2025年6月5日更新.2,490記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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名前が似ている漢方薬の一覧

漢方薬の名称類似薬

漢方薬には「名前がそっくりなのに、まったく違う効能・構成をもつ処方」が数多く存在します。
「当帰芍薬散」と「芍薬甘草湯」、「大建中湯」と「小建中湯」など、一文字違いでも用途が大違い。
入力ミス・調剤ミス・服薬指導ミスを防ぐためにも、似た名称の漢方薬の見分け方を知っておきましょう。

間違えやすい漢方薬一覧

医薬品名(製品番号)医薬品名(製品番号)医薬品名(製品番号)医薬品名(製品番号)
加味帰脾湯(137)加味逍遙散(24)
五苓散(17)五積散(63)五淋散(56)五虎湯(95)
柴苓湯(114)柴朴湯(96)柴陥湯(73)
柴胡桂枝湯(10)柴胡清肝湯(80)
滋陰降火湯(93)滋陰至宝湯(92)
芍薬甘草湯(68)当帰芍薬散(23)
治打撲一方(89)治頭瘡一方(59)
半夏厚朴湯(16)半夏瀉心湯(14)
柴胡加竜骨牡蛎湯(12)桂枝加竜骨牡蛎湯(26)
苓桂朮甘湯(39)苓姜朮甘湯(118)
麻杏甘石湯(55)麻杏薏甘湯(78)
大建中湯(100)小建中湯(99)
小青竜湯(19)小柴胡湯(9)小建中湯(99)
大柴胡湯(8)小柴胡湯(9)
大防風湯(97)大建中湯(100)大柴胡湯(8)大承気湯(133)
防己黄耆湯(20)防風通聖散(62)
十味敗毒湯(6)十全大補湯(48)
四物湯(71)四逆散(35)
四君子湯(75)六君子湯(43)
温経湯(106)温清飲(57)
加味帰脾湯(137)加味逍遙散(24)

なぜ名前が似てしまうのか?

漢方薬の製剤名称が似てしまう理由は、製剤名に「半夏」とか「芍薬」といった生薬名が入っていたり、構成生薬数で「四…」「五…」「六…」、漢方製剤名称の付け方のルールで「大…」「小…」「加味…」といった形で似通ってしまうからだ。

レセコン検索時に似た字面の薬が並ぶと選択する時にミスが生じやすい。
頭文字3文字検索(例:「じいん」「まきょう」)で候補が複数表示され、うっかり選択ミスが起こりやすい。

芍薬甘草湯と当帰芍薬散

漢方薬名 | 構成生薬の違い | 主な適応・特徴
芍薬甘草湯 | 芍薬・甘草 | 急なこむら返り・筋けいれん
当帰芍薬散 | 当帰・芍薬・川芎・蒼朮・沢瀉・茯苓| 貧血・冷え・月経不順など婦人科

「芍薬甘草湯」と「当帰芍薬散」は「芍薬」が入っている点以外はあまり似ているとは思わないのだが、間違いが多く見られる。文字数と字面に惑わされて間違えるのだろう。

大建中湯と小建中湯

漢方薬名 | 構成生薬の違い | 主な適応・特徴
大建中湯 | 人参・乾姜・山椒 | 腸を温めて動かし、術後イレウスにも使用 |
小建中湯 | 桂皮・芍薬・生姜・大棗・甘草 | 虚弱体質、小児の夜泣き |

大と小をつけて兄弟関係が示される処方は多いです。
大柴胡湯と小柴胡湯
大青竜湯と小青竜湯
大建中湯と小建中湯
大承気湯と小承気湯
大半夏湯と小半夏湯
大陥胸湯と小陥胸湯
などがあります。

一般に大の付く処方は小の付く処方より攻撃的で、より実証に近い病態に適応します。
逆に小の付く処方は温補的で、より虚証に近い病態に適応します。
しかし、これは両者を比較した相対論で、必ずしも大の付く処方が実証、小の付く処方が虚証に用いられるという訳ではありません。

構成生薬についても、大建中湯と小建中湯は全く違いますが、大柴胡湯と小柴胡湯は似ている。
大柴胡湯:柴胡・黄ごん・半夏・生姜・大棗・枳実・大黄・芍薬
小柴胡湯:柴胡・黄ごん・半夏・生姜・大棗・人参・甘草

似た名前の漢方薬は、決して「同じ系統の薬」とは限らない。併用が可能かどうかという点でも、構成生薬の把握は必要である。

ヨクイニンエキスとよく苡仁湯

ヨクイニン | ハトムギ単体 | イボ取り・肌荒れ |
よく苡仁湯 | よく苡仁・麻黄・当帰・蒼朮・桂皮・芍薬・甘草 | 関節痛・筋肉痛 |

これは番外編になるが、個人的には最もよくみる処方ミスだと感じている。
大抵イボなどの皮膚科処方でヨクイニンエキスを処方しようと思って、ツムラよく苡仁湯が処方されるという間違いが起こる。
ツムラよく苡仁湯は構成生薬からしても痛みに効く処方であり、適応症を伝えれば処方が訂正されるだろう。

調剤ミスを防ぐための現場の工夫

見た目やパッケージを見せながら効果を説明
 → 「あれ?聞いてたのと違うな」と患者が気づくことも。

服薬指導時に処方目的を確認する習慣
 → たとえば、「こむら返り」のつもりで「当帰芍薬散」が出ていたら、会話で気づける。

不定愁訴やダイエット目的などあいまいな処方には慎重に対応
 → 「防風通聖散」と「防己黄耆湯」のように、どちらも体質改善目的で使われていて、患者も区別がつかないことがある。

名前や構成が似ていても、適応や作用がまったく違う処方があります。
医師・事務・薬剤師の連携でミスを防ぐ工夫が必要。
患者の服薬意図や訴えにしっかり耳を傾けることで、処方ミスに気づけることもある。

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