更新日:2016年12月31日.全記事数:3,117件.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたい。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

記事

テグレトールで音感が狂う?


スポンサードリンク

テグレトールで聴覚異常?

聴覚異常の副作用のある薬は結構多いです。
その中でも、テグレトール(カルバマゼピン)による聴覚異常は有名です。

耳鳴り、聴力低下、聴覚過敏、音程変化などの副作用が報告されており、とりわけ半音低下の聴覚異常の報告が多いです。
報告症例の多くはピアノなどの楽器を演奏しており、絶対音感を有していました。

カルバマゼピンの音程変化のメカニズムは明らかにされていませんが、大脳辺縁系に作用して知覚面での失調を来す、あるいは、内耳の蝸牛に含まれる音の感受器官であるコルチ器官を障害するといった説があります。

高齢者に聴覚異常の副作用が出たとしても、「年のせい」として気にされない可能性もある。
またミュージシャンにテグレトールを使うときには要注意です。

聴覚障害を起こす薬は?

薬剤による聴覚障害は、①内耳障害②聴覚神経伝達障害③二次的な聴覚障害④その他-に大別される。

「第八脳神経障害」というような表現をすることもあるが、実際には神経より先に、前庭、骨半規管、蝸牛に対する障害が起こっている。

内耳障害を起こす薬

内耳障害には、有毛細胞の変性や脱落、消失などによって起こるものと、蝸牛のリンパ液の分泌や組成への影響によって起こるものがある。

アミノグリコシド系抗菌薬、フロセミドラシックス)、白金製剤などが、その原因物質として知られている。

アミノグリコシド系抗菌薬は、内耳の有毛細胞のリン脂質に強い親和性を持ち、有毛細胞を傷害して、不可逆的な変異と萎縮をもたらすとされている。
実際、この副作用は不可逆であることが多い。
遺伝的素因があることも知られており、使用に際しては家族歴を確認することが有用である。
アミノグリコシド系抗菌薬が配合された点耳液にも注意が必要である。

フロセミドなどのループ利尿薬は、内耳の蝸牛にある血管条という器官(リンパ液の分泌吸収やイオン勾配を制御している)に障害を起こす。
ループ利尿薬は腎臓でナトリウムや水の再吸収を阻害して利尿作用を発揮するが、同じ作用が蝸牛のリンパ液でも起こり、組成が変化し、電位が低下して聴覚障害を起こす。
この障害は可逆的で、薬剤を中止すれば回復する。

シスプラチンやカルボプラチンなどの白金製剤は、リン脂質の過酸化やNOの産生によって有毛細胞をアポトーシスに至らしめるなどの機序で、血管条を傷害すると考えられている。

アスピリンによる難聴は古くから知られている。
アスピリンは、代謝されてサリチル酸になるが、そのサリチル酸が難聴の原因と考えられている。
シクロオキシゲナーゼ阻害による脂肪酸代謝障害が原因か、血流障害によるものかははっきりしていないが、この難聴は一過性であり、組織障害は認められない。

インターフェロンでも感音性難聴が見られる。
聴力検査を行えば、4割近くの患者に聴力障害が見られるとの報告もある。
有毛細胞への直接毒性が原因と考えられているが、中止で軽快することが多い。

そのほか、非イオン性のヨード造影剤でも聴覚障害が起こることが知られている。
浸透圧利尿作用により尿量が増加するため、循環血液量の減少を来たし、蝸牛の虚血が起こるのではないかと考えられている。

聴覚神経伝達系障害を起こす薬

聴覚神経伝達系の異常では、難聴の他に、音程やリズムがおかしく聞こえる症状も出現し得る。

その原因薬としては、カルバマゼピンテグレトール)がよく知られている。
音程が半音から1音低く認識されるケースが多く、絶対音感を持っている人や女性に多いのが特徴とされる。
機序ははっきりとは分かっていないが、側頭葉への直接的な影響や大脳辺縁系の知覚面での失調が原因と考えられている。
血中濃度が治療域か、上限程度で起こり、血中濃度が低下すると消失することが多い。

同じような現象は咳止めとして使用されるベンプロペリンリン酸塩(フラベリック)でも多数報告されている。

二次的に聴覚障害を起こす薬

二次的な聴覚障害として、プロピルチオウラシル(プロパジール、チウラジール)などによる抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎が原因と考えられている難聴がある。
ANCA関連血管炎は、腎臓や肺の血管障害が主であるが、鼻、眼、耳の血管にも症状が出現する。

また、インスリンの使用で血糖値のコントロールが急激に良くなった場合にも耳鳴りが起こることが報告されている。
血糖コントロールの正常化で相対的な低血糖状態が起こることや、低血糖状態に反応してアドレナリンが分泌され、交感神経が興奮して血管収縮が起こり、虚血状態となることなどが原因と推測されている。
従って、経口血糖降下薬や降圧薬の服用で、一時的な低血糖や循環血液量の減少が起こった場合も、耳鳴りが起こる得る。

また、β刺激薬などの交感神経刺激薬でも耳鳴りが起こることがある。

他に二次的な聴覚障害として、生物学的製剤の使用によって免疫が低下し、帯状疱疹ウイルスが活性化して多発性脳神経障害を呈する耳性帯状疱疹が発現し、難聴が現れる例などが、最近報告されている。
もともと、先天性の難聴やメニエール病などの内耳障害を持っている患者、高齢者、小児、腎障害、を持っている患者では、二次的な聴覚障害が起こりやすいと考えられるので、より注意が必要である。

聴覚障害に注意する薬一覧

薬効分類医薬品名
抗生物質製剤塩酸バンコマイシン,アミノグリコシド系,マクロライド系
キサンチン系製剤アミノフィリン,安息香酸ナトリウムカフェイン,カフェイン
解熱消炎鎮痛薬サリチル酸製剤(アスピリン,エテンザミド),ロルノキシカム,プロピオン酸系(フルルビプロフェン,プラノプロフェン,オキサプロジン)
ループ利尿薬フロセミド
α1,β-遮断薬塩酸アモスラロール
AT1受容体拮抗薬テルミサルタン
骨粗鬆症治療薬活性型ビタミンD3製剤(アルファカルシドール)
催眠鎮静・抗不安薬フルニトラゼパム
精神神経治療薬塩酸チアプリド,マレイン酸フルボキサミン,塩酸ミルナシプラン,クロチアゼパム
抗パーキンソン剤レボドパ,メシル酸ブロモクリプチン
抗ヒスタミン剤マレイン酸クロルフェニラミン,塩酸プロメタジン,ロラタジン
免疫抑制薬シクロスポリン
抗悪性腫瘍薬塩酸ゲムシタビン,シスプラチン,インターロイキン-2製剤
C型肝炎治療薬インターフェロン製剤,リバビリン
非イオン性造影剤イオベルソール
抗原虫薬塩酸キニーネ
局所麻酔薬塩酸ロピバカイン
子宮内膜症治療薬酢酸ナファレリン

男性化で聴覚障害?

聴覚の障害ではなく、声が低くなることで、音程が低く聞こえることがある。
声の低温化は、女性に蛋白同化ステロイド剤や男性ホルモン剤などが投与された場合などに、いわゆる男性化現象として起こることがある。

プリモボランで声変わり?

プリモボランという男性ホルモン剤があります。
蛋白同化ステロイドです。
再生不良性貧血に使われたりするようですが、あまり馴染みのある薬ではない。

プリモボランの添付文書を読むと、使用上の注意に、

1. 男性に投与する場合は,定期的に前立腺の検査を行うこと.
2. 女性に投与する場合は,変声の可能性のあることを告げておくこと.

と書かれている。

男性に投与する場合は、男性ホルモン依存性の前立腺癌のリスクが高まるので、定期的な前立腺の検査が必要。

で、それに比べて女性に投与する場合は、「変声の可能性のあることを告げておく」っていうのが、そこまで注意喚起することか?前立腺癌と並べて太字で書くことか?と思ってしまいますが、女性にとって声は大事なのだろう。

副作用の項目には、女性の副作用と男性の副作用がそれぞれ書かれていますが、

その他注)女性頻度不明 嗄声(進行すると回復困難な場合がある.通常,月経異常が先発する例が多いとの報告がある.),多毛,ざ瘡,色素沈着,月経異常,陰核肥大,性欲亢進
その他注)男性頻度不明 ざ瘡,陰茎肥大,陰萎,持続性勃起,大量継続投与による精子減少・精液減少等の睾丸機能抑制

注)投与を中止すること.

これらの副作用が見られたら、投与を中止しなければならない。

ラミシールで聴覚障害?

ラミシールの副作用に「聴覚障害、聴力低下」という記載がある。
聴覚障害や聴力低下が発症するメカニズムは明らかになっていない。

テルビナフィンが真菌を抑制する作用が蝸牛コレステロールレベルの減少や蝸牛機能の低下を引き起こすことで、聴覚障害の症状が出ていると推測されている。
水虫のミュージシャンは要注意ですね。

フラベリックと音感異常

咳止めのフラベリックでも頻度不明の副作用として「聴覚異常(音感の変化等)」というのがある。

 咳止め薬として使用されるフラベリック錠(成分リン酸ベンプロベリン)による聴覚障害が、当モニターに4件報告されています。2006年に、当欄でカルバマゼピンについて同様の報告をしましたが、以降、カルバマゼピンでも2例報告されています。添付文書に記載されている副作用ですが、「聴覚障害」としか書かれていないため、どのような障害なのか具体的な症状がわかりません。今回の症例からは、その特徴が見えてきます。
 いずれの場合も、「半音下がって聞こえる」と、音程の低下の程度が揃っています。服用中止後、すぐに改善する傾向がありますが、長い人は2週間程度かかるとの報告もあります。この副作用は絶対音感を持つ人だけでなく、日常生活の中でも電話の音や呼び鈴の音など、すべてが半音下がって聞こえるという状態になるため、比較的はっきりわかるといえます。音に関係する仕事をしている人がこの副作用に遭遇すると非常に困ります。
 フラベリック錠は感冒による咳症状の緩和に用いられるため、おおむね短期間で服用が終わってしまいます。「風邪のせいで音が変に聞こえるようになった」とか「気のせい」「思い過ごし」などと済ませてしまって、見逃されている疑いもあります。
 同様の報告があったカルバマゼピンは、注意力を低下させる、周囲への関心を減らす、という作用から、「気がつかないし気にしない」という状態になっていて、訴えにつながらない可能性もあります。
 にわかに信じがたい内容ですが、このような訴えにも耳を傾け、先入観を捨てて副作用を疑ってみてください。副作用モニター情報:【364】フラベリック錠 音が半音下がって聞こえる副作用について

音楽系の仕事をしている人は要注意ですね。

しかし、薬のせいなのか、風邪をひいているせいなのか、原因はわかりにくいだろう。

参考書籍:日経DI2012.2

スポンサードリンク

コメント

  1. フラベリック、twitterで検索すると毎日のように被害者がいて
    決してマイナーな事象ではないので音楽界、医師薬剤師
    でもっと知られて欲しい副作用です

    そしてPL配合顆粒でも半音下げの副作用が出る人がいる
    (ネット体験談のみ)のですがこちらはジェネリックがたくさん
    あるので一般の人にはPLにも注意だけでは不十分で
    処方されないようにお薬手帳に書いておけというのが精一杯です

    ひろや:2014/6/7

コメントを書く

カテゴリ

プロフィール

IMG_0670
名前:yakuzaic
職業:管理薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
勤務地:さくらんぼ県
好きな言葉:「三流の自覚持って社会人失格の自覚持ってプロの仕事しましょう」
follow us in feedly

人気の記事

最新の記事

ランダム記事

検索

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

お気に入りリンク

添付文書(PMDA)
Mindsガイドラインライブラリ
健康食品の安全性・有効性情報
管理薬剤師.com
DIオンライン