2025年9月7日更新.2,618記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ハイドレアは副作用が少ない?

ハイドレア1日5カプセル

2023年8月に宮城県名取市の県立がんセンターで誤って通常の量を超える抗がん薬=ヒドロキシカルバミド(ハイドレア)を処方された高齢の患者が死亡しました。
主治医が処方する薬の量を間違えたうえ、調剤をした院外薬局も確認を怠ったのが原因ということです。

▶主治医が電子カルテに薬の量を入力する際、1日1カプセル・500ミリグラムと入力するところを誤って、通常の量を超える1日5カプセルと入力しました。

▶院外薬局の仙台調剤名取店で抗がん薬が通常の量を超えていることに気づきながらも治療に必要と判断し、医師に確認しないまま調剤しました。

▶患者は、翌日から12日間服用したところ敗血症性ショックを発症し、死亡しました。

正直、骨髄がんからの敗血性ショックだから、ハイドレアの用量がどれくらい影響したのかはわからないけれどミスはミス。2000㎎でもこの死亡は免れなかったような気もする。

ハイドレアの用法用量は、以下の通り。

ヒドロキシカルバミドとして、通常成人1日500~2,000mgを1~3回に分けて経口投与する。寛解後の維持には1日500~1,000mgを1~2回に分けて経口投与する。
なお、血液所見、症状、年齢、体重により初回量、維持量を適宜増減する。

「適宜増減」という文言はあれど、「通常成人1日500~2,000mg」という記載で、上限2000㎎という認識らしい。。。2500㎎は治療上必要だった…という言い訳は通用しないか。

「通常の量を超えていることに気づきながらも治療に必要と判断し、医師に確認しないまま調剤した」という薬剤師の気持ちが少なからずわかってしまう。「禁忌以外は疑義照会するな」みたいな医師もいますしね。

1日1回500㎎と間違えて2500㎎を入力したということであれば用法は1日1回2500㎎だったのでしょう。「1日500~2,000mgを1~3回に分けて」というのが標準であれば1回5カプセルは「?」となります。しかし疑義照会して医師から「そのままでいい」と言われたら突っぱねるのは難しい量かな。。。

私が学んだことは「適宜増減」なんて文言は何の言い訳にもならないということと、通常量を逸脱した処方量の調剤は拒否するという判断も時には必要なのかな、ということである。

ハイドレアは安全な抗癌剤?

ハイドレアは代謝拮抗剤に分類される抗がん剤です。
ハイドレアの作用機序をみると、

本剤は細胞周期上のS期の細胞に作用し,リボヌクレオチドをデオキシリボヌクレオチドに変換する酵素であるリボヌクレオチドレダクターゼを阻害することによりDNAの合成を阻害するとされている。

DNA合成阻害により効果を発現する。
当然妊婦にも禁忌。

ハイドレアの一般名はヒドロキシカルバミドといいます。
別名ヒドロキシ尿素とも言う。

構造式をみると、尿素にOH基(ヒドロキシル基)が付いただけの単純な構造。
こんなんで効くのか?と疑問にも思う。

副作用をみると、臨床試験時の副作用発現率が5.6%と、ティーエスワンの87.2%と比べてかなり少ない。
抗癌剤とは思えないくらい少ない。

ハイドレアの適応症は、「慢性骨髄性白血病,本態性血小板血症,真性多血症」
慢性骨髄性白血病では白血球が増えて、本態性血小板血症では血小板が増えて、真性多血症では赤血球、その他白血球、血小板なども増えるという病気です。
ハイドレアは細胞合成を阻害することによってこれらの病気に効く。

副作用が少ないに越したことはありませんが、その分効果の面でも劣るようだとちょっと。

ハイドレアは、かつては慢性骨髄性白血病の第一次選択薬でしたが、その後インターフェロン(スミフェロン)が第一次選択薬となり、最近ではイマチニブ(グリベック)がインターフェロンよりも優れていることが立証されて第一次選択薬になりました。
ハイドレアは副作用が比較的少なく、かつ白血病細胞を減らす効果は優れているため、白血球数の多い症例で、とりあえず白血球を減らす目的で用いられます。

2.薬物療法薬白血病|治療・研究|JALSG

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