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スインプロイク錠は普通の便秘には効かない?
公開. 更新. 投稿者:癌性疼痛/麻薬/薬物依存.この記事は約3分4秒で読めます.
9,152 ビュー. カテゴリ:スインプロイク錠とオピオイド誘発性便秘症
麻薬の副作用として、吐き気や便秘がある。
悪心・嘔吐は約1/3の割合で生じ、便秘はほぼ必発といわれている。オピオイド誘発性便秘の頻度は約20~80%である。
そんな麻薬の副作用対策として、下剤が処方されますが、「オピオイド誘発性便秘症」を適応とした薬として、スインプロイク錠0.2mg(一般名:ナルデメジントシル酸塩錠)があります。
用法は、「通常,成人にはナルデメジンとして1回0.2mgを1日1回経口投与する。」
寝る前とは限定されていない。いつ飲んでも良いようだ。
便秘は耐性が形成されにくいため、オピオイド服用中は継続的に下剤を使用するなど対策を取る必要があるため、頓用での処方は少ないだろう。
薬効分類名は、「経口末梢性μオピオイド受容体拮抗薬」となっている。
オピオイド受容体のサブタイプには、μ(ミュー)受容体、κ(カッパー)受容体、δ(デルタ)受容体などがある。
μ受容体はモルヒネの鎮痛作用に最も関連がある受容体であり、モルヒネ(Morphine)の頭文字をとってμ受容体と呼ばれるようになった。
κ受容体は、鎮痛や鎮咳、幻覚、せん妄などに関与する。透析患者に使われるレミッチは、オピオイドκ受容体の作動薬です。
δ受容体は抗うつ作用、身体・精神依存あるいはμ受容体より作用が弱いが鎮痛にも関与している事が知られている。
スインプロイクによる鎮痛作用の減弱
μ受容体の拮抗薬ということは、モルヒネの鎮痛作用の減弱を引き起こすことが懸念されるが、インタビューフォームの開発の経緯に、
「非臨床試験で,ナルデメジンは腸管でのオピオイドの消化管運動,消化管神経活動の抑制作用に対して強力な拮抗作用を有することにより便秘改善作用を示し,これらの作用を示す用量では中枢神経系を介するオピオイド鎮痛薬の鎮痛作用に影響する可能性は低いことが示された。」
と記載されており、スインブロイク錠の用量では、鎮痛作用の減弱は引き起こされないとみられている。
血液脳関門の透過性が低く中枢のμオピオイド受容体には作用しないため、オピオイドの鎮痛効果に影響を与えずに、腸管のμ受容体特異的にアンタゴニスト活性を示し、便秘を改善する。
オピオイド鎮痛薬というと、モルヒネやオキシコドン、フェンタニルなどの癌性疼痛に使われる薬をイメージするが、整形外科領域でもよく使われるトラムセットやトラマールなどの鎮痛薬もオピオイドである。
これらの薬剤でも便秘対策として酸化マグネシウムがよく処方されるが、スインプロイク錠が処方される可能性はある。
しかし、薬価が277.1円/錠と高いので、優先順位としては低いだろう。
ちなみに、スインプロイク錠の便秘に対する作用は、オピオイドμ受容体拮抗作用によるものなので、通常の便秘には効かない。
オピオイドが処方されていない患者に処方されれば、もちろん疑義照会すべきである。
スインプロイク錠による下痢
下剤の副作用で多いのは当然ながら「下痢」である。
オピオイドを使っている患者の介護者からの相談で「排便」に関するものは多い。
便秘なら下剤を使って、下痢なら下痢止めを使えば良い、という単純なものではない。
スインプロイクを使う患者は、そこにたどり着くまでに様々な下剤を使っていることだろう。
スインプロイクとほかの下剤の働きの違いについて説明できるといい。
ナルデメジン(スインプロイク)の最高血中濃度到達時間(Tmax)は0.5時間で、また非競合的な阻害様式で作用を発現させることから、オピオイドの投与量によらず短時間で効果が発現すると考えられる。
ナルデメジン初回投与後の自発排便までの時間の中央値は4.67時間であり、内服当日に下痢が起こる可能性がある。
ナルデメジンによる下痢は、オピオイドにより抑制されていた消化管運動がナルデメジンにより解除され、一時的に活動的になることで起きるとされ、腹痛を伴わず、排便回数が3~4回増える程度の軽度の下痢であれば内服を継続しても症状は自然に軽快すると考えられる。
服用開始後、一時的に下痢になっても、2~3日すれば腸が慣れてきて症状が自然に治まることも多い。
ただし介護者にとって下痢による便失禁の処理は、精神的負担が大きいので避けたい問題ではあります。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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スイングプロイクとラキソベロンの併用は大丈夫ですか