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医療用麻薬で麻薬中毒にはならない?
公開. 更新. 投稿者:癌性疼痛/麻薬/薬物依存.この記事は約3分25秒で読めます.
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モルヒネ依存症
麻薬を使うと麻薬中毒になるんじゃないの?
麻薬の使用によって、ドパミンが賦活化して多幸感を感じるため、精神依存が発生することは広く知られています。
しかし、医療用麻薬は、疼痛緩和を目的として正しく使えば依存性が問題となるケースはほとんどないと言われる。
癌性疼痛に対する鎮痛のために投与されている場合、精神依存はほとんど起こりません。
これは、疼痛化ではオピオイド受容体の一つであるκ(カッパ)受容体が亢進し、ドパミンの賦活化を抑制するためだと考えられています。
オピオイド受容体は、μ、κ、σの3種類の受容体タイプが知られています。
このうち、オピオイド鎮痛薬が主に作用するμ受容体は、主に鎮痛効果や精神・身体的依存に関与します。
したがって無疼痛下での使用では、精神・身体的依存が生じます。
しかし、疼痛下では、精神依存を起こすドパミン神経の活動を抑えるκ神経系が亢進しており、オピオイド鎮痛薬を投与してもμ受容体を介する精神依存を抑制するものを考えられています。
オピオイドによる精神依存
オピオイドの精神依存に関しては、μ受容体とκ受容体が拮抗関係にあり、μ受容体に対する刺激は精神依存の形成に、κ受容体に対する刺激はその抑制に働くことになるが、炎症性疼痛時には、κ受容体内因性アゴニストによって刺激されているため、依存性の形成が抑制される。
また、精神依存に関連するμ受容体としては、μ2受容体が重要な役割を果たしていることが実験的に示されており、μ1受容体に対する選択性の高いフェンタネストでは、依存性がより起こりにくい可能性も考えられる。
さらに、神経障害性疼痛の動物実験モデルでは、μ受容体に対する内因性アゴニスト、βエンドルフィンが大量に遊離され、腹側被蓋野のμ受容体のダウンレギュレーションが起こり、依存性の形成が抑制されることも指摘されている。
制御系の破綻
オピオイド鎮痛薬は中脳辺縁部や中脳皮質部のドパミン神経系の細胞体のある腹側被蓋野を興奮させ、多幸感などの報酬効果を引き起こすと言われている。
また、通常は前頭前野から側坐核に興奮性グルタミン酸神経系が投射しており、さらに側坐核からは抑制性GABA神経系が腹側淡蒼球を介して腹側被蓋野に抑制をかけている。
しかし、大量のオピオイド鎮痛薬を乱用することによりこれらの制御系が破綻し、中脳辺縁系が過剰に活性化する状態、すなわち依存状態に陥ることになる。
ただし、疼痛のある患者にオピオイド鎮痛薬を用いる場合には依存は生じない。
医療用麻薬で精神依存は形成されない
WHOは長年の臨床経験から、がん疼痛治療を目的にモルヒネを使用しても精神依存が問題にならないことを明記している。
しかし、それでもがん患者やその家族は、がん疼痛治療に医療用麻薬を使用することを躊躇する。
この原因としては、がん疼痛時に医療用麻薬を鎮痛目的で適正に使用すれば精神依存が形成されないということが実証されておらず、また、その機序も明らかにされていないことが挙げられる。
医療用麻薬で精神依存が形成されない機序
精神依存は医療用麻薬が中脳辺縁ドパミン神経系を活性化して引き起こされるが、炎症性疼痛が、この系を投射先で抑制的に制御しているκオピオイド神経系を活性化し、精神依存の形成を抑制するという機序。
また、神経障害性疼痛の場合には、中脳辺縁ドパミン神経系の起始核に存在する抑制性GABA介在神経上に存在するμオピオイド受容体の機能が低下するため、医療用麻薬による中脳辺縁ドパミン神経系の活性化が抑制され、精神依存を抑制するという機序。
医療用麻薬で依存を形成しない理由
精神依存はドパミン神経系からの過剰なドパミン放出が原因となり形成されることが判明しています。
しかし、疼痛存在下ではドパミン遊離が減少しているため、医療用麻薬を投与しても精神依存が形成されないことが報告されています。
通常、生体内においてμおよびκ神経系はバランスを保っているため、健康成人がモルヒネなどの医療用麻薬を使用すると、そのバランスが崩れ、依存が形成されると考えられます。
一方、疼痛存在下ではκ神経系の活性化が引き起こされ、すでにバランスが崩れた状態になっていると考えられます。
このため、医療用麻薬を使用することで神経のバランスを調節する結果となり、依存形成が抑制されると考えられています。
麻薬が効かない癌
骨に転移したがんが引き起こす骨転移痛はオピオイド剤が効きにくい。
放射線照射のほか、副腎皮質ステロイド、高カルシウム血症などに使われるビスホスフォネート系薬剤などが鎮痛補助剤に使われる。薬剤が効きにくい痛みには、神経ブロックが有効なこともある。
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