更新日:2016年12月31日.全記事数:3,091件

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禁煙してはいけない薬?


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テオフィリン服用中の禁煙

タバコと相互作用のある薬があります。
タバコは肝薬物代謝酵素を誘導するため、薬の代謝が進みます。

たばこの煙に含まれる種々の多環芳香族炭化水素は、薬物代謝酵素チトクロームP450 (CYP) 1A2 の発現を誘導するため、喫煙者はCYP1A2 による代謝が高まった状態にある。
つまり喫煙者が禁煙すると、CYP1A2の誘導が解除され、CYP1A2 により代謝される薬剤を服用している患者では用量を調整しなければ、薬剤の血中濃度が上昇し、副作用が発生する可能性がある。

タバコとの相互作用でよく知られているのは、喘息治療に用いるテオフィリンです。

テオフィリンCYP1A2 により代謝される。
CYP1A2が喫煙により誘導されている中で禁煙することで、テオフィリンが過量投与状態となり、副作用の痙攣を来すと考えられる。
禁煙により酵素活性が徐々に低下するのに合わせて、テオフィリンの投与量を減量しなければ、血中テオフィリン濃度が上昇する。

喫煙者は非喫煙者に比べてクリアランスが1.5~2倍上昇するといわれている。そのため、喫煙するとテオフィリンの血中濃度は低下する。
これは、喫煙によりテオフィリンの主要代謝酵素であるCYP1A2が誘導されるためである。
タバコの煙に含まれるベンズピレンは肝薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)1A2を誘導することが知られている。

逆に、テオフィリン濃度が治療域に維持されていた喫煙者が禁煙すると、薬物代謝酵素が元の状態に戻りテオフィリン中毒になる可能性がある。
常に喫煙している常用者に対して、医師は血中濃度がなかなか上がらないため薬の投与量を増やしていきます。
そして高用量でコントロールされます。そして急に禁煙すると、今まで飲んでいた薬の血中濃度が急に高くなり副作用が発現するというわけです。

一般に非喫煙者の投与量は喫煙者の1/2~2/3といわれます。
禁煙によって血中濃度が喫煙時の1.5~2倍上昇します。
禁煙の際は、テオフィリンを30%以上減量する必要があるとされます。

禁煙補助薬のニコレットやニコチネルTTSの主成分はニコチンで、同様にCYP1A2を誘導するため禁煙時の注意が必要である。

さらに、キサンチン系薬物を配合しているOTC医薬品や、同じくキサンチン系薬物であるカフェインを含む飲料の摂取により、相加的にテオフィリンの作用が増強される。

喘息患者は禁煙が指導されることが多いので、注意が必要です。
禁煙してはいけないということではありませんが、薬の減量などを考えながら医師と相談の上行うべきでしょう。

未成年の喫煙

一般に、未成年はたばこを吸っていないと思い込みがちですが、患者が喫煙している、あるいは将来喫煙する可能性も念頭に置かなくてはならない。
喫煙は喘息の症状を悪化させることを説明し、その上で、患者に喫煙と相互作用を起こす恐れがある薬剤を交付する際には、相互作用についての注意点を忠者に説明すべきである。

タバコにより代謝が速まる薬

喫煙により肝薬物代謝酵素であるCYP1A2が誘導されます。
したがって、CYP1A2で代謝される医薬品を服用している患者がタバコを吸うと血中濃度が低下するおそれがあります。

主にCYP1A2で代謝されるテオドール錠(テオフィリン)の全身クリアランスは、喫煙によって増大し、血中濃度半減期は短くなります。
一方、禁煙すると、誘導されたCYP1A2活性が非喫煙時の状態まで回復しますので、喫煙中に比ベクリアランスが低下します。

禁煙によるCYP1A2活性の回復は、少なくとも1週問以上(数力月から2年ほどという報告もある) かかるので、テオドールを使用している喫煙患者が禁煙した際には、急激に減量を行うのではなく血中濃度をモニタリングしながら漸減する必要があります。

その他、禁煙に注意が必要な薬剤には、クロザリル(クロザピン)、ジプレキサ(オランザピン)、タルセバ(エルロチニブ)があり、喫煙者ではいずれもCYP1A2の誘導によって代謝が促進されています。
ノービア(リトナビル)も喫煙者でAUCが減少するおそれがありますが、その機序は明らかになっていません。

タバコと代謝酵素

喫煙によって、肝薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)1A1、CYP1A2、CYP2E1が誘導されることがわかっています。

中でも、多くの医薬品成分の代謝に関わっているCYP1A2の誘導作用は臨床上問題となります。

CYP1A2で主に代謝される薬剤を服用している患者がタバコを吸うと、血中濃度が低下します。

逆に、禁煙すると代謝酵素の誘導が消失するために、喫煙中よりも薬物の代謝速度が低下します。

禁煙した患者が、喫煙していたころと同じ量の薬剤を服用し続ければ、未代謝物の血中濃度が上昇し、薬効が増強したり、代謝物が主たる薬効成分の場合は薬効が減弱する、ということになります。

禁煙後、酵素誘導が消失するまでの期間については、個人差が非常に大きく、1週間程度から約2年までと、かなり幅があります。

喫煙習慣に伴うCYP1A2の発現誘導によって薬効が減弱する薬剤としては、オランザピンテオフィリン以外に、クロザピン(クロザリル) 、フルボキサミンマレイン酸塩(デプロメールルボックス) 、チザニジン塩酸塩(テルネリン) などが挙げられる。

ジプレキサとタバコの影響

ジプレキサなどの主としてCYP1A2により代謝される薬剤は、喫煙によって薬効が低下することが知られている。
タバコの煙に含まれている種々の多環芳香族炭化水素の肝臓への作用によってCYP1A2が誘導されるためで、喫煙習慣は、これらの薬剤の代謝が亢進しているため、薬効が減弱する。

ジプレキサの添付文書によると、喫煙はCYP1A2を誘導することにより、オランザピンのクリアランスを増加させ、血中濃度を低下させる。
オランザピンを服用している喫煙者が禁煙すると、喫煙により起こっているCYP1A2 の誘導が解除されるので、代謝能が徐々に低下し、オランザピンの血中濃度が上昇して、過量投与状態となる。
喫煙することで代謝速度が35%上昇するとの報告がある。
したがって、禁煙により酵素誘導が解除されて代謝能が低下した場合、禁煙前の投与量では過剰投与となると考えられる。

過量投与による錐体外路症状として、アカシジア(足がむずむずして長時間座れないなど)、振戦、筋強剛、流涎、パーキンソン病徴候、ジスキネジア( 顔の筋肉や囗の周りが不随意に勣くなど)、歩行異常、嚥下障害、眼球挙上などの副作用が起こる可能性が指摘されている。
一方で、血中濃度の上昇が功を奏して、治療効果が高まる場合もある。

オランザピンを服用する喫煙者には、禁煙によって薬物の作用が高まることを事前に説明し、禁煙を始める前にその旨を医師に必ず伝えるよう指導する必要がある。
また、患者が禁煙することを薬局で把握した場合は、そのことを把握しているかどうか、医師に確認するようにしたい。

喫煙健常者と非喫煙健常者にオランザピンを経口投与した後の薬物血中濃度時間曲線下面積(AUC) と投与量の関係では、喫煙者は非喫煙者に比較して、オランザピンのクリアランスが58~92%増加する。

クロザリルとタバコの影響

程度には個人差があるようだが、喫煙により血中濃度が上昇するリスクがある。

タルセバとタバコの影響

喫煙により血中濃度曲線下面積(AUC)が64%減少するという報告がある。

インスリンとタバコの影響

インスリンは、タバコを吸う本数が多い患者は、非喫煙者と比較して必要量が15~30%多くなるとの報告がある。

禁煙時の用量調節法

CYP1A2 により代謝される薬剤を服用している患者が禁煙する際には、用量をどのように調節すべきか。
喫煙や禁煙によって、どのような時間経過でCYP1A2活性が変化するのかは明らかでないが、多環芳香族炭化水素の肝臓への作用は3~6時間以内に起こり、24 時間以内にピークに達することが報告されている。
CYPを誘導する化合物としては、多環芳香族炭化水素のほかにも、抗結核薬のリファンピシン(リファジン)、抗てんかん薬のフェノバルビタールやカルバマゼピン(テグレトール)などがある。
酵素誘導までの日数として、リファンピシンで2日、フェノバルビタールで7日、カルバマゼピンで2週間掛かるとの報告がある。

これらに比べると、多環芳香族炭化水素による酵素誘導は、比較的早いことが分かる。
一方、禁煙した場合にCYP1A2活性が非喫煙状態に戻るのに要する期間は、薬剤の種類ごとに異なる。
例えば、クロザピンでは、5年間にわたって1.5箱/日の喫煙を行っていた患者が禁煙したところ、3週間経過後にクロザピンの副作用である大発作痙攣が出現したとの報告がある。
テオフィリンに関しては、3ヵ月~2年の幅があるという報告もある。

さらに、同じ種類の薬剤であっても、酵素誘導の持続時間には個人差がある。
これは、たばこの種類や喫煙量、年齢や合併症、併用薬物など様々な変動要因があることに加え、酵素誘導の程度に個人差があるためと考えられている。
禁煙時に用量の調節を図る場合、酵素誘導の程度や持続期問の予測を基にスケジュールを立てることになるが、前述のような様々な要因により個人差が出るため、容易ではないと思われる。

参考資料:参考書籍:日本薬剤師会雑誌2012.1、クレデンシャル2013.10、日経DI2015.11

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