記事
メラトベルとロゼレムの違いは?
公開. 更新. 投稿者:睡眠障害.この記事は約9分52秒で読めます.
15,996 ビュー. カテゴリ:目次
メラトニン
メラトニンが関連する作用機序をもつ薬としてロゼレム(ラメルテオン)がありますが、このたび2020年5月20日にメラトニンそのものずばりのメラトベル顆粒小児用という薬剤が発売されました。
ロゼレムは大人用の錠剤ですが、メラトベルは小児用の粉薬です。
ロゼレムの適応症は「不眠症における入眠困難の改善」で、メラトベルの適応症は「小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善」である。
神経発達症に含まれる疾患には、以下のようなものがある。
●注意欠如・多動症(ADHD)
● 知的能力障害群(ID)
● 自閉スペクトラム症(ASD)
● 限局性学習症(SLD)
● コミュニケーション症群(CD)
● 発達性協調運動症(DCD)
専門的な病院の門前じゃないとあまり扱うことは無さそうだ。
メラトベルの相互作用
メラトベルもロゼレム同様、フルボキサミンマレイン酸塩(ルボックス/デプロメール)が併用禁忌となっている。
だとしたら、ルボックス/デプロメールの併用禁忌に「メラトニン」と記載すべきで、サプリメントについても注意させなければならないんじゃね?と思う。
アメリカなんかだと時差ぼけ予防のためにメラトニンのサプリメントが空港で売られていたりと、容易に入手できるようなので、フルボキサミンと併用しちゃってるケースもありそうです。
メラトベルの薬価
2020年6月現在、メラトベル顆粒小児用0.2%の薬価は、207.8円/g、高!
ロゼレムの薬価が86.2円/錠。
メラトニンのサプリメントで1錠3mgくらいのものが、100錠入り1000~2000円代で売っているので、メラトベルは高い。
小児用だし、負担金無いこと多いし、高くても文句言う人は少ないだろうな。
ロゼレムはメラトニンの強力版?
ロゼレムはメラトニンの強力版と言われます。
海外ではメラトニンのサプリメントが販売されていますが、日本では販売されていない。
ロゼレムはメラトニンと比べて効くのかどうか。
ラメルテオンは高価な医薬品であるが、安価なサプリメントであるメラトニン製剤より、臨床上の効能が優れているのかどうかは確かめられていない。動物実験では、ラメルテオンはメラトニンよりも強い効き目を有していることが確認された。メラトニン製剤は安価だが、充分な医学的検証がなされておらず、効能や安全性が確認されていない。
従来の睡眠薬と異なり、視交叉上核神経活動の抑制に関与するMT1受容体および睡眠覚醒リズムの調整・保持に関与するMT2受容体に選択的に作用し、睡眠中枢を優位に導くことで睡眠を誘発し、副交感神経を優位に保つことにより自律神経を抑制することにより、鎮静作用や抗不安作用によらない睡眠を誘導する。
メラトニンの受容体にはMT1~MT3の3種類が知られているが、視交叉上核で催眠作用や睡眠リズムに関連しているのはMT1とMT2。
ラメルテオンはこの2つの受容体を選択的に刺激して、概日リズムを調整し、睡眠を誘発する。
・M1受容体:刺激すると、神経発火を抑制したり、体温を低下させることなどにより睡眠を促す。
・M2受容体:刺激すると、体内時計を同調したり、概日リズム(サーカディアン・リズム)の位相を変動する。
ラメルテオンのMT1受容体に対する親和性はメラトニンの約6倍、MT2受容体へは約4倍に達するという。
血中からの消失半減期が1時間前後と比較的短いことも、入眠をコントロールするという意味では好ましい。
多くの睡眠薬はベンゾジアゼピン受容体に働くため筋弛緩作用や記憶障害、依存性が問題となるが、これらがないため安全性の高さが期待される。
効果が若干弱く、高齢者や睡眠位相のずれを治す際に有効になると思われる。
ロゼレムの効果
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と比べてロゼレムは即効性がなく、患者の効き目の実感が薄いです。
ロゼレムは、体内時計に働きかけることで、夜になったら眠くなる、という人間本来の生活リズムを取り戻すような薬です。
夜勤の看護婦さんとかで、眠れないけど日中眠らないといけない、というようなケースには使えない。
ロゼレムがどのくらい効くのか、というと、眠るまでの時間が30分から20分になった、という程度らしい。
強制的に体を眠せるような働きはありません。
朝になったらカーテンを開ける、体を動かす、ラジオ体操をする、というほうが、生活リズムを整えるには有効かと思われます。
ロゼレムはすぐには効かない?
効果発現には1週間投与、効果判定には2~4週間投与が必要。
ラメルテオンの効果については、毎日就寝前に服用することで、通常は投与開始1週間後ぐらいに効果が発現しはじめ、3ヶ月間の投与により概ね最大の効果が得られる。
有効性の判定については投与開始2~4週間後に行うのが望ましい。
投与初期には、翌朝に眠気が残っているケースがあるが、これは体内時計が調節されている段階と推測され、数日で解消されると考えられる。
ロゼレムは寝起きを改善する?
ロゼレムは、従来の睡眠薬と異なり、体内時計の昼夜の同調を促し、生体リズムの乱れを整えて、夜になったら眠くなるように、自然な睡眠覚醒のリズムへと導く薬剤である。
「眠れない」という患者の訴えに対して、「寝つき」ばかりを重視して「寝起き」を軽視してしまう傾向がある。
ロゼレムの服用によって、「寝つき」だけでなく、「寝起き」も改善し、朝の目覚めがよくなる可能性が期待できる。
ロゼレムで時差ボケ改善?
ラメルテオンには体内時計のリズムを変化させる作用が認められている。
午後から夕方にかけてラメルテオンを服用すると、睡眠時間の位相が前進し(朝型化)し、早朝から午前中にかけて服用すると後退(夜型化)する。
このため、時差ボケに対し、ラメルテオンを出発日2~3日前から、到着地で予想される入眠時刻に少量を服用し、到着後も2~3日服用するという方法が提唱されている。
ロゼレムは副作用が少ない?
受容体に作用する薬剤として実用化されているものの多くは阻害薬(アンタゴニスト)です。
阻害薬は一般に、受容体に対する特異性が高く、結合力が強い。
狙った作用をピンポイントに出しやすい。
一方の作動薬(アゴニスト)は受容体に対する特異性が相対的に低いものが多く、想定外の副作用を生じやすいため、実用化へのハードルが低い。
ロゼレムは受容体の作動薬ではあるが、ターゲットであるMT1、MT2受容体の分布が視交叉上核に高密度であるため、あれもこれもスイッチを入れるような節操のないことにはならない。
これで実に都合良く、睡眠という現象にターゲットを絞った作用が実現され、余計な副作用を生じにくいことにつながっている。
もちろん副作用が皆無というわけではなく、傾眠、頭痛、体重増加やうつ病発症のリスクを高めることが指摘されている。
高齢者にはロゼレムがいい?
不眠症の治療において、中心的な役割を果たしている薬剤はベンゾジアゼピン系薬剤である。
近年では、依存性や耐性などの副作用が少ないω1受容体に選択性のある非ベンゾジアゼピン系薬剤も使用頻度が増加しているが、その作用機序は、ベンゾジアゼピン系薬剤と同様である。
一方、ロゼレムは鎮静作用や抗不安作用によらず、MT1受容体およびMT2受容体に選択的に作用し、睡眠中枢を優位に導くことで自然に近い生理的睡眠を誘発することから、以下に示した入眠困難の患者への投与が適していると考えられる。
①初めて不眠に対する薬物療法を受ける患者
②ベンゾジアゼピン系睡眠薬の服用に対する不安が強い患者
③神経症的傾向が弱い、脱力(転倒)・ふらつきのリスクの高い患者
④高齢の患者
ロゼレムでベンゾジアゼピン系からの離脱ができる?
ロゼレムによってベンゾジアゼピン系睡眠薬離脱の可能性が期待できる。
BZP系睡眠薬はその抗不安作用のため、離脱は容易ではないが、BZP系睡眠薬を休薬する際にはラメルテオンを併用し、徐々にBZP系睡眠薬を減量することで、BZP離脱に成功する可能性が期待できる。
睡眠は、睡眠不足を是正しようとする「恒常性維持機構(ホメオスタシス)」と、日常的に夜になると眠るという「体内時計機構」の2つの機構でコントロールされている。
しかし、何らかの原因でこれらのコントロ-ルが崩れると不眠症に陥り、さらに症状が慢性化することで、うつ病などのリスクが高くなることが認められている。
こうしたことから、不眠症は早期に治療する必要があるとされている。
不眠症治療は現在、ベンゾジアゼピン系薬をはじめとする催眠剤を用いた薬物療法が中心となっている。
ただし、ベンゾジアゼピン系薬は、鎮静・催眠作用以外に、抗不安作用、運動障害作用、筋弛緩作用、記憶障害なども有しているほか、長期的な使用による依存性や耐性なども問題となる。近年では、そうした副作用が少ない、ゾルピデム(アモバン)などの非ベンゾジアゼピン系薬剤も登場し、使用頻度も増加している。
ラメルテオンの最大の特徴は、従来のベンゾジアゼピン系薬とは異なり、視交叉上核以外の脳内作用がないことであり、従来の睡眠薬に高頻度で発現していた反跳性不眠や退薬症候がなく、自然に近い生理的睡眠を誘導する。
メラトニンで時差ボケは治る?
人間には約24時間の日周リズムというものがあり、睡眠も通常はこのリズムにより生じています。
そのリズムを作り出す重要な役割を担っているのが松果体という脳部位です。
ここではメラトニンという物質が機能していますが、このメラトニンの量が日内変動しており、これに伴って睡眠などの日周リズムに依存した生体リズムが生じるという可能性が示唆されています。
メラトニンは夜間(暗い時期)に増加することが知られており、このため、メラトニンを摂取することで睡眠を生じるということが以前から言われていました。
日本ではそれほどでもないのですが、米国ではメラトニンは普通のドラッグストアで購入できるサプリメントとして一般的に知られています。
寝付けない場合や時差ボケで眠れない場合などに用いられています。
ただし、その有効性に関しては個人差も大きく、明確なものではありません。
ロゼレムの屯服
屯服投与で臨床的に効果が認められた成績はありません。
単回投与や2日間投与で、PSG(終夜睡眠ポリグラフ検査)による客観的な睡眠潜時(入眠までの時間)の短縮が認められている報告があることから、実際には屯服投与でも効果があるかもしれませんが、自覚的な睡眠潜時ではプラセボと有意差がありませんでした。
ロゼレムは連日の服用により、徐々に睡眠・覚醒リズムが整うことで効果を実感できてくる薬剤なので、屯服で服用するのではなく、連日投与を原則とし
ています。
効果発現の時期
ロゼレムを服用し、初回で有効性が出る方もいますが、基本的には毎日就寝前に服用することで、通常は投与開始後くらいに効果が発現しはじめます。
3ヶ月間の投与により、概ね最大の効果が得られますが、ロゼレムの効果判定は2週間を目処に行い継続の可否を判断します。
ロゼレムは夕方に飲んだほうが良い?
メラトニンのサーカディアンリズム(概日リズム)を考えると、夕方頃分泌しはじめるので、ロゼレムもそのくらいの時間帯に飲むのが好ましいという話もある。
しかし、添付文書上の用法は、
通常、成人にはラメルテオンとして1回8mgを就寝前に経口投与する。
と就寝前の用法であり、「本剤は、就寝の直前に服用させること。また、服用して就寝した後、睡眠途中において一時的に起床して仕事等をする可能性があるときには服用させないこと。」という注意書きもあるので、夕食後という用法は保険請求上認められない。
服薬後の眠気やふらつきなどを考慮すると、就寝直前に飲むのが好ましいということだ。
また、食事の影響もあり、
食後投与では、空腹時投与に比べ本剤の血中濃度が低下することがあるため、本剤は食事と同時又は食直後の服用は避けること。
と記載されているので、夕食後の用法では効果が落ちると考えられる。
メラトニンを成分とするメラトベル顆粒小児用0.2%も同様に「就寝前」の用法となっている。
もしかしたら、処方箋上の用法は「就寝前」だけど、効果の発現が不十分な患者には医師が口頭で、食事との間隔を空けて、ふらつきに注意して服薬を早めるような話をする可能性もあるので、そういう飲み方についても理解しておこう。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。