ坐剤の一般的な用法・用量は次の通りです。

用法・用量(小児):
通常、乳児・幼児・小児には、アセトアミノフェンとして体重1kgあたり10〜15mgを1回量とし、直腸内に挿入。投与間隔は4〜6時間以上とし、1日総量として60mg/kgを限度とする。

たとえば、体重20kgの小児に200mgの坐剤を使用する場合:

・1回:200mg → 10mg/kg
・1日:最大60mg/kg → 1200mgまで使用可能

この場合、200mg×6回=1200mgとなり、理論上は1日6個使用可能ということになります。ただし、これはあくまで上限値であり、実際の処方でこのように高頻度で使用されているケースは少数です。

実際の処方現場では何個まで出てくるのか?

処方実績としては、

・1日1~3回使用を想定:5~10個
・1日2回×5日間:10個
・疾患の重症度や持続性を加味して:最大20~30個

というように、ある程度バリエーションがあります。ただし、「アンヒバ200mg 50個」などの処方は例外的で、査定の対象や疑義照会の対象となることもあります。

なぜ多すぎる処方に注意が必要なのか?

●小児専用製剤であること:
アンヒバ坐剤は小児への使用のみが承認された製剤です。たまに高齢者に処方されているケースも見かけますが、その場合、疑義照会で処方意図を確認すべきです。特に「アンヒバ小児用200mg 50個」などの処方は、誤ってボルタレンサポ(成人用)と同様に扱っている可能性があるため、注意が必要です。

●肝障害リスク:
アセトアミノフェンは安全域の広い薬剤として知られていますが、長期連用や過量投与では肝障害のリスクがあります。特に解熱目的で繰り返し使用する場合、保護者に対する使用回数の指導が不可欠です。

解熱剤は1日何回使っていい?

添付文書には「投与間隔は4~6時間以上」とあり、1日最大5~6回まで使用可能です。しかし、現場では以下のような使い方が一般的です。

・夜間熱で眠れない時
・高熱によって食事や水分摂取が困難な時
・熱性けいれんの既往があり、発熱初期の対応として使用

むやみに熱を下げると、免疫反応が鈍り病気の治りが遅くなる可能性があるため、必要な時だけ使うことを保護者に伝える必要があります。

市販薬のアセトアミノフェン坐剤の用法の違い

市販薬のアセトアミノフェン坐剤は医薬品よりも厳しめの使用回数が設定されています。。以下はOTC製品の例です。

● 6歳~12歳:1回1~2個(1日1回)
● 3歳~5歳:1回1個(1日1回)
● 1歳~2歳:1回1/2~1個(1日1回)
● 1歳未満:使用しない

添付文書に「1日1回」とある以上、OTC製品では4~6時間間隔での反復使用を勧めることはできません。医療用との使い分けや指導内容に差がある点は注意しましょう。

ボルタレンサポとの比較

整形外科領域では、ボルタレンサポ(ジクロフェナクナトリウム坐薬)が頻繁に処方されており、1回の処方で50個以上になることも珍しくありません。

一方、ボルタレンサポの添付文書には次のような注意があります。

急性疾患に用いる場合には、原則として同一の薬剤の長期投与を避けること。

ただし、アンヒバのように「原則5日以内」といった具体的な使用期間の制限は記載されていません。これは、ボルタレンが成人を対象とし、複数の疾患で長期使用されることが前提となっているからです。

疑義照会のポイント

処方内容に以下のようなケースがあれば、薬剤師としての確認が必要です。

・小児用アンヒバが成人に処方されている
・明らかに長期連用を想定する数(30個以上など)の処方
・処方意図と日数、使用頻度が不明確

特に、成人患者に「小児用アンヒバ200mg」が多量に処方されている場合、ボルタレンサポとの誤認を疑って確認すべきです。

まとめ:現実的な処方数と薬剤師の対応

通常処方日数:原則5日以内
理論上の最大投与回数:1日5~6回(60mg/kg/日まで)
一般的な処方数:5~10個程度
疑義照会が必要な処方:30個以上、成人使用、小児用を長期処方など
添付文書上の注意:長期投与は避ける/1日最大量の遵守

薬剤師としては、アンヒバの「安全性の高い薬」というイメージだけに頼らず、添付文書の使用制限や保険査定リスクを踏まえて、処方意図の確認や服薬指導に対応することが求められます。特に保護者への使用タイミングの説明や、熱の役割についての啓発は非常に重要です。

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