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虫歯の穴に正露丸をつめると痛みが治まる?
公開. 更新. 投稿者:栄養/口腔ケア.この記事は約3分25秒で読めます.
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正露丸が虫歯に効く?

正露丸といえば、「おなかを壊したときに飲む薬」というイメージが定着している方が多いでしょう。しかし実は、正露丸の効能効果には「むし歯痛」が明記されています。さらに歯痛への対症療法として知られる「今治水」や、漢方薬の「立効散」など、歯の痛みに関する市販薬や漢方薬は意外と多様です。
正露丸の適応症に「むし歯痛」
正露丸の効能効果には、下痢関連の症状に並んで「むし歯痛」の記載があります。
正露丸の効能効果(代表例)
・軟便
・下痢
・食あたり
・水あたり
・はき下し
・くだり腹
・消化不良による下痢
・むし歯痛
使用法:
「むし歯痛には、1~1/2粒を歯窩(むし歯の穴)につめてください。」
驚くことに、正露丸は「飲む」のではなく、「虫歯の穴に詰める」ことで歯の痛みを和らげるという使い方が紹介されています。
ただしこの方法、歯科医の間ではやや評判が悪いようです。というのも、歯に詰められた正露丸を取り除くのが非常に困難だからです。強いニオイと固さ、さらには色素沈着のリスクもあり、処置の妨げになることもあるとか。
それでも「虫歯でたまらなく痛いけれど、すぐに歯医者に行けない」という場面では、苦し紛れの手段として試されているようです。
今治水(こんじすい)という選択肢
もうひとつ、昔ながらの歯痛対策として語られるのが「今治水(こんじすい)」です。読み方に注意が必要で、「いまばりすい」ではなく「こんじすい」と読みます。
使用法:
「今治水をしみ込ませた綿球を虫歯の穴に押し込んで使用する。」
これも正露丸と同様、一時的な鎮痛を目的とした対症療法です。虫歯自体を治すわけではありませんが、激痛を抱える人にとっては救いになることも。
「そんなに痛いなら歯医者に行け」と言いたくなる場面でも、夜間や休日で受診が難しい場合には、このような方法にすがりたくなる気持ちも理解できます。
今治水の成分分析:その効果は?
今治水の構成成分を見ると、「いかにも効きそう」な成分が多数含まれていることがわかります。
有効成分一覧:
・チョウジ油(鎮痛作用)
・フェノール(殺菌・鎮痛作用)
・dl-カンフル(鎮痛作用)
・ケイヒ油(鎮痛作用)
・l-メントール(鎮痛作用)
・ジフェンヒドラミン塩酸塩(抗炎症作用)
・ジブカイン塩酸塩(局所麻酔)
・塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル(局所麻酔)
・サンシシチンキ(鎮痛作用)
このように、複数の鎮痛・抗炎症・殺菌成分が配合されており、緊急的な歯痛の緩和を意図した設計となっていることが分かります。
使用回数に関する注意点
添付文書には明確な回数制限の記載がないことが多いですが、綿にヒタヒタに染み込ませて1日に数回使用すれば、4mL程度は簡単に消費してしまう可能性があります。
誤飲時の対応:
今治水のホームページでは「1本(10mL)飲んでしまった場合は危険ですので、商品持参の上、速やかに医師に相談を」と注意喚起されています。
誤飲や小児による誤用には特に注意が必要です。
歯痛に使える漢方薬「立効散」
歯の痛みに対して漢方薬を使うこともあります。その代表格が「立効散(りっこうさん)」です。
構成生薬:
・竜胆(抗炎症)
・甘草(緩和作用)
・升麻(解熱・鎮痛)
・防風(鎮痛・抗炎症)
・荊芥(抗炎症・鎮痛)
効能・特徴:
・急性の歯痛や抜歯後の疼痛に使用される
・名前のとおり「立ってすぐ効く」ことを期待される
・即効性と抗炎症・鎮痛作用を兼ね備えた処方
ロキソニンなどのNSAIDsに抵抗感のある患者や、高齢者、胃が弱い方などに対する代替手段として、または併用選択肢として活用されています。
市販薬や漢方薬は「応急処置」であることを忘れずに
正露丸や今治水、立効散はいずれも「歯痛を根本から治す」ものではありません。あくまでも一時的に症状を緩和する「応急処置」の位置付けです。
とくに虫歯は、進行すると神経まで炎症が波及し、激痛や感染症の原因となるため、可能な限り早期に歯科を受診することが最も重要です。
・正露丸:1~1/2粒を虫歯の穴に詰める、歯科治療時に取りにくい
・今治水:綿球に染み込ませて穴に押し込む、誤飲・過量使用に注意
・立効散(漢方):内服(1回1包など)、即効性を期待する漢方
正露丸が虫歯に効くという意外な事実から始まり、市販の鎮痛剤、局所薬、漢方薬まで幅広くご紹介しました。いずれの選択肢も「緊急避難的」なものですが、痛みの軽減が可能であることには変わりありません。
最終的には歯科治療が必須ですので、患者さんには「早めに歯医者へ」の声かけを忘れずに。また、薬剤師としてはこれらの情報を正確に伝え、適切な使用と誤用防止の啓発を続けていきたいところです。