2025年10月11日更新.2,648記事.

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なぜ抗リウマチ薬はDMARDsと呼ばれるのか?

なぜ抗リウマチ薬はDMARDsと呼ばれるのか?関節リウマチ治療の最前線

「抗リウマチ薬(Anti-Rheumatic Drugs)」という言葉は耳にするものの、なぜ「DMARDs(ディーマーズ)」と呼ばれるのか、ご存じでしょうか。
DMARDsは「Disease Modifying Anti-Rheumatic Drugs」の略で、日本語では疾患修飾性抗リウマチ薬と訳されます。従来の薬とは異なり、単なる対症療法にとどまらず、関節リウマチという病気の自然経過そのものを変える可能性を持つ薬剤群です。

DMARDsとは何か?

名称の由来
DMARDs = Disease Modifying Anti-Rheumatic Drugs
直訳すると「疾患修飾性抗リウマチ薬」です。

・NSAIDsやステロイド → 炎症や痛みを抑える「対症療法薬」
・DMARDs → 関節破壊や機能障害の進展を遅らせる「疾患の自然経過を変える薬」

この違いこそが、「抗リウマチ薬」ではなく「DMARDs」と呼ばれる理由です。

他の呼び方
かつては以下のように呼ばれていました。

・寛解導入薬:病気を「寛解」に導く可能性がある
・遅効性抗リウマチ薬:効果が出るまで数か月かかる

しかし、近年は作用発現が速い薬も登場し、また「病気の自然経過を変える」ことが最も重要視されるため、現在は「DMARDs」という表現が主流になっています。

関節リウマチ治療の歴史

20年前までの治療方針
かつては、発症初期はNSAIDsやステロイドのみでコントロールし、痛みが強くなってからDMARDsを使用する「守りの治療」が主流でした。

治療方針の転換
1990年代以降、リウマチ治療の考え方は大きく変化します。
・発症早期からDMARDsを使用する「攻めの治療」へ
・早期に使うことで、寛解導入や関節破壊の抑制が可能であることが明らかになった

現在では、多くの専門医が「発症早期から十分なDMARDsを使用することが、治療の成功につながる」と考えています。

DMARDsの種類と特徴

従来型合成DMARDs(csDMARDs)
・メトトレキサート(MTX:リウマトレックス®)
・サラゾスルファピリジン
・レフルノミド
・タクロリムス(免疫抑制剤としても使用)
最も標準的なのはMTXで、国内外のガイドラインでも第一選択薬に位置づけられています。

生物学的製剤(bDMARDs)
・TNF阻害薬:インフリキシマブ(レミケード®)、エタネルセプト(エンブレル®)
・IL-6受容体阻害薬:トシリズマブ(アクテムラ®)
・CD20抗体:リツキシマブ(リツキサン®)
強力な効果を発揮し、寛解導入例が飛躍的に増加しました。

分子標的型合成薬(tsDMARDs)
・JAK阻害薬:トファシチニブ、バリシチニブ など
内服で使用でき、即効性もある新世代のDMARDsです。

効果の個人差:レスポンダーとノンレスポンダー

DMARDsの有効率は30〜70%とされます。

・レスポンダー:薬がよく効き、長期に病気をコントロールできる患者
・ノンレスポンダー:効果が乏しい患者

残念ながら、現時点ではどちらに分類されるかを事前に判定する方法はありません。また、最初は効果があっても、長期使用で効果が弱まる「二次無効(エスケープ現象)」もあります。

このため、複数のDMARDsを組み合わせたり、生物学的製剤へ切り替えるなど、治療を調整しながら続けていきます。

「慢性関節リウマチ」から「関節リウマチ」へ

かつては「慢性関節リウマチ(RA)」と呼ばれていましたが、現在は「関節リウマチ」が正式名称です。

理由は、
・英語のRheumatoid Arthritisに「慢性」は含まれない
・「慢性」という言葉が「治らない病気」という誤解を与える

実際、DMARDsを早期から使うことで「慢性経過をたどらない可能性」も出てきています。

関節リウマチは治るのか?

真の寛解の可能性
従来は「治らない病気」とされていました。しかし近年は、

・発症5年以内に治療を開始した症例の30〜50%で臨床的寛解が得られる
・特に生物学的製剤(例:インフリキシマブ)で「投与を中止しても寛解が持続」する例が報告

この状態は「真の寛解」と呼ばれ、将来の治療目標とされています。

患者にとって「治る可能性がある」と知ることは、大きな治療意欲につながります。

NSAIDs・ステロイドとの違い

NSAIDs
・痛みを和らげるだけの対症療法薬
・関節破壊を防ぐ効果はない
・我慢できるなら中止も可能

ステロイド
・強力な抗炎症作用で症状を素早く改善
・しかし「関節破壊の進行を止める効果はない」
・DMARDsの効果が出るまでの「橋渡し的役割」
薬剤師的には「自己判断で減量・中止しないでください」と指導が必要で、漸減法など医師の管理下で調整することが不可欠です。

薬剤師としての関わり

・服薬指導:DMARDsは効果が出るまで数か月かかることを説明
・副作用モニタリング:MTXによる間質性肺炎、肝障害、骨髄抑制など
・アドヒアランス支援:「進行を止める可能性がある薬」という点を強調することで、服薬意欲を高める
・自己中断の防止:ステロイドやDMARDsは自己判断での調整が危険であることを伝える

まとめ

・DMARDsとは「疾患修飾性抗リウマチ薬」。関節リウマチの自然経過を変える可能性があるため、こう呼ばれる。
・治療は発症早期から「攻めの治療」が推奨され、寛解導入のチャンスが広がった。
・効果には個人差があり、ノンレスポンダーや二次無効も存在する。
・生物学的製剤やJAK阻害薬により「真の寛解」も現実味を帯びてきている。
・NSAIDs・ステロイドはあくまで対症療法であり、病気の進行を抑える力はない。

関節リウマチは「治らない病気」から「治る可能性のある病気」へと変わりつつあります。その中心にあるのがDMARDsであり、薬剤師としては患者の服薬支援と正しい理解の普及が重要です。

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