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SGLT2阻害薬で悪化する検査値
公開. 更新. 投稿者:糖尿病.この記事は約3分34秒で読めます.
4,228 ビュー. カテゴリ:SGLT2阻害薬と尿糖
スーグラ、ジャディアンスなどのSGLT2阻害薬の添付文書の「臨床検査結果に及ぼす影響」に以下のように書かれている。
本剤の作用機序により、本剤服用中は尿糖陽性、血清1,5-AG(1,5-アンヒドログルシトール)低値を示す。尿糖及び血清1,5-AGの検査結果は、血糖コントロールの参考とはならないので注意すること。
SGLT2阻害薬は尿中に糖を出す薬。そのために起こる検査値への影響があります。
血糖コントロールの状況を確認する上で重視される指標がHbA1cです。
患者の過去1~2か月間の平均血糖値を反映する指標で、1人の患者において値のバラツキが少なく、血糖のコントロール状況を把握しやすい。
このため、HbA1cは血糖コントロールの主要な判定指標として用いられる。
一方で、HbA1cには血糖値の日内変動などの細かな変化を把握できないといった弱点もある。
このため、血糖コントロールの指標はHbA1cだけでなく、グリコアルブミン(GA、基準値11~16%)、血清1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG、基準値14.0μg/mL以上)も用いられる。
SGLT2阻害薬は腎臓の近位尿細管にあるSGLT2に作用して、グルコースの再吸収を阻害することにより、グルコースを血中に戻さずに尿中に排出させる。
つまり、余分な糖を積極的に尿中に排出し、血液中の糖を減らすことにより、HbA1cや血糖値は改善する。
他方、尿中に糖を排出するため、血糖コントロール指標の1つである血清1,5-AGに影響を及ぼす。
血清1,5‐AGは、数日間の血糖変動や食後血糖値の変動を反映する指標で、尿中の糖分濃度が上昇すると低下する性質がある。
通常、健常人ではほぼ全ての1,5-AGが腎近位尿細管で再吸収され、血清1,5-AGの濃度は一定に保たれる。
ただし、尿中にグルコースが存在すると、1,5-AGの構造がグルコースに類似していることから、競合により再吸収が阻害される。これにより、本来再取り込みされるはずの1,5-AGが尿中に排出され、結果として1,5-AGの血中濃度が低下する。
つまり、血清1,5-AGの値が低いほど、血糖コントロール不良となる。
SGLT2阻害薬は、尿中へのグルコース排出を促進する。このため血清1,5-AGの濃度は低下し、見かけ上、糖尿病が悪化しているような状態になる。
ほかにも、血清1,5-AG濃度に影響を与える血糖降下薬としては、α―グルコシダーゼ阻害薬(ベイスン、グルコバイ、セイブル)がある。
糖化アルブミンとは?
糖化アルブミン(GA)は、その名のとおり血中に存在するアルブミンの糖化産物です。
HbA1cと同様、生理的意味は特にないと考えられています。
アルブミンの半減期は約17日なので、比較的直近(過去2週間程度)の平均血糖値を反映しています。
基準範囲は12~16%で、HbA1cと血糖値が乖離しているときに利用されます。
1,5-アンヒドログルシトール(1,5AG)とは?
構造がグルコースに類似したポリオールで、ヒト血中に一定量存在します。
腎臓の糸球体でろ過されて尿細管で再吸収されるため、高血糖状態ではブドウ糖との競合を受け、1,5AGの尿中排泄が増加するとともに血中濃度がすみやかに低下します。
このため、過去数日間の血糖値変動を示す数値とされています。
HbA1c、GA値が正常でも、1,5AG値が低下したならば、ここ数日の血糖コントロールが不良である可能性が高いといえます。
参考書籍:日経DI2018.7
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