2024年4月17日更新.2,754記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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当帰芍薬散と加味逍遥散と桂枝茯苓丸の使い分け

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女性3大処方

女性に用いられる漢方処方としては、一般に3大処方といわれる当帰芍薬散・加味逍遥散・桂枝茯苓丸が代表的なものであり、この3種類の使い分けができるだけでもかなりの有効性を得ることができる。

漢方医学的には水毒と血虚があれば当帰芍薬散、気逆があれば加味逍遥散、お血があれば桂枝茯苓丸ということになるが、専門家でないとそのキーワードだけで使い分けるのは困難であると考えられる。

そこで、それぞれに特徴的な使い方をあげてみると、

①当帰芍薬散:竹久夢二の美人画に出てくるような色白で虚弱そうな美人(当芍美人)。むくみやすく、胃下垂があることが多い。

②加味逍遥散:冷えのぼせがあり、更年期症候群、あるいは自分は更年期症候群だと訴えるような愁訴の多い人(不定愁訴)。

③桂枝茯苓丸:比較的しっかりした体格の人で、月経困難症やにきびがある場合。

当帰芍薬散

虚弱な女性のさまざまな症状に用いることができる。

はかなげな感じの美人が多いといわれている。

代表的な疾患は、月経不順、月経困難症、貧血、冷え症、めまいなどである。

水毒があるために皮膚の張りがあり、年齢より若くみられることが多い。

ほっそりしているが、むくみやすいので足首は引き締まっていないことが多い。

水毒と虚血の処方であるために、その2つの所見がみられる。

水毒の兆候として、むくみ、めまいや耳鳴り、頭重、尿量の減少などがみられる。

筋肉が柔らかいのもこのタイプの水毒の特徴の一つといわれている。

血虚があるために、顔色が青白くなったり、貧血やめまいを起こしやすかったりする。

いずれの症状でも体の出やすいため、疲れやすいと訴えることがある。

もともとは婦人の妊娠時の腹痛の薬であり、安胎の薬として知られ、妊娠高血圧症候群の予防や治療にも用いられる。

加味逍遥散

更年期症候群の代表的な処方として有名であり、不定愁訴に対する頻用処方である。

更年期症候群において考える必要があるのがホルモン補充療法(HRT)との使い分けである。

一般にホットフラッシュなどの血管運動神経系障害による症状が主であればHRTの有用性が高いと考えられ、愁訴も多く加味逍遥散の適応になりやすい。

更年期でよくみられる症状は漢方でいう気逆の所見とよく一致するため、気逆の処方である加味逍遥散を用いる。

気逆処方には他にもあるが、貧血や月経困難、冷えのぼせ(頭はのぼせるのに足は冷える)、抑うつなどの精神症状にも幅広く用いられるのが加味逍遥散で更年期では最も力を発揮する処方である。

このように漢方では心と体の問題は一緒に考える「心身一如」という考え方がある。

この処方以外でも香蘇散や半夏厚朴湯をはじめとした抑うつやストレスに効く処方も多く、副作用も少ないため、外来での使用が容易である。

特に、香蘇散は悪阻にも使用する処方で、妊娠中の抑うつ状態にも使用できる。

桂枝茯苓丸

瘀血の代表的な治療薬である。

瘀血の瘀が、やまいだれの中に於いてという字を書くことからもわかるように、そこに血の滞りがることを示している。

過多月経や月経困難症、子宮内膜症ではまさに血の滞りがあり、この処方のよい適応である。

そう考えると、女性の疾患ならばなんにでも応用できそうに感じてしまうが、目安としては当帰芍薬散(華奢な体格・むくみなど)や加味逍遥散(不定愁訴)を除外できるときには使ってみるとよい。

肩こりやにきびに応用できることでも知られているが、瘀血があることが条件になるので、「月経困難症などに伴う」という条件がつけば使いやすい。

にきびに対しては、一般的に用いられる清上防風湯や、口唇周囲にできる場合の半夏瀉心湯などもあるので、病名だけで投与するのは難しい。

もちろん漢方医学的所見をとれば瘀血があるかどうか、知ることができる。

具体的には、下腹部の圧痛(特にへその下あたり、患者自身に触ってもらい、教えてもらうことができる)、舌診では舌色の暗紅、紫、そして瘀斑などということになる。

瘀血を「血の滞り」と考えると、打撲や骨折、ぎっくり腰なども瘀血に含まれるので、この処方の対象になる。

打撲に対しては治打撲一方という処方もあるが、手に入りにくいので、桂枝茯苓丸で代用することもできる。

骨折に対してギプス固定を行ったときの末梢の浮腫にも有効である。

また、桂枝茯苓丸は別名「催生湯」ともいわれ、子宮筋の緊張を促す可能性があることから、妊娠中は禁忌である。

参考書籍:調剤と情報2011.12

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薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

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本の紹介

yakuzaic
yakuzaic/著
2023年09月14日発売

プロフィール

yakuzaic
名前:yakuzaic
職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
座右の銘:習うより慣れろ。学ぶより真似ろ。
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