2024年11月20日更新.2,474記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

記事

透析後のリズミック?

透析患者の低血圧

透析患者は基本的に高血圧を合併していることが多いので、降圧剤を服用している。
通常血圧は高い状態。

しかし、透析を行うと血圧は低下します。
低血圧の原因は様々あるようですが、ほとんどの場合が、体重の増加による急激な除水が原因と考えられます。
透析により循環血液から水分が取り除かれるため、循環血液量が減ります。
細胞外液が血管内に入って循環血液量を一定に保ちますが、急激な除水をすると細胞外液が血管内に入るのが間に合わなくなります。
そうなると循環血液量が減り血圧が下がります。

除水によって循環血液量が減ると、心拍数が増加し末梢血管が収縮して血圧を維持しようとします。
しかし、透析患者は動脈硬化や糖尿病などで血管の弾力が失われているので血管は縮みにくく血圧が下がりやすい状態です。

プラズマ・リフィリング

細胞外液が血管内に入って循環血液量を一定に保とうとすることを「プラズマ・リフィリング」と言います。
日本語に訳すと「血漿再充満」。低下した血漿が間質液により補充される作用ということ。

透析前のリズミック

透析中に低血圧を起こすことが多いので、透析前に昇圧薬のリズミックを飲ませるということも多い。
透析中に収縮期血圧110mmHgくらいに下がる人にはリズミックを使うようだ。

リズミックの効能効果にも

透析施行時の血圧低下の改善
通常、成人にはアメジニウムメチル硫酸塩として、透析開始時に1回10mgを経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減する。

と書かれている。

また別の昇圧薬ドプスの効能効果にも

○起立性低血圧を伴う血液透析患者における下記症状の改善
 めまい・ふらつき・たちくらみ、倦怠感、脱力感
通常成人に対し、ドロキシドパとして1回量200~400mgを透析開始30分から1時間前に経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜減量する。1回量は400mgを超えないこととする。

と書かれている。基本的に透析前だ。

ということは、院外処方されることは無いのかな、と思いきや、処方されることも多い。
降圧薬と昇圧薬が同時に処方される状態なので、チンプンカンプンとなる薬剤師もいる。
透析後しばらく低血圧が続くような患者や、次回の透析前に服用させたりする。

リズミックとドプスの違い

リズミックは交感神経終末のノルアドレナリン再取り込み阻害作用、及びMAO阻害作用により交感神経機能を亢進させ血圧を上げる。
ドプスはノルアドレナリンの前駆物質としてα1刺激により血圧を上げる。

ドプスの低血圧に関する適応症は、透析患者に対するものだけです。
リズミックは透析患者以外にも使うことができる。

ドプスのよくある質問にも以下のように記載されている。

起立性低血圧を伴う血液透析患者におけるめまい等の症状の改善に使用する場合、非透析日に服用してもいいですか?
ドプスの用法は「透析開始30分から1時間前に経口投与する」です。
透析患者を対象とした臨床試験では、透析前(透析日)に投与し、有効性・安全性を確認したため、非透析日に投与した場合の有効性・安全性は確認されていません。

リズミックとドプスの使い分けとして、効果発現時間がリズミックのほうが早く、透析中の血圧低下を防ぐにはリズミックが適しているということがある。

リズミックの効果発現時間は健康成人で投与後約2時間となっている。
リズミックの透析患者に対する血中濃度は、透析日でTmax3.6±0.7、非透析日で4.4±0.7。

ドプスの効果発現時間は明確な記載が無いが、血中濃度は以下のように書かれている。

血液透析患者に1回300mgを透析開始1時間前に経口投与した場合、未変化体の血漿中濃度は投与6時間後に最高値(1.43μg/mL)を示し、投与36時間後に定量限界以下(0.05μg/mL)となった。また、血漿中ノルアドレナリン濃度は投与3時間以降、投与前値に対し有意な高値を認め、以後投与6~36時間まで持続した。

リズミックが2時間で効果が出るのに対し、ドプスは6~7時間といわれている。

またリズミックとドプスを併用することもある。

リズミックと併用することがありますか?
リズミックには「透析施行時の血圧低下の改善」の効能・効果があり、ドプスと異なる作用機序を有するため、血液透析患者に対して併用される可能性があります。
臨床試験において、リズミック併用の副作用への影響を検討したところ、リズミック併用群での副作用発現率が併用なし群に比べ高く、なかでも血圧上昇の頻度が高いことが分かっています。併用により血圧の異常上昇をきたすことがありますので、併用する場合は注意してください。
なお、リズミック(アメジニウムメチル硫酸塩)との併用は、「併用注意」として注意喚起をしています。

ちなみに低血圧の薬といえば、メトリジンもありますが、メトリジンの適応症は「本態性低血圧、起立性低血圧」となっているので、透析に適応はありません。

透析による頭痛の原因は不均衡症候群?

透析中の副作用に不均衡症候群というものがある。

透析をすると、機械によって血液をろ過しますが、頭部の血液はなかなか濾過できない。
それは、頭には血液脳関門という、体内に入ってきた薬や毒などを、簡単に脳内に入り込ませないようにする仕組みがあるからです。
また、細胞内と細胞外では細胞外液のほうが初めにきれいになる。

透析のように短い時間で血液の毒素を抜くと、体幹部分の毒素が抜けても、脳内の老廃物・クレアチニン・尿素窒素・尿酸などは、抜けるのが遅いため、浸透圧により、脳の方に水が移動して脳に水が貯まった状態となる。
この脳細胞組織と血液の間で、尿毒素や電解質のアンバランス(不均衡)が起こることを、不均衡症候群という。

移動した水分で脳が腫れてしまい、脳膜が刺激されて、頭痛になります。
この脳のむくみによる頭痛は、通常24時間以内に痛みはなくなるそうです。

体が透析にまだ慣れていない、透析導入期によくみられます。
不均衡症候群の予防として、透析時間を2~3時間など短くする方法などがとられます。

脳に毒素を簡単に侵入させないようにする血液脳関門は、脳の尿毒素も簡単には排出させてくれない。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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