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食欲が出る薬
公開. 更新. 投稿者:漢方薬/生薬.この記事は約4分46秒で読めます.
2,986 ビュー. カテゴリ:ペリアクチンで食欲が出る?
病気の人は食欲が出た方がいいよね
ペリアクチンというアレルギーの薬があります。
過去には食欲増進作用を期待して処方されることもあったらしい。
現在、食欲増進を主目的として処方されることは無いが、小児科領域で処方されていると、そのような意図もあるのかなあ、と感じることはある。
ドグマチールなどの精神系の薬で、食欲増進作用が出てしまうことがある。
精神疾患患者はあまり運動しないので、食欲が出ると肥満気味になるのであまり好ましくは無い。
精神疾患から回復すれば、意欲が出てくるため、それが食欲につながっているという理由も考えられる。
六君子湯とか、人参系の漢方薬も食欲増進作用が期待される。
抗ヒスタミン薬で食欲増進?
ペリアクチンで食欲が出るのは抗ヒスタミン作用と抗セロトニン作用によるものです。ヒスタミンには食欲を抑える働きがあります。
よく噛むと脳内のヒスタミンが増え、食欲が減るらしい。
ペリアクチンは、十数年前には「食欲増進、体重増加」の効能を有していたという背景もあり、現在では副作用として「食欲亢進」が5%以上または頻度不明で報告されています。
食欲亢進の作用機序としては、セロトニン2C(5HT2C)受容体遮断作用とヒスタミンH1受容体遮断作用により、摂食を中止する信号が遮断されたりグレリン(視床下部の摂食中枢を刺激する成長ホルモン分泌促進ホルモン)の分泌が促進することが考えられます。
ペリアクチンは獣医領域でも食欲刺激剤として使われている。
セロクエルなどの抗精神病薬も抗ヒスタミン作用によって太ります。
アレグラなどの第二世代以降の抗ヒスタミン薬だと、中枢に移行しないので食欲増進作用は期待できない。
ドグマチールで食欲増進
スルピリド(ドグマチール)は、ベンズアミド系の精神情動安定剤であり、ドパミンD2受容体を遮断することで、抗うつ作用、抗不安作用、中枢性制吐作用を発揮する。
また、視床下部交感神経中枢を抑制して、胃粘膜の血流量を増加させたり、胃および小腸の内容物の排出・通過を促進することで、食欲増進効果をもたらす。
風邪で食欲不振
風邪による発熱によって食欲がなくなったり、癌の進行に伴って食欲がなくなるのは、感染症や癌などによる炎症によって産生されたサイトカインが、レプチンの産生を促進したり、レプチン様の作用を示し、摂食が抑制されるためと考えられている。
六君子湯とグレリン
空腹になると胃や腸からグレリンというホルモンが分泌される。
グレリンには成長ホルモンの分泌作用のほか、摂食亢進、胃酸分泌亢進作用がある。
グレリンは脂肪細胞から分泌され摂食抑制作用を有するレプチンに拮抗する。
過剰な食事制限によるダイエットを試みても、グレリンに負けるのだ。
六君子湯の作用機序として、消化管ホルモンの一種であるグレリンとの関連が近年示唆されている。
消化管ホルモンは、脳腸相関を介して消化管機能や食行動、エネルギー代謝などの生体機能の調節に重要な役割を持つ。
コレシストキン(CCK)、ペプチドYY(PYY)、グルカゴン様ペプチドー1(GLP-1)、オキシントモジュリン(OXM)、インスリンなど、多くの消化管ホルモンは、食欲抑制作用を有する。
これに対して唯一、食欲亢進に働くホルモンが、グレリンである。
グレリンは主に胃より分泌され、迷走神経末端および視床下部弓状核のニューロペプチドY(NPY)/アグーチ関連蛋白(AgRP)ニューロン上に発現するグレリン受容体(GHS-R)に作用して、成長ホルモン分泌を促進するほか、上部消化管運動および食欲を強力に亢進させる。
六君子湯が、こうしたグレリンの分泌を促進、あるいはその作用を増強させるという。
六君子湯に含まれるフラボノイド類(陳皮成分ヘプタメトキシフラボンやヘスペリジン、甘草成分イソリクイリチゲニン)のセロトニン2b/2c受容体(5-HT2b/2cR)阻害作用が、グレリン分泌を増加させることも明らかになっている。
加えて六君子湯は、GHS-Rシグナルの増強やグレリン代謝阻害といった作用を有するとの報告もあり、これらの複合作用によってグレリン作用を増強し、食欲亢進・消化管運動を亢進するものと考えられている。
食欲を出す薬といえば、ドグマチールのような精神系の薬やペリアクチンのような抗ヒスタミン薬。
食欲増進による肥満は副作用と受け取られることも多いが、食欲が無い患者にとってはこれらの薬がプラスに働く。
胃を全摘したら空腹を感じない?
胃を全摘したら、空腹感をあまり感じないそうだ。
食の楽しみが一つ減るとしたら、ちょっとかわいそう。QOLの低下だ。
胃が無くなったら空腹感を感じにくくなる原因の一つはグレリンというホルモンの影響です。
グレリン (ghrelin) は、胃から産生されるペプチドホルモンで、視床下部に働いて食欲を増進させる働きを持ちます。
胃を全摘、あるいは部分切除すれば、胃からのグレリン分泌が抑制され、食欲は低下します。
ちなみに、食欲を抑制するホルモンはレプチンといい、脂肪細胞から分泌されるホルモンです。脂肪細胞が多い人、つまり体脂肪が多い人ほど、多く分泌されます。
参考書籍:日経DI2016.6
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