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ジプレキサで低血糖?
公開. 更新. 投稿者:統合失調症.この記事は約6分38秒で読めます.
3,685 ビュー. カテゴリ:非定型抗精神病薬で低血糖?
非定型抗精神病薬による高血糖はよく知られているが、低血糖も起こるらしい。
気付かずに起こる薬の副作用としては、高血糖よりも低血糖のほうがリスクが高い。
非定型抗精神病薬は、耐糖能異常(高血糖)を惹起する報告が多いことから、耐糖能異常発生の発現メカニズムの詳細は不明であるが、様々な注意喚起がなされてきた。
また、セロトニン受容体拮抗作用がない、従来の定型抗精神病薬による高血糖発現も報告されている。
逆に非定型抗精神病薬により低血糖が発現することは、ほとんど知られていない。
しかし、これまでに少数であるが、抗精神病薬による低血糖発現の報告が存在する。
クエチアピンやオランザピンは、高血糖発現リスクが高く、糖尿病患者及びその既往のある患者には投与禁忌になっているが、これらの薬剤でも高血糖とは逆の低血糖が発現している。
また、定型抗精神病薬であるハロペリドールによる重篤な低血糖発現の報告がある。
これら定型・非定型抗精神病薬による低血糖発現機序の詳細は、高血糖発現機序の場合と同様に明らかにされていない。
低血糖症状の発現に気付かずに適切な対応が行われない場合には、中枢神経系に不可逆的な障害をもたらし、不幸な転帰を辿る危険性がある。
これまで広く知られている高血糖だけではなく、重篤な低血糖を惹起する可能性があることにも注意する必要がある。
参考書籍:日本医薬品情報2012.2
ジプレキサやセロクエルは糖尿病に禁忌?
抗精神病薬のジプレキサやセロクエルは糖尿病に禁忌となっている。
またジプレキサは高血糖を来たすことがあり糖尿病には禁忌になっている。当初、高血糖をきたすことは知られていたが、その副作用が軽視されていた。糖尿病は禁忌でなかった。その後、急激な高血糖で死亡者が出るに至り、禁忌に変更された。(アメリカでは禁忌ではない。体格や人種による差と思われる) これは、医師からすれば大きな制約である。なぜなら、統合失調症の人は糖尿病の合併率が高いからである。その後セロクエルも肥満、高血糖の副作用があるため、同様に禁忌とされた。注意して処方できるなら良いが、最初から禁忌で使えないとなると、これは非常に困る。ジプレキサやセロクエル使用者は、定期的に血糖検査を行い、常に監視しておかないといけない。高血糖はずっと問題がなくても突然、生じることがある。ジプレキサ|kyupinの日記 気が向けば更新 (精神科医のブログ)
ジプレキサ|kyupinの日記 気が向けば更新 (精神科医のブログ)
セロクエルやジプレキサを飲んでいて、血糖値上がって糖尿病になったら、中止することになるのでしょうか。
禁忌だからなあ。
重篤な糖尿病とか糖尿病性ケトアシドーシスで禁忌ってのは多いけど、単なる糖尿病で禁忌てのはこの2つくらい。
そういう意味では使いにくい薬。
精神病患者の口渇の原因は?
統合失調症の患者で、多飲、多尿、口渇といった症状がみられる患者は多い。
薬の副作用である可能性も高いが。
水中毒には、抗精神病薬の副作用とバソプレッシンの持続的分泌が関係するという説がある。この説では、抗精神病薬の長期投与によって視床下部の口渇中枢およびバソプレッシン分泌細胞のドーパミン受容体感受性が亢進する。このため口渇とバソプレッシン促進によって腎臓からの水分再吸収が盛んになり血漿浸透圧が減少するが、ナトリウムの再吸収は行われないため低ナトリウム血症を引き起こすとされる。しかし抗精神薬の服用にかかわらず自閉症患者には高い確率で多飲が見られる。水中毒 – Wikipedia
水中毒 – Wikipedia
多飲、多尿、口渇といった症状は、糖尿病の症状でもある。
ジプレキサやセロクエルなどを服用している患者では、高血糖のリスクも高いので、飲用するドリンクの糖分については注意する必要がある。
統合失調症患者は糖尿病になりやすい?
統合失調症患者は健常者と比べて2型糖尿病の罹患率が高いことがしられています。
インスリンショック療法が行われていた頃からインスリンの効きが悪く、血糖が下がりにくいことが既に研究され、報告されていました。
統合失調症患者の糖尿病発症機序として遺伝子の関与以外にも抗精神病薬のヒスタミンH1受容体、5ーHT2C受容体遮断作用による体重増加が糖尿病誘発に関与していること、また5ーHT1A受容体遮断作用により膵β細胞からのインスリン分泌が減少していること、脳のグルコース解糖の指令機能が抗精神病薬により機能不全となり血糖が上昇すること、抗精神病薬が糖尿病発症閾値を低下させることや、インスリン感受性グルコーストランスポーターを減少させ細胞内への糖取り込み阻害を有することなどが考えられていますが、どれも仮説の域を超えたものではありません。
その他にも統合失調症患者は清涼飲料水などを摂取することが多く、またそれを消費するだけの運動量が満たされていない場合もあり、このことも糖尿病発症と関係があるかもしれません。
糖尿病を未然に防ぐ方法として原因となる抗精神病薬を中止して別の薬物に切り換えることは必要ですが、食事療法、運動療法も併せて行うことが重要と考えられています。
口渇と多飲と糖尿病
ジプレキサの患者さん向け指導書には以下のように書かれている。
糖を含む飲料水(ジュース、炭酸飲料、スポーツドリンクなど)を急にたくさん飲むと、血糖値が急激に上昇する可能性があります。
激しいのどの渇きがある場合は、ジュースなど糖分を含む飲料水を飲むのをやめて、すぐに主治医の先生に連絡し、診察を受けてください。
ジプレキサの添付文書の警告欄には以下のように書かれている。
1.
著しい血糖値の上昇から、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡等の重大な副作用が発現し、死亡に至る場合があるので、本剤投与中は、血糖値の測定等の観察を十分に行うこと。
2. 投与にあたっては、あらかじめ上記副作用が発現する場合があることを、患者及びその家族に十分に説明し、口渇、多飲、多尿、頻尿等の異常に注意し、このような症状があらわれた場合には、直ちに投与を中断し、医師の診察を受けるよう、指導すること。
ジプレキサ以外にも、エビリファイ、クロザリル、セロクエル、ビブレッソなどの抗精神病薬にも同様の警告が書かれている。
抗精神病薬を服用すると、抗コリン作用により唾液の分泌が低下します。
そのため、多くの患者さんが「口渇」を訴え、多飲を起こします。
抗精神病薬を内服している患者さんの多飲経口は10~40%で、そのうち数%が水中毒になるといわれています。
それとは別に、統合失調症の患者さんの視床下部下垂体系の異常による多飲傾向も指摘されています。
抗精神病薬により、抗利尿ホルモン分泌異常症や口渇中枢の異常が起こっているのです。
多飲水の原因としては①向精神薬の副作用、②抗利尿ホルモン(ADH)分泌異常症(SIDAH)、③精神症状などが考えられますが、一致した結論は得られていません
向精神薬を服用している患者には、水を1日4L以上飲んで朝と夕方では体重が2~3kg違うという人もいる。
多飲傾向(多飲症)は精神疾患患者にはしばしば見られ,水中毒を生じる。原因として,① 向精神薬(とくに定型抗精神病薬)による副作用の口渇により飲水が習慣化し,強迫的に飲水が増える,② 精神疾患の病態(不安,焦燥等)から飲水が習慣化して多飲傾向となり,さらに精神症状が悪化して悪循環となる,③ 向精神薬の副作用により抗利尿ホルモンの分泌機構が障害される(SIADH)等が考えられる。多飲により電解質バランスが崩れて低ナトリウム血症が生じると,軽症では疲労感,嘔吐,浮腫,重症では痙攣,錯乱,意識障害等が起こる。
精神疾患患者は自殺傾向の強い人も多いので、「ジュースをがぶ飲みしないで」と本人に指導したとしても聞き入れない人は多い。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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