2025年7月11日更新.2,514記事.

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ザイロリックとテオドールを併用しちゃダメ?

ザイロリック(アロプリノール)とテオドール(テオフィリン)は一緒に飲んでも大丈夫?

高尿酸血症治療薬のザイロリック(一般名:アロプリノール)と、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に使われるテオドール(一般名:テオフィリン)を併用すると、テオフィリン中毒のリスクが高まる可能性があります。

添付文書には具体的に次のような相互作用(飲み合わせによる影響)が記載されています。

キサンチン系薬剤(テオフィリン等)
臨床症状・措置方法:キサンチン系薬剤(テオフィリン等)の血中濃度が上昇する。
投与量に注意すること。
機序・危険因子:本剤がテオフィリンの代謝酵素であるキサンチンオキシダーゼを阻害するため、テオフィリンの血中濃度が上昇すると報告されている。

つまり、ザイロリックを併用することで、テオフィリンが体内に長く残ってしまうのです。

・どうして併用で問題が起きるのか
・他の尿酸降下薬(フェブリクやウリアデックなど)との違い
・テオフィリン中毒の症状
・実際にどう注意すればいいか

を勉強します。

ザイロリック(アロプリノール)の作用機序と特徴

まずザイロリックについて簡単に整理しましょう。

ザイロリックはキサンチンオキシダーゼ阻害薬に分類されます。

◆ キサンチンオキシダーゼとは?
尿酸はプリン体の最終代謝産物です。プリン体が分解される過程で、キサンチンオキシダーゼという酵素がキサンチン→尿酸へ変換します。

ザイロリックはこの酵素を阻害し、
・尿酸の産生を抑える
・尿酸値を下げる
作用を持ちます。

高尿酸血症や痛風の治療では長年使われてきた薬で、後発医薬品(ジェネリック)も多く、処方頻度が高いのが特徴です。

テオドール(テオフィリン)の作用機序と特徴

テオドールはキサンチン誘導体です。

キサンチン誘導体とは、
・キサンチン(プリン体の中間代謝物)から合成される化合物
を指します。

テオフィリンは気管支平滑筋を弛緩させる作用があり、慢性の呼吸器疾患に使われます。血中濃度の管理が非常に重要で、

有効域と中毒域の幅が狭い(治療域が狭い)
ため、少しの濃度上昇でも副作用が出やすい薬です。

併用で起きる問題:テオフィリンの代謝阻害

ザイロリックはキサンチンオキシダーゼを阻害します。
一方、テオフィリンは代謝の一部でこの酵素を使います。

ザイロリックを服用すると、
・テオフィリンの代謝が遅れる
・血中濃度が上がる
・半減期が延長する
ことが確認されています。

実際のデータでは、
・血中濃度および半減期が1.4~2.5倍に上昇
・クリアランスが約30~60%低下
すると報告されています。

つまり、
「普段と同じ量を飲んでいても、体に残るテオフィリンが増えてしまう」
ため、中毒症状が出るリスクが高くなります。

テオフィリン中毒の症状は?

テオフィリン血中濃度が上がりすぎると、
・消化器症状(吐き気、嘔吐、下痢)
・頭痛、不眠、神経過敏
・頻脈や不整脈
・けいれん
などが起こります。

特に高齢者や腎機能低下がある方では、中毒リスクが高いため注意が必要です。

他の尿酸降下薬との違い:フェブリクやウリアデックは?

近年は、アロプリノール以外の尿酸降下薬も増えています。

代表的なのは、
・フェブリク(フェブキソスタット)
・ウリアデック/トピロリック(トピロキソスタット)
です。

これらもキサンチンオキシダーゼ阻害薬ですが、添付文書上の相互作用の記載は異なります。

フェブリクの添付文書
「キサンチン系薬剤(テオフィリン等)」との相互作用について記載はありません。

ウリアデック/トピロリックの添付文書
「キサンチン系薬剤」の血中濃度上昇の記載があります。

同じ作用機序の薬でも記載が違う理由は、添付文書の作成時の臨床試験データの有無や、相互作用の影響の程度による可能性が考えられます。

そのため、
「フェブリクなら安全だからテオドールと気にせず併用できる」
と安易に判断しない方が良いでしょう。
実際の処方では医師と相談の上、血中濃度モニタリングを推奨します。

実臨床でのポイント:併用する場合の注意

もしザイロリックとテオドールを併用する場合、
・テオフィリンの投与量を減らす検討
・血中濃度を定期的に測定
・中毒症状の有無をモニタリング
が大切です。

特に、退院後や別の医療機関から処方が出る場合は注意が必要です。

たとえば、
・内科でザイロリックが処方
・呼吸器内科でテオドールが処方

といったケースでは、お薬手帳を確認しないと相互作用が見落とされる可能性があります。

よくある質問(Q&A)

Q. ザイロリックを飲んでいる人はテオドールを完全に禁止すべき?
A. 禁止ではありませんが、用量調整と血中濃度の管理が必須です。医師の指示を守ってください。

Q. フェブリクならテオフィリンとの相互作用はない?
A. 添付文書には記載がありませんが、同じキサンチンオキシダーゼ阻害薬です。念のため血中濃度モニタリングが推奨されます。

Q. 具体的にどのくらい血中濃度が上がる?
A. 報告によると、
・半減期1.4~2.5倍
・クリアランス30~60%低下
とされています。

まとめ:併用するなら必ず相談とモニタリングを

ザイロリック(アロプリノール)とテオドール(テオフィリン)の併用は、
・テオフィリンの血中濃度上昇
・中毒症状のリスク増加
を引き起こす可能性があります。

併用する場合は、用量調整や血中濃度モニタリングを徹底し、必ず主治医・薬剤師に相談しましょう。

「同じ薬をずっと飲んでいるから大丈夫」「別の科の薬だから問題ないだろう」という思い込みが、思わぬ副作用につながることがあります。

お薬手帳を活用し、服用薬を正確に共有する習慣がとても大切です。

1 件のコメント

  • 通りすがりの薬剤素人 のコメント
         

    トピロキソスタットは、アロプリノールとフェブキソスタットのハイブリッドの効果があり、そのハイブリッドのキサンチンオキシダーゼを阻害の作用側が影響して相互作用が出て来るようですよ
    そこがトピロキソスタットでは相互作用が出て、フェブキソスタットでは相互作用が出ない原因のようです

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