2025年6月20日更新.2,503記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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SPFやPAは高いほうがいい?

SPFやPAは高ければ高いほどいいの?日焼け止めの正しい選び方と使い分け

「SPF50+」「PA++++」といった表示が、日焼け止めのパッケージで目立つ季節になってきました。「数値が高いほど効果がありそう」と思って選ぶ方も多いかもしれませんが、SPFやPAの意味や使い分けを理解していないと、かえって肌に負担をかけてしまうこともあります。

紫外線の種類と肌への影響

太陽から届く紫外線(UV)は大きく分けて以下の3種類があります。

紫外線の種類波長地表到達主な作用
UVA(A波)400〜315nm届く肌の奥深くまで届き、しわ・たるみ・老化の原因に
UVB(B波)315〜280nm届く肌表面に作用し、赤く炎症(日焼け)を起こす
UVC(C波)280nm以下オゾン層で遮断地表には届かない

特に問題になるのは、地表に届くUVAとUVBの2種類です。

UVB(B波)は短時間で肌に炎症を起こし、いわゆる「日焼け(サンバーン)」を引き起こします。DNAを損傷させ、皮膚がんのリスクにも関わります。

・UVA(A波)は波長が長く、肌の奥深くの「真皮層」にまで到達。コラーゲンを破壊し、しわやたるみなどの“光老化”を引き起こします。

したがって、日焼け止めには両方の紫外線に対応できることが重要です。

SPFとは? 何を防ぐ数値なのか

SPF(Sun Protection Factor)は、UVB(短波長紫外線)を防ぐ能力を数値化したものです。

たとえば、SPF30なら「何も塗らないと20分で日焼けする人が、30倍=600分間は日焼けを防げる」とされます。

SPF値とおおよその防御時間(目安)
・SPF10 約200分(3時間20分)
・SPF30 約600分(10時間)
・SPF50 約1,000分(16時間以上)

※ただし汗や皮脂で流れてしまうため、定期的な塗り直しが前提です。

なお、SPFの数値は「50+」が最高とされ、それ以上の表記(SPF100など)は現在では使用されません。

PAとは? UVAを防ぐ目安

PA(Protection Grade of UVA)は、UVA(長波長紫外線)をどの程度防げるかを表す指標です。

PA値とUVA防止効果(目安)
・PA+ 効果あり
・PA++ 効果がかなりある
・PA+++ 非常に高い効果あり
・PA++++ 極めて高い効果あり(2023年新設)

UVAは「日常的に」浴びる紫外線で、曇り空や窓ガラスも通り抜けます。屋内にいても紫外線対策は必要なのです。

SPFとPA、どっちを優先すべき?

・炎天下でレジャーや海水浴 ⇒ SPF重視(UVB対策)
・日常生活や運転中、窓際での作業 ⇒ PA重視(UVA対策)

つまり、用途に応じて「SPFとPAのバランス」を取ることが大切です。

使用シーン別:日焼け止めの目安
・通勤・買い物など日常生活:SPF5〜10、PA+〜PA++
・軽い野外活動(散歩・ドライブ):SPF10〜30、PA++〜PA+++
・炎天下のレジャー(海・山):SPF30〜50+、PA+++〜PA++++
・熱帯地域や強い紫外線環境:SPF50+、PA++++

「SPF・PAが高い=良い」とは限らない理由

SPFやPAの数値が高い日焼け止めは、それだけ強力な成分を含んでいるため肌への刺激も強くなりがちです。乾燥やかぶれなどの肌トラブルを起こす可能性も。

そのため、日常生活では「高すぎないSPF・PAの日焼け止め」を選び、必要なときだけ高数値の製品に切り替えるという「使い分け」が推奨されます。

子どもに日焼け止めは使ってもいい?

結論から言えば、子どもにも日焼け止めは必要です。

とくに乳幼児期の紫外線ダメージは蓄積しやすく、将来の皮膚がんリスクにも関わるとされています。

学校での使用制限は?
一部の学校ではプール授業などで日焼け止め使用を禁止しているケースがありますが、近年では「水質に影響しない」とする研究結果も増えており、合理的な配慮が求められています。

子ども用日焼け止めの選び方
・ノンケミカル(紫外線散乱剤)がおすすめ
・SPF20〜30、PA++程度で十分
・石けんで落ちる処方が望ましい

PA++++の時代へ

2023年、日本化粧品工業連合会は従来の最高ランク「PA+++」を超える「PA++++」を新設しました。より強いUVA対策を求める声に応えたものであり、今後は「PA++++」表示がスタンダードになる可能性があります。

一方で、これ以上の「PA+++++」のような表示が導入されるかは未定です。UVA防御効果の測定法には限界もあり、今後の研究とともに表示ルールも変わっていくでしょう。

結論:SPF・PAは“目的に応じて使い分ける”が正解

日焼け止めを選ぶとき、「とりあえず数値が高いものを」と考えるのではなく、使用シーンに応じた適切な製品を選ぶことが重要です。

・屋外レジャーではSPF50+ & PA++++
・普段使いではSPF10前後 & PA+

そして、日焼け止めだけでなく、帽子・サングラス・日傘なども併用して、総合的に紫外線対策を行うのがベストです。

補足:PAとSPFの違いまとめ

項目SPFPA
防御対象UVB(B波)UVA(A波)
肌への影響日焼け、炎症、赤み老化、しわ、たるみ
数値の表し方1〜50+(高いほど強力)+〜++++(+が多いほど強力)
用途炎天下の活動に有効日常生活の光老化対策に有効

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