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漢方薬を何種類も飲んで大丈夫?
公開. 更新. 投稿者:漢方薬/生薬.この記事は約7分50秒で読めます.
11,092 ビュー. カテゴリ:漢方薬の併用
漢方薬が好きな医師から、何種類も漢方薬が処方されていることがあります。
中には重複する成分もある。
甘草などはよく重複する。気を付けるべき成分であります。
漢方薬の添付文書にも、「他の漢方製剤等を併用する場合は、含有生薬の重複に注意すること。」と記載されています。
がしかし、数種類の漢方薬が処方されていたとしても疑義照会をかけるほどの問題がある処方はほぼない。と思って、疑義照会することはほとんどない。
漢方薬の相互作用は、単行・相須・相使・相畏・相悪・相反・相殺に分けられる。薬膳と考え方は同じなので引用する。
実際に薬あるいは食物を使用する時は、単体で使うことが少ない。最も多く使用するのは二品以上である。また、それらをお互いに配合する関係が七通りあり、このことを「配伍七情」という。
薬膳 – Wikipedia
1.単行:単味の食薬を使用する。
2.相須:同じ効能を持つ食薬を一緒に使うと効果を増加させる。
3.相使:一方を主とし、他方を輔とすることにより他薬が主薬の効果を増加させる。
4.相畏:主になる食薬の毒性反応あるいは副作用を他の食薬によって削除または軽減させること。
5.相殺:相畏の裏返しの関係。他の食薬の不良作用が主の食薬により削除、軽減されること。
6.相反:二種類以上の食薬を合わせて使うことにより副作用が生じること。
7.相悪:二種類以上の食薬を合わせて使うことにより作用が低減し、無効になること。
※相反と相悪の配伍は日常的によく見かけるが、できるだけ避けたほうがよい。
複数の漢方薬を併用すると、副作用の増強(相反)の問題よりも、作用の減弱(相悪)のほうが多いのではないかと思う。
一般的に、2~3種の生薬のみ配合した薬、芍薬甘草湯(芍薬、甘草)、桔梗湯(桔梗、甘草)などの方が切れ味が強く、複数の生薬が配合された生薬のほうがマイルドに作用するからである。
漢方薬の中には構成生薬が被るものがいくつかある。
名前から容易に推測できるものもあるが、気付かないものもある。
これらが重複して処方されていた場合には、処方間違いの可能性もあるので疑義照会したほうが良い場合もある。
人参湯グループ
人参湯(蒼朮、人参、甘草、乾姜)
四君子湯(蒼朮、茯苓、人参、甘草、生姜、大棗)
六君子湯(蒼朮、茯苓、人参、甘草、生姜、大棗、半夏、陳皮)
補中益気湯(蒼朮、人参、甘草、生姜、大棗、陳皮、黄耆、柴胡、当帰、升麻)
十全大補湯(蒼朮、茯苓、人参、甘草、黄耆、当帰、川きゅう、芍薬、地黄、桂皮)
桂枝湯グループ
桂枝湯(桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草)
桂枝加芍薬湯(桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草)
小建中湯(桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草、膠飴)
柴胡桂枝湯(桂皮、芍薬、生姜、甘草、柴胡、黄ごん、半夏、大棗、人参)
葛根湯(桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草、葛根、麻黄)
麻黄湯(桂皮、甘草、杏仁、麻黄)
小青竜湯(桂皮、甘草、麻黄、芍薬、半夏、五味子、細辛、乾姜)
小柴胡湯グループ
小柴胡湯(柴胡、黄ごん、半夏、人参、甘草、生姜、大棗)
大柴胡湯(柴胡、黄ごん、半夏、生姜、大棗、枳実、大黄、芍薬)
柴胡桂枝湯(柴胡、黄ごん、半夏、生姜、大棗、芍薬、桂皮、人参、甘草)
四君子湯と六君子湯を併用する医者はいないだろうけど、葛根湯と小青竜湯が併用する医者は多そう。疑義照会しようかな、どうしよう。
ちなみに小建中湯と大建中湯は構成生薬は被らない。併用していいかどうかはわかりませんが。
小建中湯(桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草、膠飴)
大建中湯(人参、山椒、乾姜)
構成生薬が3つ4つ重複していれば疑義照会しても良いレベルかと思う。
しかし、漢方薬を好んで処方して来る医師は漢方薬に詳しいと自負している医師であろうから、そこのプライドを傷つけないよう配慮する必要があるだろう。メンドクセ。
漢方薬と西洋薬の併用
漢方薬の相互作用といえば、小柴胡湯とインターフェロン製剤の相互作用。
添付文書上、併用禁忌となっている。
正直、それしか思い浮かばないし。
他にも、
安中散-ニューキノロン系抗菌薬:抗菌剤吸収阻害(安中散に含まれる牡蠣に含まれるカルシウムなどミネラルとの相互作用)
甘草含有漢方薬-グリチルリチン製剤:偽アルドステロン症発症
柴朴湯-テオフィリン:テオフィリン血中濃度増加
四逆散-ニカルジピン:薬物代謝酵素阻害(四逆散に含まれる枳実との相互作用)
小柴胡湯-インターフェロン製剤:間質性肺炎の惹起・増悪
小青竜湯-アストフィリン:花粉症患者の咳症状の持続化
大建中湯-アカルボース:腸閉塞様症状を惹起
(参考書籍:日本薬剤師会雑誌 平成23年10月)
などなどあるようです。
カンゾウ含有製剤は添付文書の記載あり。利尿薬との併用にも注意する。
このほかマオウ含有製剤もエフェドリン類含有製剤、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤、甲状腺製剤、カテコールアミン製剤、キサンチン系製剤などとの併用注意が記載されている。
肩こりに葛根湯とか長期に飲んでいる人もいるので、マオウ系にも注意が必要ですが、カンゾウによる低カリウム血症にも要注意。
漢方薬はサプリメント並みに安全だと思って飲んでいる人がいるので、時折飲みあわせや副作用に注意しなければいけない。
枳実とカルシウム拮抗薬の相互作用
Ca拮抗薬とグレープフルーツジュースの相互作用は良く知られている。
他の柑橘類においても注意が必要という報告もある。
では、漢方薬に含まれる「枳実」はどうだろう?
漢方薬には柑橘類由来の生薬もある。
例えば、枳実はミカン科のダイダイ、ナツミカン、または近縁植物の未熟果実をそのままか半分に横切りしたものである。
その主要成分はフラボノイドやクマリン類であり、クマリンの1つであるイソインペラトリンは、グレープフルールに含まれるジヒドロキシベルガモチンに化学構造が類似している。
しかし、枳実を含む漢方エキス製剤の1日常用量はジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の体内動態に影響を与えるという報告はない。
枳実は、ミカン科のダイダイやナツミカン、その近縁植物の未熟果実で、消化管運動亢進作用や抗炎症・抗アレルギーなどの作用をもつ。
リモネンやリナロールなどの精油成分やヘスペリジンやナリンジンなどのフラボノイドを有する。
柑橘類としてウンベリフェロンなどのクマリン類も含んでいる。
その点で、グレープフルーツジュースの場合と同様に、チトクロームP450を介した一部の薬との相互作用が考えられるが、実際に確かめた研究ではそうした作用は認められなかったという。
漢方薬の多剤併用
漢方薬が2種類、3種類処方されることがたまにあります。
問題ないのでしょうか?
漢方薬の中にはいくつかの生薬が含まれています。
たとえば葛根湯の中には、葛根、麻黄、桂皮、芍薬、甘草、大棗、生姜が含まれています。
桂枝湯の中には、桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草が含まれています。全て葛根湯の中に含まれている生薬です。
この2種類を併用することは無いと思いますが、何種類も漢方を飲んでいる人では重なる成分が出てきます。
甘草はほとんどの漢方薬に配合されていて、副作用もあるので注意が必要な生薬のひとつです。
1日の最大許容量は5グラムが目安らしいです。
それ以上で偽アルドステロン症の副作用が出ることがあります。
芍薬甘草湯にはすでに1日量で甘草6g配合されているので、連用してはいけません。
あと、漢方薬に配合されている生薬の数が少ないほど切れ味がいい、多いほど効果がマイルドで副作用が少ない、らしいので、漢方薬を多種類併用することで効果が弱くなる可能性もあります。
県によっては、漢方は保険上2種類まで併用可、というところもあるようです。
柴胡桂枝湯=小柴胡湯+桂枝湯
柴胡桂枝湯には柴胡と桂枝が含まれています。
しかし構成生薬は柴胡と桂枝だけでなく、柴胡・黄ごん・人参・半夏・生薑・大棗・甘草・芍薬・桂枝の9種類あります。
前から7種類は小柴胡湯、後ろから5種類は桂枝湯になります。
つまり小柴胡湯と桂枝湯の合方です。
なので小柴胡桂枝湯と言ったほうが正しいかも知れません。
柴胡桂枝湯
体力中等度前後の人に適している。
熱病の場合は、発熱、微悪寒、関節痛、頭痛、肩こり、悪心、嘔吐、心下部の痞塞感などを伴う。
感冒がこじれて、長引いた場合に用いるとよい。
慢性疾患では、腹直筋の攣急(胸脇苦満、心下支結)のみられる場合で、胸腹が急に痛む場合や上腹部の鈍痛を呈する場合に用いる。
慢性肝炎など長期使用の場合には、小柴胡湯よりも芍薬(潤性)が入っている本剤の柴胡桂枝湯を用いるのがよい(陰虚を呈することがあるため)。
ただし、かなり長期に使用する場合には、やはり柴胡桂枝湯もやや燥性であるため小柴胡湯と潤剤の芍薬甘草湯を合方・併用するほうがよいと思われる。
桂枝湯と桂枝加芍薬湯
桂枝湯の構成生薬は「桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草」の5種類。
桂枝加芍薬湯の構成生薬は「桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草」の5種類。
あら同じ。
何が違うのかというと、芍薬の量。
桂枝湯に含まれる芍薬を増量すれば、桂枝加芍薬湯になります。
それだけなのに、効能効果が全く違う。
桂枝湯の適応は「体力が衰えたときの風邪の初期」。
桂枝加芍薬湯の適応は「腹部膨満感のある次の諸症:しぶり腹、腹痛」。
しかし、保険上の適応が違うからといって、全く違う薬になるわけではなく。
鎮痙鎮痛作用の強い芍薬を増量しただけなので、桂枝加芍薬湯を風邪の初期の冷えと痛みに使うことは不自然なことではありません。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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