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下肢静脈瘤があるとエコノミークラス症候群になりやすい?
公開. 更新. 投稿者: 1,442 ビュー. カテゴリ:脳梗塞/血栓.この記事は約3分24秒で読めます.
目次
下肢静脈瘤とエコノミークラス症候群の関係

「飛行機に長時間乗るとエコノミークラス症候群になる」と聞いたことがある方も多いでしょう。また、脚の血管が浮き出る「下肢静脈瘤」も女性を中心に身近な疾患として知られています。では、この2つの病気にはどのような関係があるのでしょうか?
下肢静脈瘤とは?
下肢静脈瘤は、脚の表面近くにある「表在静脈」に発生する疾患です。脚の血液を心臓に戻すために働く静脈には、血液の逆流を防ぐ弁が存在します。この弁が壊れると、血液が逆流して血管内にたまり、血管が膨張・蛇行して瘤(こぶ)のようになります。これが下肢静脈瘤です。
特に、以下のような人に多く見られます:
・妊娠・出産を経験した女性
・立ち仕事が多い人(販売員、調理師、教師など)
・40代以上の女性(約半数にみられるといわれています)
症状としては、
・血管の浮き出し
・だるさ、むくみ、こむら返り
・かゆみや湿疹、皮膚の変色
・進行すると皮膚潰瘍
などが挙げられます。
一度発症すると自然に治ることはなく、徐々に悪化していくのが特徴です。
エコノミークラス症候群とは?
エコノミークラス症候群とは、正式には「静脈血栓塞栓症(VTE)」と呼ばれ、以下の2つを含む疾患概念です:
・深部静脈血栓症(DVT)
・肺血栓塞栓症(PTE)
長時間同じ姿勢でいることで、脚の深部静脈に血栓(血のかたまり)が形成され、それが肺の血管に飛んで詰まると、肺血栓塞栓症を起こし、これが一般に「エコノミークラス症候群」と呼ばれます。飛行機以外でも、自家用車での長距離移動、災害避難所など、狭くて動けない環境で発症します。
下肢静脈瘤と血栓の関係
下肢静脈瘤があるからといって、エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)になりやすいという、直接的な因果関係はありません。
理由は以下の通りです:
・下肢静脈瘤は表在静脈の病変
・深部静脈血栓症は深部静脈に発生する血栓が原因
つまり、静脈瘤そのものが血栓を作って肺に飛ばすというリスクは高くないのです。
しかしながら、海外では「下肢静脈瘤の患者はエコノミークラス症候群のリスクが高い」とする報告もあります。ただし、これは欧米人の体格や生活習慣による影響が大きく、日本人にそのまま当てはまるわけではありません。
両者に共通する生活習慣と間接的リスク
直接の因果関係はないものの、生活習慣や姿勢の影響という意味での共通点はあります。
・長時間座る → 血流停滞 → 深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)
・長時間立つ → 表在静脈に負担 → 下肢静脈瘤
また、以下のような背景を持つ人では両方のリスクが相対的に高くなることがあります:
・年齢(高齢者)
・女性(特に出産経験者)
・肥満
・運動不足
・弾性ストッキングの効果と使い方
弾性ストッキングは、足首から上に向かって段階的に圧力を加えることで、血液の心臓への戻りを促進し、血流停滞を防ぎます。
効果があるとされる場面:
・下肢静脈瘤の対症療法(重症化防止)
・深部静脈血栓症の予防
・冷え性・むくみの軽減
使用の注意点:
・就寝中は使用を避ける(血流障害のリスク)
・サイズが合わないと逆効果
・医師の指示がある場合は医療用を使用
一般用も販売されていますが、医療用とは圧力の強さや設計が異なります。
血栓・塞栓症の一般的理解
体内で血液が固まり、流れに乗って重要な血管に詰まると、深刻な症状を引き起こします。
・心臓の血管 → 心筋梗塞
・脳の血管 → 脳梗塞
・肺の血管 → 肺塞栓症
血栓の形成は、不整脈(心房細動)や血流のうっ滞によって促進されます。下肢静脈瘤も血流のうっ滞に関係するため、間接的に血栓リスクを上げる要素にはなり得ます。
予防と対策
どちらの疾患も、日常生活の中で意識的な予防が可能です。
下肢静脈瘤の予防:
・長時間の立ち仕事を避ける
・足の筋肉を動かす(ふくらはぎのポンプ作用を活用)
・適度な運動(ウォーキング、ストレッチ)
・圧迫ストッキングの活用
エコノミークラス症候群の予防:
・長時間の移動中は時々立って歩く
・足首を回す・ふくらはぎを揉む
・水分補給を怠らない
・圧迫ストッキングの着用(とくに既往のある人)
まとめ
下肢静脈瘤とエコノミークラス症候群は、直接的な因果関係は乏しいものの、血流のうっ滞や生活習慣の影響という点で間接的な関連があります。いずれも”血液が正しく流れない”ことから起こる疾患であり、予防には日常的な体の動かし方や対策がカギになります。
「脚がだるい」「血管が浮き出てきた」などの症状が気になる場合は、早めに医療機関で相談し、生活改善や治療を検討することが重要です。



