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処方せんを無くしたらどうする?
公開. 更新. 投稿者:薬局業務/薬事関連法規.この記事は約2分26秒で読めます.
153 ビュー. カテゴリ:処方せんを無くしたら?

処方せんを無くしてしまった場合、誰が無くしたかによって対応は大きく異なります。ここでは、患者側が紛失した場合と、薬局側が紛失した場合のそれぞれについて詳しく解説し、関連する法律や実務上の取り扱いも交えて説明します。
患者が処方せんを無くした場合
まず、最もよくあるケースが、患者が処方せんを紛失してしまうというものです。
● 医療機関での再発行:
処方せんを発行した医療機関に連絡し、再発行を依頼する必要があります。通常、再発行には「再診」や「文書料」として数百円から千円程度の手数料がかかることが多いです。
● 注意点:
処方せんの使用期限は、発行日を含めて4日以内です。
再発行された処方せんにも、このルールが適用されるため、速やかに薬局に持参する必要があります。
医師が再発行を拒否することは通常ありませんが、電話のみでは再発行できない場合があります。
薬局が処方せんを無くした場合
あまりあってはならないケースですが、薬局で処方せんを紛失することもありえます。
● 法律上の位置づけ:
薬局には処方せんの3年間の保存義務があります。
【薬剤師法 第27条】
“薬局開設者は、当該薬局で調剤済みとなった処方せんを、調剤済みとなった日から三年間、保存しなければならない。”
【保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則 第6条】
“保険薬局は、処方せん及び調剤録をその完結の日から三年間保存しなければならない。”
処方せんを無くすことは、これらの義務に違反することになります。
● 実務上の対応:
薬局が処方せんを紛失してしまった場合、
医療機関と良好な関係があれば、再発行を依頼するケースもある。
再発行を受けた場合は、再度調剤記録に添付し、保存する必要があります。
ただし、
患者には極力事情を説明せずに処理することも(信頼問題に関わるため)
偶然にも個別指導の対象に当たってしまった場合、該当する調剤に関して全額返金(保険請求の返還)を求められることがあります。
保存義務とリスク
保存義務は調剤済み処方せんのみならず、調剤録、薬歴、レセプトなどにも適用されます。
● 紛失を防ぐための対策
・処方せんのスキャン保存(電子薬歴とリンク)
・処方せんのPDF化によるバックアップ
・一日一回の処方せん枚数チェック
時効と現実対応
処方せんの保存義務は3年間です。この保存期間を過ぎると、形式的には「無かったことにできる」ように思えるかもしれません。
しかし、万が一3年以内に個別指導や監査が入り、紛失した処方せんが該当していた場合、法的責任は免れません。
● 最悪のケース
・記録がない → 診療報酬返還(全額)
・信頼失墜 → 保険薬局指定取り消しのリスクも
まとめ
・患者が紛失した場合は、医療機関に再発行を依頼すれば済むが、手数料が発生する。
・薬局が紛失した場合は、法律違反に該当し、重い責任を問われる可能性がある。
・処方せんの保存は薬局にとって極めて重要な義務。
・紛失を防ぐための対策を日頃から講じることが、リスクマネジメントにつながる。
「処方せんを無くす」という一見ありがちなミスが、重大なトラブルや指導対象になることもあります。薬局としても、個人としても、処方せんの管理には万全を期したいものです。