更新日:2017年10月24日.全記事数:3,169件.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたい。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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妊婦に禁忌の薬一覧


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妊娠中は薬を使っちゃダメ?

妊娠中はいかなる薬剤も使用しないことが胎児にとってもよいことと思われがちであるが、妊娠中であっても本人の苦痛となる症状は除いたほうがよいし、基礎疾患がある場合などは、薬剤を使用することが胎児の環境をより良くする場合も多い。

一方、てんかんなど小児期に発症した疾患では、疾患がコントロールされていればそのままの薬剤が長期にわたり(漫然と)投与されていることがあるが、妊娠可能年齢では、本人の挙児希望の有無にかかわらず減量や中止、より安全性の高いとされる薬剤への変更の可能性を検討したほうがよい。

①胎児に対する薬剤の影響は妊娠週数によって異なるが、投与すべきでない薬剤は限られている。妊婦に合併症がある場合は、その治療を優先する。
②添付文書の情報は薬剤の危険度を必ずしも表していないので、解釈には注意を要する。
③妊婦に薬剤の危険性の説明をするときは、一般集団と比較してどれくらいのリスクがあるかを話す。

妊娠の多くは偶発的である。
また、妊婦は児に対して100%の安全を求めることが多いが、新生児の2~4%は何らかの異常をもって生まれてくる。

薬剤の安全性というのは、自然発生的に起こる異常の割合を上昇させないかということであって、生まれてくる児に異常がないかどうかの判断ではないことを説明できることが重要である。

妊娠と薬

妊娠中に飲んで安全だと言い切れる薬はあまりありません。
逆に妊娠中に飲むと危険だとわかっている薬も少ないです。

「絶対に安全だとは言い切れませんが、今まで胎児に異常があったという報告はありません。」
なんかひっかかる言い方になってしまいます。
患者さんとしては安全だと保障してもらいたいものです。
「この薬は危険です」と言っているようなものです。

薬剤師としてはまず、「医師が患者さんが妊婦であることを知っていて処方したのか」を確認しなければなりません。
産婦人科の処方ならまず問題ないですが。

次に、「妊婦に禁忌の薬」に当てはまらないことを確認しなければなりません。

妊婦に禁忌の薬一覧

医薬品禁忌の理由
NSAIDs血管収縮作用により、胎児の心臓の出口の血管が収縮してしまい、新生児肺高血圧症の原因になる。薬によって妊娠末期のみ禁忌とされているものもある。
リザベンマウスに大量投与した実験で、骨格異常例の増加が認められている。
ACE阻害薬、ARB胎児奇形のリスク増。
Ca拮抗薬禁忌ですが、使うこともあるようです。基本的にはアルドメットかアプレゾリンを使う。
フラジール妊娠3ヶ月までは膣錠を出す。妊娠中期から末期はトリコモナスを放置するほうが危険なので内服も出す。
ナウゼリン動物実験で催奇形性が報告されている。同じ吐き気止めのプリンペランを処方します。
ニューキノロン系抗菌剤骨や関節などの発育を阻害するため。
アゾール系抗真菌薬動物実験で催奇形性作用が報告されている。
プロトピック軟膏動物実験で催奇形性が報告されている。
ディフェリンゲル経口投与で催奇形作用が報告されている。
下剤(センナ)投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重に投与すること。基本的にはラキソベロンの処方が多い。
エルゴタミン製剤子宮収縮作用及び胎盤、臍帯における血管収縮作用がある。

プロトピックやディフェリンゲルは意外な感じがしました。塗り薬でもダメなんですね。
ミノマイシンは妊婦に禁忌ではないのですね。

奇形といえばサリドマイドを思い出すので、睡眠薬はどうなのかな?と思っていましたが、禁忌では無いようです。産婦人科から妊婦にハルシオンが処方されたとき疑義照会しましたが、そのまま処方されました。

自然奇形の割合

妊娠中に薬剤を使用したとしても、多くの場合は奇形発生率が高まるわけではなく、実際には妊娠中の服用による催奇形性が証明されている薬剤はごく一部である。
どの時期にどのくらいの期間、どのような薬剤を使用したかで影響は異なるため、問い合わせに対してこれらの情報を得る必要がある。

また、妊娠中に全く薬剤を使用せず、合併症などがなかったとしても3〜5%前後の確率で生まれた新生児に何らかの先天異常が存在するといわれていること(自然奇形発生率)も理解しておく必要がある。

妊娠1ヶ月までは薬を飲んでも問題ない?

若い女性の膀胱炎にニューキノロン系の抗菌剤が処方されることがありますが、その女性は妊娠していないと言い切れるでしょうか。
妊娠に気づいてないだけ、という可能性も否定できません。

じゃあ、若い女性で妊娠の可能性が少しでもあったら薬を飲んではいけないのか?
そんなことはありません。
妊娠していたとしても、影響の無い期間があり、最終月経開始日から0~27日までが無影響期といいます。
0~14日頃までは排卵も授精もしていないので、全く影響ありません。
14~27日までは、もし影響があったとしても、着床できずに流産してしまうか完全に回復して健常児として出生するため、薬剤は胎児に後に残るような影響は及ぼしません。これをall or noneの法則といいます。

とにかく、前回の生理から28日以上経っていなければ、薬の影響の無い、無影響期とみて、薬を飲んでも問題ないと言えます。
ちょっと生理が遅れている、と感じたならば、薬の服用は控えるのが賢明です。

all or none の法則

薬剤の影響が全くないということではなく、薬剤の影響があるとすれば着床できない(流産してしまう)か、あるいは完全に回復して後遺症を残さないことを意味する。

胎児の器官が形成される以前の時期、すなわち受精してから着床までの約2週間は、all or none period(悉無期)と呼ばれます。

この時期、受精卵は分裂を繰り返し、内細胞塊と外細胞塊に分化します。
この時期に大きな障害が加わった場合には受精卵は死に至り、妊娠としては認知されずに次回の月経を迎えることになります。

一方、障害が小さいものであれば、ほかの組織が代償し普通の発育が認められるとされています。
これらのことから、この時期の薬剤服用は一般には問題ないとされています。

妊娠2ヶ月は要注意

妊娠4~15週(妊娠2~4ヶ月)の時期は胎児の器官が形成されることから、催奇形性が問題となる時期であり、器官形成期と呼ばれます。

なかでも4~7週(妊娠2ヶ月)は絶対過敏期と呼ばれ、胎児の中枢神経、心臓、消化器、四肢などの重要臓器の発生・分化が起こる特に重要な時期であり、原則として薬剤の投与は避けるべきとされます。

妊娠に気づくのは通常この時期であり、妊娠を予定している人や妊娠の可能性がある人では極力非薬物療法を行います。

一番危険な妊娠週数は?

1.受精前から妊娠3週末まで
この時期は、受精前はもちろん、受精後でも器官の形成は始まっていない。
この時期の卵細胞は、薬剤による障害が高度であれば受精しないか、してもごく早期に流産に至るし、部分的な障害であれば、残った障害を受けていない細胞から完全な一個体が生じる(all or noneの法則)。
この時期に注意が必要なのは、遺伝子や染色体に影響を与える可能性のある薬剤および残留性のある薬剤である。
前者には抗がん薬やコルヒチン、後者には風疹ワクチンなどがある。

2.妊娠4~7週まで
この時期は器官形成期(絶対過敏期、催奇形性の臨界期)にあたり、発生を妨げる因子に胚が最も敏感な時期である。
この時期の投与を避けるべきものとしては、ビタミンAの大量投与、ワルファリン、トリメタジオン、抗癌剤(とくにメトトレキサート)、コルヒチン、ミソプロストールなどがある。
メトトレキサートは慢性関節リウマチ治療薬としても用いられることがあるので、注意が必要である。

3.妊娠8~15週まで
胎児の重要な器官の形成はほぼ終わっているが、口蓋や外性器など形成途中のものもある。
男性ホルモン作用のある薬剤(女児の外性器の男性化)や、男性ホルモン抑制作用のある薬剤(男児の尿道下裂)などは注意が必要である。

4.妊娠16週以降
胎児の器官の形態的な発育はほぼ終了しており、胎児毒性、すなわち胎児の機能的な発育に及ぼす影響や子宮内環境の悪化、また分娩直前にあっては新生児の適応障害に対する配慮が必要となる。
非ステロイド系消炎鎮痛薬(動脈管閉鎖)やテトラサイクリン系抗生物質(歯牙、骨への薬剤沈着)などは、妊娠初期よりもむしろこの時期が問題になる。
また、この時期の薬剤は胎盤を通過して胎児に到達するため、できるだけ胎盤通過性の少ないものを選択する(ワルファリンよりヘパリン、経口血糖降下薬よりインスリン)。
催奇形性の心配はこの時期ではまずないが、例外はACE阻害薬系の降圧薬で、胎児の腎機能障害から羊水過少症を起こし、その結果、羊膜索症候群とよばれる外表奇形を引き起こす。

添付文書における妊婦への注意書き

最もよくみられる記載として、「妊娠中の投与に関する安全性は確立されていないので、治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ投与すること」というものがある。

こう書いてあると、一見リスクが高そうにみえるが、妊婦での治験ができない(催奇形性があるかどうかの治験に参加する妊婦はいない)以上、安全性を確立するのは不可能であるし、本来、薬剤というものは有益性が危険性を上回る場合にのみ投与されるものであることは、妊婦に限らない。

つまり、これは薬剤投与の基本を改めていっているにすぎず、このような記載の場合はほとんどの薬剤で催奇形のリスクはきわめて低い。

投与禁忌の薬剤は妊娠がわかっていれば選択すべきではないが、禁忌の理由は「催奇形性を疑う症例報告がある」ものから「安全性は確立されていにない」ものまで幅広く、禁忌のものがリスクが高いというわけではない。

基礎疾患の治療では、禁忌と書いてあっても使用せざるをえないものもある(抗てんかん薬など)。

また、動物実験も、致死量に近いような大量で異常がみられているものも多いので、解釈には注意が必要である。

情報源としての添付文書

多くの場合、情報収集には添付文書やインタビューフォームを使用するが、「妊婦・産婦・授乳婦等への投与」の項目は満足できる内容ではない。

「投与しないこと」や「投与しないことが望ましい」であれば処方しないと判断できるが、一番困るのは「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」である。

実際には、この記載がある薬剤は抗てんかん薬を除き催奇形性はきわめて少なく、必要な場合には非妊娠時と同様に処方可能である。

また動物実験の情報は、ヒトでは通常使用しない量や、投与経路が異なる条件下での催奇形性が多く、添付文書を読解する力も必要である。

乳汁移行は、移行が認められただけで授乳中止となっており、乳児への影響の記載はなく、中止させる根拠にはならない。

この領域における薬剤の安全性は大規模な臨床試験によって証明することが難しく、情報は限られてしまうが、実際に妊婦・授乳婦や医師からの問い合わせに対して、添付文書などの単独の情報源のみではなく、さまざまな情報源から評価するべきである。

オーストラリアとFDAの胎児危険度分類の違いは?

公的な胎児危険度分類は日本に存在しないため、実地診療では米国のFDA分類や、オーストラリアの分類などを参考にしていることが多いです。

オーストラリアのカテゴリーではヒト妊婦への使用経験が重視され、FDAのカテゴリーはヒト・動物の試験結果をもとに作成されています。

FDA分類
カテゴリーA:適切な、かつ対照のある研究で、妊娠第一期(first trimester)の胎児に対するリスクがあることが証明されておらず、かつそれ以降についてもリスクの証拠が無いもの。
カテゴリーB:動物実験では胎児に対するリスクが確認されていないが、妊婦に対する適切な、対照のある研究が存在しないもの。または、動物実験で有害な作用が確認されているが、妊婦による対照のある研究では、リスクの存在が確認されていないもの。
カテゴリーC:動物実験では胎児への有害作用が証明されていて、適切で対照のある妊婦への研究が存在しないもの。しかし、その薬物の潜在的な利益によって、潜在的なリスクがあるにもかかわらず妊婦への使用が正当化されることがありうる。
カテゴリーD:使用・市販後の調査、あるいは人間を用いた研究によってヒト胎児のリスクを示唆する明らかなエビデンスがあるが、潜在的な利益によって、潜在的なリスクがあるにもかかわらず妊婦への使用が正当化されることがありうる。
カテゴリーX:動物・人間による研究で明らかに胎児奇形を発生させる、かつ/または使用・市販による副作用の明らかなエビデンスがあり、いかなる場合でもその潜在的なリスクは、その薬物の妊婦に対する利用に伴う、潜在的な利益よりも大きい。(事実上の禁忌である)

オーストラリア分類
カテゴリーA:多くの妊婦と妊娠可能年齢の女性によって服用されており、それによって先天奇形の発症率の上昇や、間接・直接の胎児に対する有害作用が確認されていない薬剤
カテゴリーB1:制限された人数だけの妊婦や妊娠可能年齢の女性によって服用されており、それによって先天奇形の発症率の上昇や、そのほかの直接・間接の有害作用が確認されていない薬物。動物実験では胎児傷害の増加を示すエビデンスが認められない。
カテゴリーB2:制限された人数だけの妊婦や妊娠可能年齢の女性によって服用されており、それによって先天奇形の発症率の上昇や、そのほかの直接・間接の有害作用が確認されていない薬物。動物実験による研究結果は不適切なものしかないか、あるいは存在しないが、利用できる資料によれば胎児傷害の増加を示すエビデンスが認められない。
カテゴリーB3:制限された人数だけの妊婦や妊娠可能年齢の女性によって服用されており、それによって先天奇形の発症率の上昇や、そのほかの直接・間接の有害作用が確認されていない薬物。動物実験では胎児傷害の増加が確認されているが、臨床的なその重要性は不明確である。
カテゴリーC:医薬品としての作用によって、胎児や新生児に可逆的な傷害を与えるか、与える可能性がある薬物。奇形を発生させることは無い。
カテゴリーD:胎児の先天奇形の頻度を増加させ、回復不能の傷害を与える、ないし、その可能性が示唆されている薬物。(可逆的な)薬理学的副作用も伴っているかもしれない。
カテゴリーX:胎児に恒久的な傷害を与える高いリスクがあり、妊婦および妊娠の可能性を伴う女性に投与してはならない薬剤。(事実上の禁忌である)

ニュアンス的には、FDA分類だと、Aは安心、Bはたぶん大丈夫、Cはよくわかんない、Dはやめといたほうがいい、Xは危険、といった感じかな。

オーストラリア分類だと、Aは安心、Bはよくわかんない、Cはやめといたほうがいい、Dはちょっと危険、Xは危険といった感じでしょうか。

催奇形性と胎児毒性の違いは?

・催奇形性
器官形成などの発生段階において、異常を生じさせる性質や作用のこと。
例)ワルファリンによる軟骨形成不全や神経系の異常など

・胎児毒性
胎児の環境の悪化・発育抑制など、胎児の発育や機能に及ぼすさまざまな悪影響のこと。
例)非ステロイド性抗炎症薬による胎児尿量減少や動脈管の収縮など

禁忌の理由を分類すると以下のようになる。

医薬品禁忌の理由
エトレチナート催奇形性
高用量のビタミンA催奇形性
ダナゾール催奇形性
フェニトイン催奇形性
風疹ワクチン催奇形性
ワルファリン催奇形性
プロスタグランジンアゴニスト治療薬催奇形性、胎児毒性
アンジオテンシン変換酵素阻害薬胎児毒性
アミノグリコシド系抗菌薬胎児毒性
テトラサイクリン系抗菌薬胎児毒性
クロラムフェニコール系抗菌薬胎児毒性
非ステロイド性抗炎症薬胎児毒性

胎児だけにある血管?

赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるときは、肺で呼吸をしていないため心臓に戻ってきた血液を肺に送る必要がない。

そのため直接大動脈に流れるように、動脈管という血管が存在する。

この動脈管は出生後、数時間で自然に閉鎖する。

動脈管

胎児にとって、胎盤からの酸素を脳に流すために必要な管。

胎児期には血中のプロストグランジン濃度が高いことで動脈管は開存しているが、PG合成阻害作用をもつジクロフェナクナトリウムを投与することでPG濃度が低下し、動脈管が収縮、閉鎖してしまう。

胎児動脈管収縮

妊娠末期にNSAIDsを使うことで、赤ちゃんの動脈管が閉塞してしまうという副作用が知られています。

胎内では開いているべき胎児の動脈管が収縮してしまい、胎児に肺高血圧と右心不全が起こる可能性があります。

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職業:管理薬剤師
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