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肺MAC症の原因は温水?
公開. 更新. 投稿者:結核/肺炎.この記事は約4分15秒で読めます.
2,948 ビュー. カテゴリ:ガーデニングで肺MAC症
肺MAC症とは、呼吸器系にMycobacterium avium Complex (MAC)と呼ばれる抗酸菌が感染しておこる病気です。
抗酸菌というと結核菌がよく知られていますが、結核菌以外の抗酸菌を非結核性抗酸菌と呼び、その代表的なものがMACです。
非結核性抗酸菌は水(自然水、水道水)や土壌などの自然環境中に生息しているものが多く、現在約130菌種が確認されています。
そのうちの約30菌種がヒトに感染し、中でも最も感染頻度が高い菌種がMACで、わが国の非結核性抗酸菌症の70%以上を占めています。
MACは温水で生息するため日常生活で温水を豊富に使うようになり、菌に曝露される機会が増えたこと、ガーデニングブームで土壌のMAC菌に接する機会が増えたこと、なども増加原因の1つと考えられています。
お風呂で肺MAC症
肺MAC症の原因として、風呂場での感染も多い。
42℃前後の温度で繁殖しやすいMAC菌にとって、気密性の高い風呂場は最適な環境です。
MAC菌は、土や水の中のほか、浴槽のお湯の注ぎ口やシャワーヘッドのぬめりや湯あかにいます。
そうした場で、しぶきや霧状の水滴、土ぼこりなどが発生し、その中のMAC菌を肺に吸い込むと感染すると考えられています。
肺MAC症はヒトからヒトへは感染しない?
肺MAC症の主な症状は、慢性的な咳、痰、血痰ですが、感染初期にはほとんど症状はありません。
しかし、MACは気道に傷害を与えるため、症状がなくても突然血痰が出て感染が明らかになるケースもあります。
進行にともなって慢性的な咳や痰が続くようになり、さらに進行すると労作性の息切れや呼吸困難が見られます。
ただし、肺MAC症はヒトからヒトへの感染は起こらないと言われています。
非結核性抗酸菌症の場合、複数の抗生物質(抗結核薬やニューキノロン系抗菌薬)が長期間処方されるため、疑義照会が必要となるケースが多い。
肺MAC症の治療期間
3剤併用療法を数カ月間続けることで、治療歴のない症例なら70~80%が喀痰からの排菌がなくなります。しかし治療を中止すると20~30%が再燃するので、陰性になっても1~2年は治療を継続します。
ただし、MACは抗酸菌の一種なので、一旦感染すると完全に排除することはできず、陰性になっても持続感染していると考えられます。
結核と非結核性抗酸菌症の違いは?
結核の原因である結核菌の仲間を、抗酸菌といいます。
塩酸酸性アルコールによる脱色素剤に抵抗性を示すことからこの名が付けられました
ハンセン病の原因である「らい菌」も抗酸菌の仲間です。
結核菌、らい菌以外の抗酸菌で引き起こされる病気が非結核性抗酸菌症です。
結核との大きな違いは、ヒトからヒトへ感染しないこと、病気の進行が緩やかであること、抗結核薬があまり有効でないことなどがあります。
非結核性抗酸菌にはたくさんの種類があり、ヒトに病原性があるとされているものだけでも10種類以上があります。
日本で最も多いのはMAC菌(マイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレ)で、約75%を占め、次いでマイコバクテリウム ・キャンサシーが約15%を占め、その他が約10%を占めています。
肺MAC症の治療
非結核性好酸菌による肺MAC症の治療は、抗結核薬のリファンピシン、エタンブトール塩酸塩、クラリスロマイシンの3剤が基本である。処方内容が結核の治療と似ているが、肺MAC症では2~3年の長期服用を要する点が、服薬期間が半年~1年ほどの結核治療とは異なる。
服用が長期に及ぶことで、耐性菌や副作用のリスクも高くなるため、一層の注意が必要である。
基本の3剤のうち、化学療法の中心となる薬剤はクラリスロマイシンである。しかし、同薬を単剤で投与すると、数か月以内に耐性菌が出現することが警告されており、その場合、治療が非常に困難になることから、単剤投与は絶対に行ってはならない。
イソニアジドは肺MAC症に効かない
肺MAC症に最も有効と考えられる組合せはクラリスロマイシン、 エタンブトール、リファンピシンまたはリファブチンの3薬剤併用です。
結核菌に対しては強力な薬剤であるイソニアジドやピラジナマイドは, MACに対してはあまり有効ではありません。
クラリスロマイシンの適応は、「非結核性抗酸菌症」。
イソニアジドではなくクラリスロマイシンであれば、非結核性抗酸菌症だと処方からわかる。
クラリスロマイシンとリファブチンの併用の問題点
2008年、我が国で初めてリファブチンとクラリスロマイシンに肺の非結核性抗酸菌症が、保険診療適応症として認められました。しかし, じつはこの二つの組合せはやや問題があります。クラリスロマイシンを併用するとリファブチンの血中濃度が上昇します。
リファブチンにはリファンピシンにはない副作用で目の痛みやまぶしさ、視力低下などを来す「ぶどう膜炎」が用量依存性に発生することが報告されており、2薬剤の併用でぶどう膜炎発生が多くなることが懸念されます。
このような問題に対処するため2008年10月に結核病学会と呼吸器学会共同で「肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解-2008暫定」が発表されています。その中ではリファブチンについてはリファンピシンで効果がなかったときにリファブチンを用い、その際は1日量150mgで開始し6ヶ月継続しても副作用が無ければ1日あたり300mgまで増量可能としています。
クラリスロマイシンとリファンピシンの併用
クラリスロマイシンの1日量は、400mgや600mgよりも800mgの方が治療効果が高いことが報告されている。
その理由として、リファンピシンを併用すると、チトクロームP450(CYP)3A4が誘導され、クラリスロマイシンの血中濃度が低下することが考えられる。
このため十分量のクラリスロマイシンの投与が重要となる。
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