記事
マヴィレットはパンジェノ?
公開. 更新. 投稿者:肝炎/膵炎/胆道疾患.この記事は約3分56秒で読めます.
2,118 ビュー. カテゴリ:C型肝炎治療薬
C型肝炎の治療薬が数多く出そろってきましたが、違いがよくわからないので勉強します。
まずは、意外と浅いC型肝炎治療の歴史から。
C型肝炎治療の歴史
1989年:C型肝炎ウイルスの発見
1992年:インターフェロン療法(注射)
2001年:インターフェロン+リバビリン療法
2004年:ペグインターフェロン+リバビリン療法(注射+内服)
2011年:プロテアーゼ阻害剤+ペグインターフェロン+リバビリン療法(注射+内服)
2014年:経口抗ウイルス剤
C型肝炎治療薬の作用機序
インターフェロンを使わないインターフェロンフリーの治療が始まったのが、ダクルインザ・スンベプラが薬価収載された2014年から。
DAA治療ともいいますが、DAAとは直接作用型抗ウイルス剤(DAAs: direct acting antivirals)の略。
インターフェロンは間接的にC型肝炎ウイルスをやっつける。
DAAは直接C型肝炎ウイルスをやっつける治療法です。
HCV(C型肝炎ウイルス)が増殖するのに必要な蛋白質の働きを直接妨害するような働きを持ちます。
HCVが増殖するためには多くの蛋白質が作用しますが、その中で治療の標的になる蛋白質は主に3種類です。
これらの蛋白質は、HCV遺伝子の非構造領域(NS領域)に存在するため、頭にNSの文字が付いています。
その後ろにある数字は、NS領域をさらに細分した時にどのあたりに存在するかを意味します。
DAAの標的となるたんぱく質3種類
・NS3/4プロテアーゼ
・NS5A蛋白
・NS5Bポリメラーゼ
以下にC型肝炎治療薬と成分の作用機序を挙げる。
医薬品名 | 薬価基準収載年月 | 成分と作用機序 |
---|---|---|
ダクルインザ錠60mg・スンベプラカプセル100mg | 2014年9月 | ダクラタスビル塩酸塩(NS5A阻害剤)・アスナプレビル(NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤) |
ソバルディ・(コペガス/レベトール) | 2015年5月 | ソホスブビル(NS5Bポリメラーゼ阻害剤)・リバビリン |
ハーボニー配合錠 | 2015年8月 | レジパスビル(NS5A阻害剤)・ソホスブビル(NS5Bポリメラーゼ阻害剤) |
ヴィキラックス配合錠 | 2015年11月 | オムビタスビル水和物(NS5A阻害剤)・パリタプレビル水和物(NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤)・リトナビル |
エレルサ錠50mg・グラジナ錠50mg | 2016年11月 | エルバスビル(NS5A阻害剤)・グラゾプレビル(NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤) |
ジメンシー配合錠 | 2017年2月 | ダクラタスビル塩酸塩(NS5A阻害剤)・アスナプレビル(NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤)・ベクラブビル塩酸塩(NS5Bポリメラーゼ阻害剤) |
マヴィレット配合錠 | 2017年11月 | グレカプレビル水和物(NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤)・ピブレンタスビル(NS5A阻害剤) |
ヴィキラックスに含まれるリトナビルは、これら3種類のたんぱく質を阻害するという働きではなく、プロテアーゼ阻害薬の作用を増大させる(ブースト効果)のために配合されています。
リトナビルは肝臓の代謝酵素CYP3A4を抑制するため、CYP3A4により代謝を受けるパリタプレビルの血中濃度を高めます。
ジェノタイプとセロタイプ
ジェノタイプとセロタイプの違いは検査方法の違いです。
→セロタイプとジェノタイプの違いは?
遺伝子の塩基配列の類似性から分けられた遺伝子型をジェノタイプといいます。
HCVの塩基配列の違いから作られる蛋白質も異なり、それに対する抗体の違いから分別する方法がセロタイプです。
ジェノタイプ検査は遺伝子検査で保険未収載のため、通常はHCVセロタイプ検査が利用されています。
ジェノタイプとセログループは90%以上の一致率なので、セロタイプ1ならジェノタイプ1だろうということになる。
それぞれの適応症と治療期間を比較する。
医薬品名 | 薬価基準収載年月 | 適応症 | 治療期間 |
---|---|---|---|
ダクルインザ錠60mg・スンベプラカプセル100mg | 2014年9月 | GT1(C型慢性肝炎、C型代償性肝硬変) | 24週間 |
ソバルディ・(コペガス/レベトール) | 2015年5月 | GT2(C型慢性肝炎、C型代償性肝硬変) | 12週間 |
2015年5月 | GT3~GT6(C型慢性肝炎、C型代償性肝硬変) | 24週間 | |
ハーボニー配合錠 | 2015年8月 | GT1(C型慢性肝炎、C型代償性肝硬変) | 12週間 |
ヴィキラックス配合錠 | 2015年11月 | GT1(C型慢性肝炎、C型代償性肝硬変) | 12週間 |
ヴィキラックス配合錠・(コペガス/レベトール) | 2015年11月 | GT2(C型慢性肝炎) | 16週間 |
エレルサ錠50mg・グラジナ錠50mg | 2016年11月 | GT1(C型慢性肝炎、C型代償性肝硬変) | 12週間 |
ジメンシー配合錠 | 2017年2月 | GT1(C型慢性肝炎、C型代償性肝硬変) | 12週間 |
マヴィレット配合錠 | 2017年11月 | GT1/GT2(C型慢性肝炎) | 8週間 |
2017年11月 | GT1/GT2(C型代償性肝硬変) | 12週間 | |
2017年11月 | GT3~GT6(C型慢性肝炎、C型代償性肝硬変) | 12週間 |
主要なジェノタイプにはGT1~GT6までありますが、日本人の多くは1b型で約70%、2a型が20%、2b型が10%程度となっている。
タイプにより投与期間が異なる薬もあるので、服用開始時に患者にジェノタイプ何型かを確認する。
C型肝炎治療薬の薬価比較
医薬品名 | 治療期間 | 総投与量 | 薬価(2017年11月) | 総薬価 |
---|---|---|---|---|
ダクルインザ錠60mg・スンベプラカプセル100mg | 24週間 | 168錠(ダクルインザ)、168個(スンベプラ) | 7902.9円(ダクルインザ)、2847.4円(スンベプラ) | 1806050.4円 |
ソバルディ・(コペガス/レベトール) | 12週間 | 84錠(ソバルディ) | 42239.6円(ソバルディ)、789.2円(コペガス)、580.1円(レベトール) | 3548126.4円(ソバルディのみ) |
24週間 | 168錠(ソバルディ) | 42239.6円(ソバルディ)、789.2円(コペガス)、580.1円(レベトール) | 7096252.8円(ソバルディのみ) | |
ハーボニー配合錠 | 12週間 | 84錠 | 54796.9円 | 4602939.6円 |
ヴィキラックス配合錠 | 12週間 | 168錠 | 23057.5円 | 3873660円 |
ヴィキラックス配合錠・(コペガス/レベトール) | 16週間 | 224錠 | 23057.5円 | 5164880円(ヴィキラックスのみ) |
エレルサ錠50mg・グラジナ錠50mg | 12週間 | 84錠(エレルサ)、168錠(グラジナ) | 26900.5円(エレルサ)、9607.3円(グラジナ) | 3873668.4円 |
ジメンシー配合錠 | 12週間 | 336錠 | 11528.8円 | 3873676.8円 |
マヴィレット配合錠 | 8週間 | 168錠 | 24210.4円 | 4067347.2円 |
12週間 | 252錠 | 24210.4円 | 6101020.8円 |
C型肝炎の治療薬はバカ高いので、助成を受けることができる。
1か月2万円
1か月1万円
治療期間が短いほど、患者負担は少なく済むわけだ。
その点では今度薬価収載されるマヴィレットが8週間の治療で済むというのは、患者的にはメリットである。国としてはデメリットかも知れないが。
パンジェノ型リバビリンフリーDAA製剤
マヴィレットは本邦初、パンジェノ型リバビリンフリーDAA製剤です。
パンジェノ型というのは、全てのジェノタイプに効果があるという意味だそうな。
リバビリンフリーというのは、リバビリンを使わないという意味ですが、DAA製剤でリバビリンを使うのはソバルディだけなので、それ以外は全部リバビリンフリーということになる。
これからまだ「パンジェノ型リバビリンフリーDAA製剤」は出てくるのだろうか?
そろそろC型肝炎駆逐されそうな気もしますが。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。
2 件のコメント
ヴィキラックスを飲んでた方がいましたが、ジェノタイプ2だとリバビリンが必要だったと思います。
コメントありがとうございます。
ご指摘いただき助かります。私の薬局で応需している医療機関だとジェノタイプ2の患者さんは、ソバルディ+リバビリンで来るので、ヴィキラックスよく知りませんでした。