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ゼチーアとコレバインの違いは?
公開. 更新. 投稿者:脂質異常症. タグ:ゼチーア. 閲覧数:1041回
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コレバインとゼチーア
コレステロール吸収阻害剤では、陰イオン交換樹脂製剤のクエストランやコレバインがすでに販売されている。
「吸収阻害剤」という分類では同じだが作用機序は全く異なり、また、ほかにも相違点は多く、錠剤の大きさや多量の水を食前に服用する必要があるコレバインよりもゼチーアの方がコンプライアンス向上は期待できる。
ゼチーアの作用機序
ゼチーアは小腸壁細胞に存在するタンパク質NPC1L1を介して、コレステロールおよび植物ステロールの吸収を阻害する。
作用部位は小腸であり、動物実験において、小腸でのコレステロールの吸収を選択的に阻害し、その結果、肝臓のコレステロール含量を低下させ、血中コレステロールを低下させる。
ニーマンピック病とゼチーア
ゼチーアは小腸コレステロールトランスポーター阻害薬。
このゼチーアの標的である小腸コレステロールトランスポーターというのはNPC1L1という分子です。
NPC1L1というのは、Niemann-pick C1 Like 1 Protein つまり、ニーマン・ピックC1に似たタンパク質。
ニーマンピックC1(NPC1)というのは、ニーマン・ピック病C型の原因遺伝子。
ニーマンピック病C型とは代謝異常症の一種で、常染色体劣性遺伝性の脂質代謝異常症です。
NPC1はコレステロールの細胞内の輸送蛋白なのです。
NPC1蛋白質がうまく働かないために、コレステロールやその他の脂肪成分の運搬に異常がおこり、細胞の中にコレステロールやその他の脂肪成分が貯まることで細胞に異常がおこります。
ニーマンピック病という病気の解明から、コレステロール低下薬が生まれたという興味深い話です。
コレステロールは体の中で作られる
生体内のコレステロールには、肝臓で合成される内因性コレステロールと、小腸から吸収される外因性コレステロールとがある。
また外因性コレステロールは、食事により摂取される食事性コレステロールと、肝臓で作られ胆汁酸として腸管に排泄される胆汁性コレステロールに分けられる。
参考書籍:調剤と情報2007.11
食事からのコレステロールを減らす
体内のコレステロール量を減らすには、肝臓でのコレステロール合成を低下させるか、食物からの吸収を低下させる方法が基本です。
肝臓でのコレステロール合成を低下させる薬としてはHMG-CoA還元酵素阻害薬があります。
一方、食物からのコレステロールの吸収を防ぐ薬には、胆汁酸結合樹脂である陰イオン交換樹脂(コレスチラミン、コレスチミド)が使われています。
食物とともにイオン交換樹脂を服用すると、腸管内において胆汁酸と結合してそのまま便とともに排出され、体内に食物からのコレステロールが吸収されません。
しかし、陰イオン交換樹脂は食事の前に水に溶かして飲む粉末で、錠剤に比べて飲みにくい点や、コレステロール以外にも脂溶性ビタミン(A、D、E,K)あるいは葉酸塩なども同時に結合してしまうなどの欠点があります。
そこで、小腸でのコレステロールの吸収を選択的に阻害する薬を探すというコンセプトのもとで見つけだされたのが、エゼチミブです。
コレステロール吸収の分子メカニズムは長い間不明でしたが、2004年にエゼチミブの研究開発を行った米国シェリング・プラウ社の研究
者により、小腸壁細胞に存在するタンパク質のコレステロールトランスポーター(NPC1L1)が、コレステロールの吸収に関与することを解明しました。
エゼチミブはこのNPC1L1に結合して、コレステロールがNPC1L1に結合できないようになり、胆汁中や食事中のコレステロールは体内に吸収されなくなるのです。
参考書籍:薬効力 ―72の分子標的と薬の作用―
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