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ロゼレムとベルソムラの違いは?
公開. 更新. 投稿者:睡眠障害.この記事は約3分33秒で読めます.
6,956 ビュー. カテゴリ:メラトニンとオレキシンの違い
ロゼレム(一般名:ラメルテオン)は、メラトニン受容体作動薬です。
体内時計を調節するホルモン「メラトニン」と似た働きをして、自然な眠りへと導きます。
ベルソムラ(一般名:スボレキサント)は、デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)です。
覚醒を維持する神経伝達物質「オレキシン」の働きをブロックして、睡眠へと移行させます。
メラトニンは「眠気を誘う」ホルモン。夜になると分泌が増えて、眠りを促進します。
オレキシンは「覚醒を維持する」神経伝達物質。活動中に分泌され、脳を目覚めた状態に保ちます。
つまり、
ロゼレムは”眠気を後押しする薬”、ベルソムラは”覚醒を鎮める薬”です。
ロゼレム | ベルソムラ | |
---|---|---|
作用 | メラトニン受容体を刺激し、眠気を自然に促す | オレキシン受容体をブロックし、覚醒を抑制する |
眠りへの導き方 | 体内時計に働きかけ、寝るリズムを整える | 覚醒を直接抑えて、眠りへと移行させる |
依存性 | ほとんどない | 依存性は少ないが注意は必要 |
筋弛緩作用 | ない | ない(ふらつきも少ないとされる) |
ベルソムラの安全性
オレキシンといえばナルコレプシー。
ナルコレプシー患者では脳内のオレキシンが欠乏しており、脳の覚醒を維持できず、突然眠ってしまう。
ロゼレムは比較的安全性が高く、依存・耐性のリスクがほとんどない睡眠薬として登場しました。
ただし、効果の実感にはやや時間がかかることもあります。
ベルソムラも従来の睡眠薬(ベンゾジアゼピン系)に比べて安全性は高めですが、
オレキシンを抑えるため、ごくまれにナルコレプシー様の副作用(カタプレキシーや入眠時幻覚、睡眠麻痺など)が起きる可能性が指摘されています。
確かに、眠れるのは良いけれど、ナルコレプシーみたいに突然バタッと眠ってしまうのは困る。
眠りにかかわるホルモン
私たちの眠りを支えているのは、「メラトニン」と「オレキシン」という2つの重要なホルモンです。
それぞれ役割が正反対で、バランスを取りながら眠りと覚醒をコントロールしています。
メラトニンは、夜になると分泌が増えるホルモンです。
体内時計に合わせて自然な眠気を促し、眠りへと導く働きがあります。
このメラトニンの作用をサポートする薬がロゼレム(ラメルテオン)です。
ロゼレムはメラトニン受容体を刺激して、自然な眠りのリズムを整える薬です。
一方で、オレキシンは覚醒を維持するための神経伝達物質です。
活動中に分泌され、脳を目覚めた状態に保ちます。
ベルソムラ(スボレキサント)は、このオレキシンの受容体をブロックすることで、覚醒のスイッチを切り、眠りへと誘導する薬です。
オレキシンは、覚醒だけでなく、食欲を促進したり、活動エネルギーを高めたりする働きも持っています。
そのため、オレキシンの作用を抑えすぎると、ごくまれにナルコレプシー様の症状(強い眠気、脱力、入眠時幻覚など)が現れることが知られています。
オレキシン受容体のサブタイプ
オレキシン受容体には、オレキシン1受容体とオレキシン2受容体というサブタイプが存在する。
項目 | OX₁受容体 | OX₂受容体 |
---|---|---|
主な結合リガンド | オレキシンAに強く反応する | オレキシンA、オレキシンBどちらにも反応する |
主な分布 | 覚醒・情動に関係する脳部位(青斑核など)に多い | 覚醒を司る脳部位(視索前野、結節乳頭核など)に多い |
役割 | ・情動的な覚醒(ストレスや興奮による目覚め)を促進 | ・基本的な睡眠と覚醒の切り替えに関係 |
・特に「不安」「ストレス」による覚醒に関係 | ・「自然な目覚め」を支える働き | |
阻害による効果 | 不安やストレス由来の覚醒を抑える(リラックス効果) | 睡眠そのものを深めたり、持続させたりする(睡眠促進効果) |
薬への応用 | OX₁だけをブロックする薬(開発中)=抗不安薬や抗うつ薬のターゲットに | OX₂をブロックすると睡眠が深まる=睡眠薬(デュアルオレキシン受容体拮抗薬:DORA系) |
OX₁受容体 → 「ストレス・興奮モード」をコントロールする受容体
OX₂受容体 → 「睡眠・覚醒スイッチ」を操作する受容体
現在市販されているオレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラ、デエビゴ、クービビック)にそれほど明確な選択性はなく、いずれもOX₁OX₂双方に働くが、多少の違いはあるようだ。
ベルソムラ(スボレキサント): ややOX₁寄り、ストレス性覚醒にも効きやすい
デエビゴ(レンボレキサント):OX₂選択性高め、睡眠そのものを深く持続させるタイプ
クービビック(ダリドレキサント): OX₁・OX₂バランス型(OX₂わずかに強い)、バランスよく眠りをサポート、翌朝スッキリ目指す
どれかで効かなければ別のという選択もあり。