2025年11月21日更新.2,666記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ニキビが出来たら化粧しちゃダメ?

ニキビと化粧:正しい知識で治療とQOLを両立する方法

ニキビ(尋常性ざ瘡)は思春期から青年期にかけて最も多い皮膚疾患の一つであり、患者さんの生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼします。とくに女性にとって、ニキビは見た目の悩みにつながり、化粧で隠したいと思うのは自然なことです。しかし一方で、「化粧をするとニキビが悪化するのでは?」という不安もつきまといます。

コスメティックアクネとは?

かつて「化粧はニキビの大敵」と言われた時代がありました。その根拠となったのが コスメティックアクネ(cosmetic acne)です。

これは、化粧品に含まれる成分が毛穴を塞ぎ、面皰(コメド=毛穴に皮脂や角質がつまった状態)を誘発することによって起こるニキビです。油分の多いクリームやリキッドファンデーションなどは、かつてニキビ悪化の原因とされました。

しかし近年では、面皰形成を誘発しにくいことが確認された ノンコメドジェニック化粧品 が登場し、状況は大きく変化しました。

ノンコメドジェニック化粧品とは?

「ノンコメドジェニック」とは、コメドをつくりにくい(non-comedogenic) という意味です。

試験方法
専門の試験では、皮脂腺が多い背中などに試験化粧品を繰り返し塗布し、数週間後に皮膚組織を観察します。そこでコメド形成が認められなければ「ノンコメドジェニック」と表示することができます。

ニキビ患者が化粧品を選ぶ際のポイント
・ノンコメドジェニック表示があるかどうか
・皮膚への刺激が少ないか(アルコールや香料が少ない)
・洗浄料で簡単に落とせるか(クレンジングでゴシゴシしなくても良いもの)

ガイドラインでの位置づけ

日本皮膚科学会の「尋常性痤瘡治療ガイドライン」では、メイクアップ指導について 推奨度C1(行うことを選択肢の一つとして推奨)とされています。

「ざ瘡患者にQOL改善を目的とした化粧(メイクアップ)指導を行うことを選択肢の一つとして推奨する。ただし、刺激性の少ないノンコメドジェニックな化粧品を選択するなどの配慮が必要である。」

つまり、むやみに化粧を禁止するのではなく、正しい化粧品選びと使い方をすれば、ニキビ治療を妨げることなく生活の質を高められる と考えられています。

ニキビ中に化粧はしてもいいの?

避けたい化粧品
・油性のリキッドファンデーション
・油分の多いクリームタイプの化粧品
・落ちにくいウォータープルーフ化粧品

これらは毛穴を塞ぎ、コメドを誘発する可能性が高いため、避けるのが望ましいです。

推奨される化粧品
・ノンコメドジェニック表示のある製品
・オイルフリーのリキッドやパウダーファンデーション
・色素沈着や瘢痕部位にコンシーラーを少量使い、厚塗りは避ける

ポイントメイクはOK
口紅やアイシャドウ、アイラインなどのポイントメイクは、ニキビと直接関係ないため使用可能です。顔全体を厚塗りして隠すよりも、視線をポイントメイクに誘導することで自然にカバーできます。

ニキビ患者のスキンケアとメイクの順番

スキンケアの基本
・洗顔:脂性肌用やニキビ肌用洗顔料を使って1日2回やさしく洗う。
・保湿:乾燥肌や混合肌では保湿も重要。ノンコメドジェニック保湿剤を使用。
・日焼け止め:紫外線はニキビ悪化や色素沈着を招くため必須。

メイクの順番
・洗顔 → 保湿 → 日焼け止め
・オイルフリー・ノンコメドジェニックのファンデーション
・必要に応じてコンシーラー
・仕上げにフェイスパウダーでさらっと整える

就寝前の注意点
・必ずメイクを落とす
・クレンジングは低刺激性のものを使用
・石鹸洗顔でしっかりと洗浄
・洗顔後は必ず保湿

患者指導のポイント(まとめ)

・油成分の少ない製品を選ぶ
・厚塗りせず、色でカモフラージュ
・瘢痕や色素沈着はコンシーラーで部分的にカバー
・ポイントメイクを活用して自然に視線を逸らす
・夜は必ずメイクを落として石鹸で洗顔
・洗顔後は保湿を忘れずに

ライフスタイルの重要性

・ニキビ治療においては化粧品だけでなく、生活習慣の改善も不可欠です。
・十分な睡眠をとる
・ストレスを減らす
・規則正しい食生活を心がける
・食事制限は原則不要(ピーナッツやチョコレートを制限する医学的根拠はない)
・ただし「自分で悪化因子と自覚している食品」は避ける

QOLを大切にするニキビ治療へ

ニキビ治療の目的は単に皮膚症状を改善することだけでなく、患者さんの生活の質(QOL)を向上させることにあります。
とくに女性患者にとって、メイクを楽しむことは自己表現の一部であり、社会生活を送る上で大切な要素です。

「ニキビだから化粧はダメ」と一律に禁止するのではなく、正しい知識を持って化粧を楽しみながら治療を続けることが望ましい という考え方が、近年のスタンダードになりつつあります。

まとめ

・コスメティックアクネは、化粧品による毛穴詰まりでニキビが悪化する状態。
・現在はノンコメドジェニック化粧品が普及し、適切な化粧は治療を妨げない。
・厚塗りや油分の多い製品は避け、オイルフリー・ノンコメドジェニックの化粧品を選ぶ。
・ポイントメイクは問題なく使用できる。
・夜は必ずメイクを落とし、洗顔・保湿を徹底する。
・見た目を気にして前髪で隠すよりも、正しいスキンケアとメイクでQOLを高めることが大切。

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