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出べそは5円玉で治る?
公開. 更新. 投稿者:妊娠/授乳.この記事は約4分2秒で読めます.
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出べそは5円玉で治る?

赤ちゃんの「出べそ」は医学的には「臍ヘルニア(さいへるにあ)」と呼ばれます。赤ちゃんのおへそがぷっくりと飛び出していて、「これって大丈夫?」「いつまでこのままなの?」と心配になる保護者の方も多いと思います。なかには「5円玉を貼れば治るらしい」といった民間療法を試そうとするケースも見られます。
出べそ(臍ヘルニア)とは?
臍ヘルニアは、臍部(おへそ)から腸管の一部が皮膚の下に突出する状態を指します。赤ちゃんのへその緒が取れた後、数日~数週間のうちに現れることが多く、以下のような特徴があります:
・腹圧が上がったとき(泣いたときなど)に膨らむ
・直径は指頭大からピンポン玉程度まで様々
・指で押すと「グニュグニュ」と腸が戻る感触がある
早産児での発症率が高く、原因は明確には分かっていません。
自然治癒の経過
出べその多くは自然に治ります。具体的な統計は以下の通りです:
・生後2~3ヶ月をピークにその後縮小
・1歳までに80~90%が治癒
・2歳までに95%以上が自然治癒
この間に嵌頓(かんとん:腸が戻らなくなる)や破裂が起こることはきわめてまれで、多くの場合は経過観察で対応されます。
自然治癒しないまれな例では、3~4歳を目安に手術を検討します。
民間療法:「5円玉を貼ると治る」?
昔から伝わる民間療法に、「出べそに5円玉やボタンを貼ると治る」というものがあります。理屈としては、出ているおへそを物理的に押し込むことでヘルニアの状態を改善しようというものです。
実際の方法:
・5円玉やボタンをガーゼに包む
・おへそにあててテープで固定
・数日~数週間この状態を維持
一見合理的にも思えますが、医師の多くはこの方法を推奨していません。理由は以下の通りです:
デメリット・危険性:
・圧迫壊死(血流が滞って皮膚が壊死する)
・皮膚かぶれ・びらん・感染
・衛生管理が難しい(特に金属は不衛生)
つまり、理論的には理解できても、安全性が十分に担保されていないことが問題です。
医療現場で行われる「絆創膏固定法(スポンジ圧迫法)」
一方、医療現場では「絆創膏固定法」「スポンジ圧迫法」と呼ばれる手法が実際に行われることがあります。これは民間療法と似ている部分もありますが、安全性と効果の点で管理された医療行為です。
方法:
・ヘルニアを整復(手で押し込む)
・小さなガーゼや綿球を作成
・おへそにあてがい、
・伸縮性のある絆創膏で固定(十字、縦横斜めなど)
・必要に応じて腹帯を装着
ポイント:
・入浴時は濡らさないよう配慮(交換時期は医師の指導による)
・皮膚のびらんや炎症が起きないよう観察が必要
この方法では、生後4か月未満に開始して1〜2か月で治癒する例が多数報告されており、短期間で高い治癒率(ほぼ100%)が期待できます。
ただし注意点も:
・固定が皮膚を傷めることがある(かぶれ・湿疹・圧迫壊死など)
・毎日〜週1回程度の貼り替えが必要
・医療者の管理下での実施が望ましい
経過観察 vs 固定法:どちらがよい?
出べそに対する対応については、現在も意見が分かれるところです。
経過観察派の意見:
・ほとんどが自然治癒するため、固定は不要
・固定によって治癒が遅れるという報告もある
固定支持派の意見:
・生後6ヶ月末までに固定で全例治癒の報告も
・嵌頓例や手術例を減らせる可能性
・治癒後の臍窩の形状が良好になる傾向
実際には、ヘルニアのサイズや皮膚の状態、家庭の管理能力などを考慮して判断されます。
非常にまれだが注意すべき「嵌頓」
出べそは通常、危険のない良性の状態ですが、ごくまれに「嵌頓」を起こすことがあります。嵌頓とは、腸管が飛び出したまま戻らず、血流が悪くなる緊急状態です。
嵌頓のサイン:
・出べそが硬く、赤く腫れて戻らない
・強く泣いている、機嫌が悪い
・吐き気、嘔吐を伴う
このような場合はすぐに小児科または外科を受診し、手術が必要になることもあります。
番外編:臍帯ヘルニアと腹壁破裂
「臍ヘルニア」と名前が似ていますが、新生児期に診断される臍帯ヘルニアや腹壁破裂はまったく別の重篤な疾患です。
臍帯ヘルニア:
・生後すぐに脱出臓器が臍部から突出
・膜(ヘルニア嚢)で覆われている
・小児外科での管理が必須
腹壁破裂:
・ヘルニア嚢がない
・腸が直接露出している
・緊急処置・搬送・手術が必要
これらの疾患は通常、出生時に診断され、保育器・滅菌ガーゼ・アルミホイルなどを用いた処置が行われます。
まとめ
・出べその正式名称:臍ヘルニア
・自然治癒率:1歳までに80~90%、2歳までに95%
・民間療法:5円玉やボタンで圧迫(推奨されない)
・医療法:スポンジ圧迫・絆創膏固定法(医師管理下で)
・固定法のリスク:皮膚障害、びらん、かぶれなど
・固定の効果:高い治癒率・きれいな臍形成が期待できる
・嵌頓の有無:非常にまれだが注意が必要
結論:でべそをどう対処すべきか?
結論として、赤ちゃんの出べそに対してはまず慌てず経過を見守ることが大切です。ほとんどの症例は自然に治るため、過度な心配は不要です。ただし、
・ヘルニアが大きくて治りが遅い
・臍の形状を整えたい
・嵌頓のリスクを下げたい
という場合には、医療者と相談のうえで絆創膏固定法などを適切に実施することも検討できます。決して自己流の圧迫(5円玉・ボタン)は行わず、医師の指導のもとで対応するようにしましょう。
「心配だけど放っておいて大丈夫かな?」という保護者の不安を和らげることが、医療者・薬剤師の役割でもあります。
1 件のコメント
すごくためになりました。スポンジはどうゆう、スポンジがいいのでしょう?普通の食器洗い用のスポンジでもいいのでしょうか?
今私は10歳なんですが海事研修で16人ほどに集まってお風呂に入るんですがとっても恥ずかしいと思ってたんですがこれを見て安心しました本当にありがとうございました